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【13】2006年6月6日 16:24・校門前・大雨。車嫌い(レン視点)。
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「あ゛ー!!また車乗るのかよぉ~」
校門階段を下りきった所でアイナの車嫌いが始まった。
「アイナってホントに嫌いだよね、車」
「んーー嫌いっつーかぁ、息苦しいんだよなぁー」
「『息苦しい』って・・・。ウチの送迎車広いほうだよ?お祖父様がメーカーに特注で造らせたんだからね?銃社会じゃないのに防弾でダンプとの衝突だってギリギリ耐える特殊仕様なんだよ?ウチの送迎車で息苦しいとか言ってたら普通の乗用車なんて乗れないよ?」
車に疎いのでメーカーの名前をド忘れてしまった。それ以前に興味のないモノってあまり覚えられないような気がする。こうしてる間もメーカーの名前がまったく出てこない。
「んなこと、知らねーよ」
アイナは私の丁寧な説明を面倒くさそうに斬って捨てた。
「まー、生意気」
《いつかアイナを普通乗用車に乗せてあげてウチの特注送迎車の有り難みを分からせてあげよう。うん、そうしよう。分からせてあげたい・・・》
学園側が通学組の保護者に出した条件、それは『送迎の義務化』だった。
かつて入寮が義務だった時代、学園側が建前として掲げていたのが生徒の安全だった。そのことから入寮を拒否する親には『絶対的に自分たちで子供の安全を確保するように』と送迎義務が始まったらしい。
理には適っているかもしれないがどうにも屁理屈が過ぎる気もする。しかし、保護者側からすればバカ高い寮費を払わなくて済み、学園側も生徒に対する責任がなくなるわけで双方にとってWin-Winなメリットがあった。
「レンお嬢様、ユアル様、アイナ様、お疲れ様でした」
黒いスーツにサングラスの男が私たちに声をかけてきた。
「ありがとう、ご苦労様です」
校門の前の道路には、先程までアイナに説明していた送迎車が停めてあった。運転席近くには別の黒スーツでサングラスの男が
わざわざ車を降りて私たちに向かってお辞儀をしていた。
彼らはお祖父様が用意した護衛であり私たちの送迎を担当している運転手でもある。担当と言っても専属ではなく日によってローテーションを組んでいるらしい。
護衛は私とアイナのカバンを預かると1人ずつ傘を回収し雨に濡れないように傘をさしながら後部座席のドアを開けてくれた。
「ふぃー疲れたぁ~~」
何をどう疲れたのか分からないアイナが我先にと送迎車に飛び乗る。
ユアルはアイナに何か言いたげな表情をしていたがココは敢えて我慢しているようだった。というのも、私たちの言動は恐らく護衛たちからお祖父様に筒抜けの可能性があるからだ。
ある意味、学校よりも気が抜けないかもしれない・・・。
ユアルは例えお祖父様が用意した護衛であっても私物を他人に預けることを嫌う性格らしくカバンを大事そうに抱えて車に乗り込んだ。護衛もそのことを分かっているので私とアイナのカバンしか預からなかった。
「それではよろしくお願いします」
「かしこまりました、レンお嬢様」
私は乗り込む前に護衛に挨拶をした。
《これでアイナの愚行が少しでもチャラになりますように・・・》
そう祈りながら。
送迎車の後部座席は『コの字型』になっていてアイナと私はそれぞれ左右の窓側の席、ユアルが残りの席という感じだ。いつの頃からか忘れたが3人の座席位置はだいたいそう決まっている。
アイナが窓側の席を好む理由は知らないが私の場合どうしても乗り物だと窓から流れる景色が観たいのでそうさせてもらっている。
小さい頃は座席の肘かけを収納してソファのように仰向けに寝そべりながら窓から流れる景色を見るのが大好きだった。その頃はまだ車の窓ガラスを内側が見えない仕様にしても特に問題ない時代だった。
こちらの姿は見えないのでよく忍者になったような優越感に浸たりながら対向車や並走する運転席の人物を観察していたものだった。
しかし、数年前からスモークガラスの規制が厳しくなり可視光線透過率なるものが70%以上でないと取り締まられるようになってしまったらしい。
自分で言っててよく分からないが要するに外側から完全に内側が見えない車は処罰対象になったということだ。そのおかげで丸見えとまではいかないが送迎車の中が見えるようになってしまった。
普通乗用車ならまだしも、この特注送迎車にサングラスと黒スーツの男が2人も前列に座っていたら、イヤでも周りから注目されてしまう。年頃の娘にはちょっと恥ずかしい仕打ち仕様になっている・・・。
直接的な因果関係は不明だが5年くらい前に海外で大きなテロ事件が起きてから危機意識の向上やテロ対策として日本でもこういう規制が厳しくなっているような気がする。
「ウ゛ーー!」
『突然、車の前にクリーチャーが現れた!』・・・わけではなく。
不快な雑音の正体はアイナが寝そべった状態で唸っている声だった。どんなに景色が変わろうとも車が進もうとも鳴りやまないアイナの唸り声は正直不快だった。しかも、梅雨という最悪な相乗効果もあって精神を削り取られる感じさえする。
過去に何度か車酔いを心配したこともあったがアイナ本人に言わせると車酔いは一切しておらず、ただただ車の中という閉鎖的な空間が嫌いなだけらしい。
「アイナ、うるさいから少し黙りなさい・・・」
「ウ゛ウ゛ウ゛ーーーーー!!!」
ユアルの注意に反抗するように更に唸り声をあげるアイナ。
「・・・・・・・・・ッ」
少しだけユアルの眉がひくついたのを私は見逃さなかった。
そうこうしている内に送迎車がゆっくりと走りだす。
校門階段を下りきった所でアイナの車嫌いが始まった。
「アイナってホントに嫌いだよね、車」
「んーー嫌いっつーかぁ、息苦しいんだよなぁー」
「『息苦しい』って・・・。ウチの送迎車広いほうだよ?お祖父様がメーカーに特注で造らせたんだからね?銃社会じゃないのに防弾でダンプとの衝突だってギリギリ耐える特殊仕様なんだよ?ウチの送迎車で息苦しいとか言ってたら普通の乗用車なんて乗れないよ?」
車に疎いのでメーカーの名前をド忘れてしまった。それ以前に興味のないモノってあまり覚えられないような気がする。こうしてる間もメーカーの名前がまったく出てこない。
「んなこと、知らねーよ」
アイナは私の丁寧な説明を面倒くさそうに斬って捨てた。
「まー、生意気」
《いつかアイナを普通乗用車に乗せてあげてウチの特注送迎車の有り難みを分からせてあげよう。うん、そうしよう。分からせてあげたい・・・》
学園側が通学組の保護者に出した条件、それは『送迎の義務化』だった。
かつて入寮が義務だった時代、学園側が建前として掲げていたのが生徒の安全だった。そのことから入寮を拒否する親には『絶対的に自分たちで子供の安全を確保するように』と送迎義務が始まったらしい。
理には適っているかもしれないがどうにも屁理屈が過ぎる気もする。しかし、保護者側からすればバカ高い寮費を払わなくて済み、学園側も生徒に対する責任がなくなるわけで双方にとってWin-Winなメリットがあった。
「レンお嬢様、ユアル様、アイナ様、お疲れ様でした」
黒いスーツにサングラスの男が私たちに声をかけてきた。
「ありがとう、ご苦労様です」
校門の前の道路には、先程までアイナに説明していた送迎車が停めてあった。運転席近くには別の黒スーツでサングラスの男が
わざわざ車を降りて私たちに向かってお辞儀をしていた。
彼らはお祖父様が用意した護衛であり私たちの送迎を担当している運転手でもある。担当と言っても専属ではなく日によってローテーションを組んでいるらしい。
護衛は私とアイナのカバンを預かると1人ずつ傘を回収し雨に濡れないように傘をさしながら後部座席のドアを開けてくれた。
「ふぃー疲れたぁ~~」
何をどう疲れたのか分からないアイナが我先にと送迎車に飛び乗る。
ユアルはアイナに何か言いたげな表情をしていたがココは敢えて我慢しているようだった。というのも、私たちの言動は恐らく護衛たちからお祖父様に筒抜けの可能性があるからだ。
ある意味、学校よりも気が抜けないかもしれない・・・。
ユアルは例えお祖父様が用意した護衛であっても私物を他人に預けることを嫌う性格らしくカバンを大事そうに抱えて車に乗り込んだ。護衛もそのことを分かっているので私とアイナのカバンしか預からなかった。
「それではよろしくお願いします」
「かしこまりました、レンお嬢様」
私は乗り込む前に護衛に挨拶をした。
《これでアイナの愚行が少しでもチャラになりますように・・・》
そう祈りながら。
送迎車の後部座席は『コの字型』になっていてアイナと私はそれぞれ左右の窓側の席、ユアルが残りの席という感じだ。いつの頃からか忘れたが3人の座席位置はだいたいそう決まっている。
アイナが窓側の席を好む理由は知らないが私の場合どうしても乗り物だと窓から流れる景色が観たいのでそうさせてもらっている。
小さい頃は座席の肘かけを収納してソファのように仰向けに寝そべりながら窓から流れる景色を見るのが大好きだった。その頃はまだ車の窓ガラスを内側が見えない仕様にしても特に問題ない時代だった。
こちらの姿は見えないのでよく忍者になったような優越感に浸たりながら対向車や並走する運転席の人物を観察していたものだった。
しかし、数年前からスモークガラスの規制が厳しくなり可視光線透過率なるものが70%以上でないと取り締まられるようになってしまったらしい。
自分で言っててよく分からないが要するに外側から完全に内側が見えない車は処罰対象になったということだ。そのおかげで丸見えとまではいかないが送迎車の中が見えるようになってしまった。
普通乗用車ならまだしも、この特注送迎車にサングラスと黒スーツの男が2人も前列に座っていたら、イヤでも周りから注目されてしまう。年頃の娘にはちょっと恥ずかしい仕打ち仕様になっている・・・。
直接的な因果関係は不明だが5年くらい前に海外で大きなテロ事件が起きてから危機意識の向上やテロ対策として日本でもこういう規制が厳しくなっているような気がする。
「ウ゛ーー!」
『突然、車の前にクリーチャーが現れた!』・・・わけではなく。
不快な雑音の正体はアイナが寝そべった状態で唸っている声だった。どんなに景色が変わろうとも車が進もうとも鳴りやまないアイナの唸り声は正直不快だった。しかも、梅雨という最悪な相乗効果もあって精神を削り取られる感じさえする。
過去に何度か車酔いを心配したこともあったがアイナ本人に言わせると車酔いは一切しておらず、ただただ車の中という閉鎖的な空間が嫌いなだけらしい。
「アイナ、うるさいから少し黙りなさい・・・」
「ウ゛ウ゛ウ゛ーーーーー!!!」
ユアルの注意に反抗するように更に唸り声をあげるアイナ。
「・・・・・・・・・ッ」
少しだけユアルの眉がひくついたのを私は見逃さなかった。
そうこうしている内に送迎車がゆっくりと走りだす。
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