ハラヘリヴィーナス

雅誅

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【14】2006年6月6日 16:45・送迎車・大雨。3人の悩み(レン視点)。

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幾度となく流れていく田んぼ、木々。ココがホントに東京なのか疑いたくなるような懐かしい風景が流れていく。

晴れている日はそれなりに風景を楽しめるが梅雨の時期はどんより空に構えている雨雲のおかげで全ての雰囲気をぶち壊してくれる。しかも今日は朝からずっと大雨だった。

どう考え直しても嫌いだ、梅雨。


ルドベキア女学園は惺璃(さとるり)市の中心から少し外れた所にあり、送迎車に乗って20分ほど車を走らせればただでさえのどかな風景が輪をかけて酷くなる。


「ウ゛~~!」
《・・・・・・はぁ》


アイナが不快な唸り声をあげるほど送迎を嫌う理由として閉鎖的な空間の他に移動時間の問題があった。私の家から学園まで片道40分の往復1時間20分毎日登下校にかかっているのだ。

シビアな表現をするとそれだけ時間を損をしているということになる。これにはアイナだけでなく私やユアルもだいぶまいっていた。アイナや私ならともかくユアルまで根をあげるというのはそれだけ問題の深刻さを物語っている。


以前から送迎について何度かユアルに『別の手段はないか?』とお祖父様に尋ねるようにお願いされたことがあったが、まったく無茶を言ってくれる。そんなことできたらとっくにやってる・・・。ただでさえ、お祖父様にはお世話になっているのにこちらから一方的に要望を出すなんて自殺行為に等しい。

・・・しかし、毎日毎日授業以外に登下校合わせて1時間20分のロスはさすがに厳しいモノがある。これを大学卒業まで続けるとなるとユアルの言う通り、いつかはお祖父様に言わないといけないのかもしれない。

《しかし、それは断じて今じゃないッ。それだけは明確に分かっている!》

単にお祖父様を恐れているというのもあるが先にも言った通り、大変お世話になっていることの方が理由として大きかった。ちなみに大学は高校から更に遠い惺璃市の隣に位置する八恩慈市にあった。

高校で1時間20分の往復なのに大学はいったい何時間になるのか、想像するだけで吐きそうになる。そう考えるとやはり大学生になるまでにこの問題をどうにか解決しなくてはならない。さすがにその頃には賃貸でも良いので近場に住まわしてくれると思うのだが・・・、というかそうじゃないと困る。

「あッ!!」

「どうしました、レン?」

私のとっさの一言に即座に反応するユアル。

「え?あぁ、ごめん。ちょっと思い出したことがあってさ。ねぇ、アイナ?」

「あ゛あ゛あ゛~~~??」

話しかけるなオーラ全開でこちらにゆっくり顔を向けるアイナ。

「そういえば、昼休みに角刈りモッ・・・!!」

《おっと、危なッ》

ココが護衛の目がある車内であることを思い出して私は口をつぐんだ。いくら運転席と後部座席がセパレーターで仕切られているとは言え、防音性能を確かめたわけではないので迂闊に喋るのは危険過ぎる。

私は数秒ほど間を置いてから言い直した。

「えっと、昼休み知世田先生に何か話しかけられてたけど、どういう内容だったの?」

「あら、そんなことがあったんですか?アイナ、どうなの?」

「ウ゛ーー、確かに話かけられたけどー声がカスカス過ぎて何喋ってるのかマジで聞き取れなかったんだよなぁー」

「じゃあ、アイナは適当に返事をしてたってこと?」

「そゆことー。無視するよりはマシだろー?オレも大人になったぜー、ウ゛ーー」

「イヤ、教師を無視とか論外だから・・・」


《うーん、ちょっと気になるけど、たぶん授業中の悪態に対する注意だったのかも》

もうちょっと突っ込んだ話をしたかったが車内でこの手の話をするのはリスクが高すぎるので黙ることにした。昼休み、私がアイナと角刈りモアイの側を通ったときたしかに聞き取れなかったのは事実なので、この件についてはアイナはウソをついてないと思う。

《帰宅して気力が残っていたらアイナにもう一度詳細を聞いてみよう・・・》

そう考えながら、私は窓から陰鬱な帰路の風景をぼんやり眺めていた。

私たちの家はルドベキア女学園から北西へ走らせた所にある。

東京というよりは埼玉の方が圧倒的に近い場所だ。ご近所さんと呼べる民家はなく山の中腹より少し下にポツンと構えている。聞いた話ではお隣さんと呼べる民家まで最短でも数キロはあるらしい。

お察しの通り、私たちの家は世間から隔絶された山奥にあった。

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