31 / 57
【31】2006年6月7日 8:36・教室・曇り。不意の指摘(レン視点)。
しおりを挟む
「きっとユアルがつきそいで一緒に行ってくれたおかげだね。ありがとう、ユアル」
「はッ?おい、レン!それどーゆー意味だよ!?」
「いいえ、ご迷惑をかけてるのはこちらですから当然のことをしたまでです。改めて、ご迷惑とご心配をおかけしてすみませんでした」
「ユアルが謝る必要なんて微塵もないよ。ユアルには家事全般任せちゃってるしむしろ感謝してるくらいなんだからッ」
「おいッ!ヒトの席で喋んなよ!」
私もユアルもアイナの席で本人を無視してまるで近所の主婦同士がわんぱく小僧のイタズラに苦労してます風の井戸端会議を繰り広げてやった。
「ところで、レン。一応、本邸にも事の顛末を伝えておいた方が良いと思います。知世田先生に直接聞きましたが、本邸にはそこまでシリアスな内容を伝えてないとのことでしたから。あらぬ誤解で問題が大きくなるのは避けるべきではありませんか?」
「うーん、あまり気乗りしないけどユアルがそこまで言うのなら連絡入れておこうかな。本邸に学園から電話がいっちゃてる 以上、ごまかしきれないもんね」
「えぇ、是非お願いします」
「いや、気にしすぎだろ?事の顛末っつっても声がカッスカスだったから叱責にすらなってなかったし」
「はぁぁ~~・・・」
どれだけ綱渡りな状況だったのか理解できていないアイナにいちいち説明するのも面倒なので適当にスルーする。
《それにしてもデリカシーのないあの角刈りモアイなら復讐のために話を盛ってお祖父様に告げ口しそうだけど。案外、角刈りモアイもお祖父様を相手にする度胸がないだけだったりして。まぁ、お祖父様が直接電話にでることはないと思うけど》
「あ!イヤ、違う違うッ」
「はい?何がですか、レン?」
「ううん、ごめん。こっちの話、気にしないで」
突然、口から出てしまった独り言がマヌケ過ぎて恥ずかしい。
《そうだ強く言えるわけないんだった。はぁ~》
角刈りモアイが話を盛らなかったんじゃない。盛れない理由があったのだ。凹むことを思い出してしまいテンションが強制的に下がってしまった。
「とりあえず、一件落着って認識で良いんだよね?」
「はい、それは間違いないです」
「了解ッ。あとで本底への電話のシミュレーションするからつき合ってもらっても良い?ユアル?」
「もちろん喜んで」
「ありがと♪」
ユアルをつきそいで行かせて本当に良かった。あのとき強引に止めていたらこの安堵感は今頃絶望感に変わっていたかもしれない。問題がこじれ過ぎて三者面談なんてことになればそれこそゲームオーバーだった。
「それからレン、カバンありがとうございました。重くありませんでしたか?」
「エヘヘ、ユアルの言うとおりメチャクチャ重かった・・・」
「だから言ったんですよ、私。あ、じゃあそろそろ失礼しますね」
ユアルが廊下を指しながら私の視線を誘導する。廊下を見ると他のクラスの担任が歩いていた。気づけばもうホームルームの時間だった。
「うん、続きはまたあとで」
スッ・・・、パンパン!
「イテッ!!」
私とユアルは去り際にアイナのおでこにデコピンを放ち、それぞれ自分の席へと戻る。それからしばらくして担任が入ってきた。
「日直さん、号令お願いします」
「起立ー!」
帰宅してから本邸への連絡という面倒なイベントは残っているが、何はともあれアイナと角刈りモアイの件は無事収まったことに安堵しているのか私の意思とは関係なく口元が緩んでしまう。しかし、何というか学園生活でこんなスリル今まで味わったこと無かったかもしれない。
「礼ー!」
《さて、ホームルームの間に本邸への報告内容でもまとめておきますか》
「着席ー!」
「西冥レンさん、何か良いことでもありましたか?」
「はい?」
椅子に座った瞬間、担任からフルネームで名指しされてしまいクラスメイト全員が私に注目する。
このクラスには『西冥』が3人もいるのでフルネームで呼ばれることが多いのだが、名前をフルネームで呼ばれると何となく晒し者にされているようなこの感じが嫌だった。
「い、いいえ。特に何もありません」
アイナと角刈りモアイの件が収まった喜びがそのまま表情に出ていたのだろう。その笑顔は担任に指摘されるほどマヌケに見えたのかもしれない。
「ブラウスがビショビショになってまで西冥さんがあまりにも楽しそうでしたからつい。今日は雨は降っていませんがそれは汗ですか?」
「はい、ちょっと色々ありまして・・・」
「そうですか。風邪をひかないように気をつけてくださいね?」
「はい」
クスクスクスクスクスクス。
クラス中至る所でいやらしい笑いが起こる。
《全ての元凶はアイナの宿題未提出なのになんて理不尽。デコピン1発じゃ足りなかった・・・》
私は苦笑いを浮かべながら恥ずかしさを必死にごまかしていた。気づけば前方のユアルが申し訳なさそうな表情を『拝み手』とセットでこちらに向けていた。
《日本の地理もそうだけど拝み手なんてどこで覚えてきたんだろ・・・》
私は嘲笑よりもユアルの拝み手の方が気になって仕方なかった。
《今日は朝から散々な目には遭ったけど、トラブルは解決したし角刈りモアイの授業も無い。同居生活にも影響なさそうだし、まぁイイか》
「はーい、それではホームルームを始めまーす」
外を見ると曇ってはいるが所々晴れ間が覗いていた。
《・・・あッ》
そして、いつの間にかシビアな頭痛も収まっていたことに気づいた。
「はッ?おい、レン!それどーゆー意味だよ!?」
「いいえ、ご迷惑をかけてるのはこちらですから当然のことをしたまでです。改めて、ご迷惑とご心配をおかけしてすみませんでした」
「ユアルが謝る必要なんて微塵もないよ。ユアルには家事全般任せちゃってるしむしろ感謝してるくらいなんだからッ」
「おいッ!ヒトの席で喋んなよ!」
私もユアルもアイナの席で本人を無視してまるで近所の主婦同士がわんぱく小僧のイタズラに苦労してます風の井戸端会議を繰り広げてやった。
「ところで、レン。一応、本邸にも事の顛末を伝えておいた方が良いと思います。知世田先生に直接聞きましたが、本邸にはそこまでシリアスな内容を伝えてないとのことでしたから。あらぬ誤解で問題が大きくなるのは避けるべきではありませんか?」
「うーん、あまり気乗りしないけどユアルがそこまで言うのなら連絡入れておこうかな。本邸に学園から電話がいっちゃてる 以上、ごまかしきれないもんね」
「えぇ、是非お願いします」
「いや、気にしすぎだろ?事の顛末っつっても声がカッスカスだったから叱責にすらなってなかったし」
「はぁぁ~~・・・」
どれだけ綱渡りな状況だったのか理解できていないアイナにいちいち説明するのも面倒なので適当にスルーする。
《それにしてもデリカシーのないあの角刈りモアイなら復讐のために話を盛ってお祖父様に告げ口しそうだけど。案外、角刈りモアイもお祖父様を相手にする度胸がないだけだったりして。まぁ、お祖父様が直接電話にでることはないと思うけど》
「あ!イヤ、違う違うッ」
「はい?何がですか、レン?」
「ううん、ごめん。こっちの話、気にしないで」
突然、口から出てしまった独り言がマヌケ過ぎて恥ずかしい。
《そうだ強く言えるわけないんだった。はぁ~》
角刈りモアイが話を盛らなかったんじゃない。盛れない理由があったのだ。凹むことを思い出してしまいテンションが強制的に下がってしまった。
「とりあえず、一件落着って認識で良いんだよね?」
「はい、それは間違いないです」
「了解ッ。あとで本底への電話のシミュレーションするからつき合ってもらっても良い?ユアル?」
「もちろん喜んで」
「ありがと♪」
ユアルをつきそいで行かせて本当に良かった。あのとき強引に止めていたらこの安堵感は今頃絶望感に変わっていたかもしれない。問題がこじれ過ぎて三者面談なんてことになればそれこそゲームオーバーだった。
「それからレン、カバンありがとうございました。重くありませんでしたか?」
「エヘヘ、ユアルの言うとおりメチャクチャ重かった・・・」
「だから言ったんですよ、私。あ、じゃあそろそろ失礼しますね」
ユアルが廊下を指しながら私の視線を誘導する。廊下を見ると他のクラスの担任が歩いていた。気づけばもうホームルームの時間だった。
「うん、続きはまたあとで」
スッ・・・、パンパン!
「イテッ!!」
私とユアルは去り際にアイナのおでこにデコピンを放ち、それぞれ自分の席へと戻る。それからしばらくして担任が入ってきた。
「日直さん、号令お願いします」
「起立ー!」
帰宅してから本邸への連絡という面倒なイベントは残っているが、何はともあれアイナと角刈りモアイの件は無事収まったことに安堵しているのか私の意思とは関係なく口元が緩んでしまう。しかし、何というか学園生活でこんなスリル今まで味わったこと無かったかもしれない。
「礼ー!」
《さて、ホームルームの間に本邸への報告内容でもまとめておきますか》
「着席ー!」
「西冥レンさん、何か良いことでもありましたか?」
「はい?」
椅子に座った瞬間、担任からフルネームで名指しされてしまいクラスメイト全員が私に注目する。
このクラスには『西冥』が3人もいるのでフルネームで呼ばれることが多いのだが、名前をフルネームで呼ばれると何となく晒し者にされているようなこの感じが嫌だった。
「い、いいえ。特に何もありません」
アイナと角刈りモアイの件が収まった喜びがそのまま表情に出ていたのだろう。その笑顔は担任に指摘されるほどマヌケに見えたのかもしれない。
「ブラウスがビショビショになってまで西冥さんがあまりにも楽しそうでしたからつい。今日は雨は降っていませんがそれは汗ですか?」
「はい、ちょっと色々ありまして・・・」
「そうですか。風邪をひかないように気をつけてくださいね?」
「はい」
クスクスクスクスクスクス。
クラス中至る所でいやらしい笑いが起こる。
《全ての元凶はアイナの宿題未提出なのになんて理不尽。デコピン1発じゃ足りなかった・・・》
私は苦笑いを浮かべながら恥ずかしさを必死にごまかしていた。気づけば前方のユアルが申し訳なさそうな表情を『拝み手』とセットでこちらに向けていた。
《日本の地理もそうだけど拝み手なんてどこで覚えてきたんだろ・・・》
私は嘲笑よりもユアルの拝み手の方が気になって仕方なかった。
《今日は朝から散々な目には遭ったけど、トラブルは解決したし角刈りモアイの授業も無い。同居生活にも影響なさそうだし、まぁイイか》
「はーい、それではホームルームを始めまーす」
外を見ると曇ってはいるが所々晴れ間が覗いていた。
《・・・あッ》
そして、いつの間にかシビアな頭痛も収まっていたことに気づいた。
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる