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【37】2006年6月7日 13:55・廊下・曇り。ドS(レン視点)。
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「ユアルごめん!お待たせ!」
急いで鍵を閉めると、私たちは先生の廊下強制歩行センサーに引っかからない程度に早歩きと猛ダッシュを使いわけながら体育館に向かっていた。
「フフフ・・・」
ユアルが楽しそうに笑っている。
「何が可笑しいの?」
「ほんの数分の遅刻ならトイレということで体育の先生も許してくれると思うんですけど。レンは諦めないんですね」
「そりゃあね!ギリギリでもチャンスが残っているなら死力を尽くすのは当たり前でしょッ!?」
「フフッ、そうですね」
校舎と体育館を結ぶ専用通路まで何とか辿り着くと曲がり角から急に人影が現れた。私たちは人影の視界に入るギリギリで急ブレーキをかけて何食わぬ顔で優雅に歩く。
人影の正体は私たち担当の体育教師だった。私とユアルはゆっくり歩きながら体育教師に挨拶をする。体育教師がココにいるということはまだチャンスがあるということで私の心が一気に晴れた。
「ん?おまえたち、次の時間の生徒か?」
「はい」
「すまない、ちょっと用事を思い出してな。10分ほど遅れるから適当に各々準備運動して、それが終わったら軽くランニングでもしといてくれ」
「はい、分かりました」
体育教師はそれだけ言い残すとそそくさとその場を去っていった。
私たちは教師を見送ると呆然と立ちつくしたまま互いに笑い合う。
「なるほど。レンの最後まで諦めない執念の勝利ということですね」
「うーん・・・たまたま運が良かっただけかも」
「そうでしょうか?私はレンの行動が招いた結果だと信じています」
「もー、ユアルはオーバーなんだよッ!私におべっか使っても小遣いすら貰ってないんだから何もでないって!」
「あら、それは残念。せっかく家臣様を持ち上げて褒美にありつこうと思ったのですが」
クスクスと笑うユアルは無駄に艶っぽくて困る。
《そこら辺の男なんかきっとイチコロなんだろうなぁ》
「それではどうでしょう?」
「ん?何が?」
ユアルの急な提案に少し驚く。
「最後まで諦めず体育の授業に遅刻しなかったお礼として私がプレゼントするというのは?」
「プレゼント?何かくれるの?って、ちょっとユアルッ」
ユアルが私の手を取り、耳元に口を近づける。
「今晩あたりまたいかがでしょうか?レンが大好きな『アレ』」
ゴクリ――。
ユアルの台詞を聞いた瞬間ノドを鳴らしてツバを飲んだ。それは条件反射みたいに私の意思とは全く無関係にノドが鳴っていた。
ドクン、ドクン。
「ふぅ、ふぅ、ふぅ・・・」
鼓動が早くなり少し息が荒くなる。
「ユアルそれ、冗談じゃなくて約束してくれるの?やっぱり嘘でしたとかはナシだからね・・・?」
「レン、私を信じてください」
ユアルは昨日丹加部さんにアイナの件でフォローに入ったように私の両手をしっかり握ると柔和な笑みで答えてくれた。しかし、何というかこちらを嘲笑(あざわら)っているというか他人の弱みを鷲づかみにして吊るし上げているというか。
そんな違和感が溢れる笑顔だった。
イヤ、ユアルのことだ私のこの反応さえも予想して楽しんでいるのだろう、きっと。にもかかわらず、私はユアルの言葉に期待せざるを得なかった。
「さ、レン。体育館に行って皆さんに先生からの連絡を伝えましょう?」
ユアルは私の手を少し強く握り体育館へと私を誘導する。手をつないでいる間、定期的にギュッと私の手を更に強く握るユアル。
《やっぱり、ユアルはドS以外の何者でもない》
私は今日このときをもってそう確信した。
急いで鍵を閉めると、私たちは先生の廊下強制歩行センサーに引っかからない程度に早歩きと猛ダッシュを使いわけながら体育館に向かっていた。
「フフフ・・・」
ユアルが楽しそうに笑っている。
「何が可笑しいの?」
「ほんの数分の遅刻ならトイレということで体育の先生も許してくれると思うんですけど。レンは諦めないんですね」
「そりゃあね!ギリギリでもチャンスが残っているなら死力を尽くすのは当たり前でしょッ!?」
「フフッ、そうですね」
校舎と体育館を結ぶ専用通路まで何とか辿り着くと曲がり角から急に人影が現れた。私たちは人影の視界に入るギリギリで急ブレーキをかけて何食わぬ顔で優雅に歩く。
人影の正体は私たち担当の体育教師だった。私とユアルはゆっくり歩きながら体育教師に挨拶をする。体育教師がココにいるということはまだチャンスがあるということで私の心が一気に晴れた。
「ん?おまえたち、次の時間の生徒か?」
「はい」
「すまない、ちょっと用事を思い出してな。10分ほど遅れるから適当に各々準備運動して、それが終わったら軽くランニングでもしといてくれ」
「はい、分かりました」
体育教師はそれだけ言い残すとそそくさとその場を去っていった。
私たちは教師を見送ると呆然と立ちつくしたまま互いに笑い合う。
「なるほど。レンの最後まで諦めない執念の勝利ということですね」
「うーん・・・たまたま運が良かっただけかも」
「そうでしょうか?私はレンの行動が招いた結果だと信じています」
「もー、ユアルはオーバーなんだよッ!私におべっか使っても小遣いすら貰ってないんだから何もでないって!」
「あら、それは残念。せっかく家臣様を持ち上げて褒美にありつこうと思ったのですが」
クスクスと笑うユアルは無駄に艶っぽくて困る。
《そこら辺の男なんかきっとイチコロなんだろうなぁ》
「それではどうでしょう?」
「ん?何が?」
ユアルの急な提案に少し驚く。
「最後まで諦めず体育の授業に遅刻しなかったお礼として私がプレゼントするというのは?」
「プレゼント?何かくれるの?って、ちょっとユアルッ」
ユアルが私の手を取り、耳元に口を近づける。
「今晩あたりまたいかがでしょうか?レンが大好きな『アレ』」
ゴクリ――。
ユアルの台詞を聞いた瞬間ノドを鳴らしてツバを飲んだ。それは条件反射みたいに私の意思とは全く無関係にノドが鳴っていた。
ドクン、ドクン。
「ふぅ、ふぅ、ふぅ・・・」
鼓動が早くなり少し息が荒くなる。
「ユアルそれ、冗談じゃなくて約束してくれるの?やっぱり嘘でしたとかはナシだからね・・・?」
「レン、私を信じてください」
ユアルは昨日丹加部さんにアイナの件でフォローに入ったように私の両手をしっかり握ると柔和な笑みで答えてくれた。しかし、何というかこちらを嘲笑(あざわら)っているというか他人の弱みを鷲づかみにして吊るし上げているというか。
そんな違和感が溢れる笑顔だった。
イヤ、ユアルのことだ私のこの反応さえも予想して楽しんでいるのだろう、きっと。にもかかわらず、私はユアルの言葉に期待せざるを得なかった。
「さ、レン。体育館に行って皆さんに先生からの連絡を伝えましょう?」
ユアルは私の手を少し強く握り体育館へと私を誘導する。手をつないでいる間、定期的にギュッと私の手を更に強く握るユアル。
《やっぱり、ユアルはドS以外の何者でもない》
私は今日このときをもってそう確信した。
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