ハラヘリヴィーナス

雅誅

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【36】2006年6月7日 13:50・教室・曇り。想定外(レン視点)。

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キーンコーン・・・。

「 え ゛ ! ! ?」 

あまりにもビックリしてチャイムの途中で変な声をあげてしまった。


「昼休みが終わります。グラウンドで遊んでいる生徒や昼食中の生徒は次の授業の準備をしましょう」


放送室からいつものアナウンスが聞こえてきた。私はまだ1口も弁当をたべておらず、丸々残っている。

更に不幸は続く。

周りのクラスメイトたちが一斉に体操服に着がえ始めたのだ。そう、5時間目が体育であることをユアルの話やら保武原さんの件ですっかり忘れていた。ただ、不幸中の幸いと言うべきか、さっき貰ったメロンパンを食べていたので私はせめて半分だけでもと思い弁当をかきこんだ。


「アムアムアム!!」

《こんなに追いこまれたのってココ最近なかったかも・・・。スゴイあほっぽいことしてるような気がする》



「さて、私も着がえてきますね」

「ムグムグムグ?」


『もう終わったの?』と言いたかったのだが、口にたくさん入れすぎて何も伝えきれてない。さっきまであれだけ長時間喋っていたユアルでさえもう食べ終わっている。



《というか、そうか。本邸への報告の件は私が喋って、ユアルは弁当食べながら聞いてるだけだった。もう食べ終わってて当然か》


イヤ、今はそんな余計なことを考えている暇はない。


「おーい、レン、ユアルー。オレ先に行くからなー」


アイナはさっさと着がえを済ませて体育館に行ってしまった。


《ユアルや私が散々フォローしてあげてるのにッ!マジで恩知らずッ!!》



アイナを恨めしく思ったところで時間の無駄だというのは数ヶ月間同居してきた経験と角刈りモアイとの一件でしっかり理解してきたので、ココら辺でやめておく。

「アグアグングッ」

そうこうしている内にクラスメイトが続々と着替えおわり教室を出ていく。



お嬢様が集う教室で卑しく弁当をかきこむ私は周りからどんな風に見えているのか気にしている暇もなく懸命に弁当をかきこんでいた。まぁ、お嬢様学校と言っても学園側はあくまでも一般的な学園だと常々主張しているが・・・。



「最後の人ー!鍵閉めお願いねー」

時間ギリギリになってしまったので、さすがの日直も間に合わないと思ったのか教室の鍵を教卓に置いて出ていってしまった。


いよいよクラスに1人になった私の焦燥感はピークを迎えようとしていた。

「もうイイや!ご馳走さま!!」


結局、弁当は1/3ほど残してフィニッシュとなった。


《よく考えればメロンパンだって食べたんだから、弁当は半分で良かったかも。でも、だからと言って西冥の人間が授業中に空腹でお腹を鳴らすなんてマネできないし》


こんなときまで家のことを考えないといけない虚しさが込み上げてくるが今は一旦思考を捨て置き、急いで体操着に着替えることにした。


「レン、落ち着いてください」

「 ひ ゃ あ ッ ! ! ? ? 」 


ガタガタガタッ!!


着替えようと立ち上がった瞬間、突然背後から声をかけられ驚きのあまり激しめに椅子に足をぶつけて倒れてしまった。見上げると声の主はユアルだった。


「も、もう!!びっくりさせないでよ!!」

「あ、あぁ・・・ごめんなさい。驚かせるつもりはなかったのですが。立てますか?」


ユアルが手を差し伸べて立たせてくれた。


「あ、ありがと・・・。って、あれ?ユアルも先に行ったんじゃなかったの?忘れ物?」

「いいえ」

「ん?じゃあどうしたの?」


「ええ、私の長話のせいでレンに迷惑をかけてしまったのでせめて一緒に授業に遅れようかと思いまして」


「そんな気を遣わなくても良いのに」


私はふとさっきの話を思い出した。

「ユアル、そんなに気遣っても私は平民だから何も出ないよ?」


「レン、あなたは平民なんかじゃありません。でも、そうですね。かと言って、王様でもありませんね。レンのお祖父様を王様とするとレンは・・・」

「家臣ってところ?」

「フフフッ」


「いや、笑ってないで答えを教えてよッ!もうッ」

ユアルは微笑むだけで何も言わずに時計を指して私を急かすよう促した。


「あぁ、もう!そうだったね!分かってるってッ!!」


煙にまかれた気もするが今はそんなことどうだって良い。授業に遅刻するなんてこの学園生活で記憶にない一大事だ。


《今度また時間があるときにでもユアルの話を聞いてみよう》

そう思いながら私は全速力で着替え始めた。

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