雪の旅人

士鯨 海遊

文字の大きさ
11 / 15

11

しおりを挟む
 今から二百年か三百年も前の昔、雪の国は今も同じように毎日毎日寒い雪が空から降る頃、一人の王様がこの雪の国を統治することになった。

 王様は今ある小さい町とは反対に峠を北へ越えた先に西洋風の大きな城を建てて住み、周囲に民家やお店が集まって一つの新しい町が出来たのです。その後、王様と妃との間に女の子の赤ん坊が生まれて王国とお城では幸せな暮らしをしていました。特に姫である王様の娘は成長するごとに美しくなり、白い肌は雪のように綺麗に輝いていた上、とても明るく笑う性格をした素敵な女の子でありました。

 ところが姫が十六歳へとなった時、平穏で幸せな暮らしに雲行きが見えるようになるのであった。それは雪の国を支配する王様が隣の国と戦争することになり、お城には毎日鉄の甲冑を着た兵士が大勢集まっては戦地へ向かっていく光景が続いた。

 そんなある日、姫は退屈そうに場内を歩いていると窓を眺める一人の男がいた。男は全身に鉄の甲冑を身につけていたが、顔は若く十八歳ぐらいの白い肌であった。そんな姿を見た姫は気になりだし、男の方へ歩くのでした。
 姫は男の前まで来たが男はそれに気づいておらず、ずっと窓を見つめている。
 「あのー……」
 そう声を出すと男は窓からこちらの方を見て姫がいることに気づき、慌てるように急いで背筋を立てるのである。
 「こ、これは姫様! 失礼な姿を見せ申し訳ありません!」
 カチャカチャと鉄の鎧部分がぶつかるように鳴りながら慌て出す男の行動に姫はおかしく見えて笑い出す。
 「フフフフフ——、あなたってとても面白い方ですわ」
 姫の笑う姿に男は何も分からず背を伸ばしたままキョトンとしていた。
 「はあ……」
 姫は少し笑いながらさっきの男の行動について聞き出し始めた。
 「今、何をなされたのですか?」
 「あ、はい、窓の外を眺めていたのです」
 「窓?」
 「ええ、ここからだと町が全部見えるのです」
 男は身に付けた鉄の手甲から窓へ指を指し、姫はそれに合わせて窓を見ると外は小さくなった民家や店が密集し、建物の中で照らす灯りは旅人の言う無数の星のようであり、周りの山々などは色一つもない白さへ覆われている雪景色がはっきりと写されていた。
 「この景色を……ですか?」
 「はい」
 「何かあるのですか?」
 「特にそういう訳でもありません」
 「ではどうして……?」
 「美しいと思ったからです」
 「美しい? 私にとってはいつも見える城下の光景ですが……」
 姫がそう言うと男は少し小さく笑った。
 「確かに姫様にとってはよく見る普通の光景ですね。ですが私にとってはこの城から見る光景が初めてでもありますし、自分の故郷がこんなにも綺麗に写っていたことが何か神秘的にそう感じたのです——」

 そう言い男は再び窓の外を眺めた。その姿が姫にとって心の綺麗な青年にに見え、退屈だった日常が急に開けて楽しく感じ、姫の心の中は新しい新鮮な気持ちになっていたのでありました。——
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

甲斐ノ副将、八幡原ニテ散……ラズ

朽縄咲良
歴史・時代
【第8回歴史時代小説大賞奨励賞受賞作品】  戦国の雄武田信玄の次弟にして、“稀代の副将”として、同時代の戦国武将たちはもちろん、後代の歴史家の間でも評価の高い武将、武田典厩信繁。  永禄四年、武田信玄と強敵上杉輝虎とが雌雄を決する“第四次川中島合戦”に於いて討ち死にするはずだった彼は、家臣の必死の奮闘により、その命を拾う。  信繁の生存によって、甲斐武田家と日本が辿るべき歴史の流れは徐々にずれてゆく――。  この作品は、武田信繁というひとりの武将の生存によって、史実とは異なっていく戦国時代を書いた、大河if戦記である。 *ノベルアッププラス・小説家になろうにも、同内容の作品を掲載しております(一部差異あり)。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

処理中です...