機械の森

連鎖

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暇つぶし

戦慄①

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 巨大ナメクジと戦っている麗華の格好は、
 着ていた半纏は既に脱ぎ捨て、薄い浴衣もボロキレのようになっている。

 その浴衣は沢山の穴が開き、煙で溶けて薄くなっているせいなのか、
 巨大な乳房を押さえつけて、お尻の形を浮かび上がらせた布も少ない。

 ――髪の毛が溶ける。じゃあ……歯は?骨は?目は?唇は?…爪って!

 脳裏に、想像したくもない映像が次々と浮かび、
 胸の奥で心臓が激しく脈打つ。

 そうやって一度気になってしまえば、焦りが麗華の動きを単調にし、
 腕を振り下ろす角度も雑になり、間合いの取り方も荒くなる。

 しかし、目の前のナメクジはすでに死にかけているようで、
 動きは鈍り、傷の治りも遅くなり、苦しげに身体を折り畳んでいた。

 ――今よ…これでやっと…。そう麗華が思った瞬間。

 さっきまで背中に感じていた冷たい空気を何かが遮り、
 麗華の背を覆い尽くす違和感が、ゆっくりと彼女に近づいてくる。

「ドシィイイン」

 それに気づいたときには、生ぬるい何かが覆いかぶさり、
 続けざまに腰から肩へと押し潰すような圧迫感が走る。

 その状況を理解した瞬間、麗華は戦慄する。

 自分が何かに押し倒されたまま地面に倒れ、
 管のようなものが頭や顔の上を這い回っている。

 しかも、首筋のあたりからは、咀嚼するような音が痛いほどに響いた。

 もう一匹――

 今まで気配を殺していたのか、それとも突然現れたのか、
 月明かりに濡れた体表を光らせ、麗華の背中に覆いかぶさっている。

 その地面へ沈められる圧迫感や、這い回る音の恐怖よりも、
 脚を左右に大きく開かされて、何かが覗き込むような気配に戦慄する。

 もちろん、その気配の先で「何かをしている…」と気づいていた。

 いくら巨大でも、移動するために気持ち悪い粘液を出しているのも、
 視力が悪く、触覚や口で確認しているのも、全て普通の事かもしれない。

 ――ヤバい…まさか…イヤッ…絶対…絶対に違う。そんな事をしていない。

(…まさか、それって…アレをする為? そんな…ウソでしょ…)

 あり得ない事だが、この巨大ナメクジが、乱暴な男達と同じように、
 自分の脚を左右に広げてから、動けないように押さえつけている。

「ダメェ…うぅ…ヒャあん。そこ。そこは、ひゃべえぇえ」

 しかも、あの場所に管を押し付けて、粘液を塗っている気がした。

 その錯覚でも十分すぎる程に怖いのに、
 ついに、さっきまで死にかけていたナメクジが近づいてくる。

 ――ああ、今度は本気…でも、消化され無いのに食べる? 何を?

 背中にのしかかる重さや、無様な格好で磔にされている羞恥よりも。

(やっぱり、髪が――。イヤ……このナメクジに…)

 髪をすべて溶かされてしまう恐怖もあったが、それ以上に、
 ナメクジに孕まされるなど、絶対にあり得ないと身体が抵抗した。

「離れろッ!」

 抵抗を始めた身体が悲鳴を上げ、骨が軋むような痛みまで走る。

 それでも膝を立て、腰を持ち上げ、脚を広げた恥ずかしい姿のままで、
 激しく上下左右に腰を振って、巨大ナメクジを振り落とそうとしていく。


 戦慄①
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