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暇つぶし
ホームセンター②
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麗華は棚の前で立ち止まり、手に取った作業服を眺めている。
(……最初から粘液で溶ける? それとも布に粘液が染みていくから?)
昨夜、あのヌルヌルが体に触れた瞬間の記憶が蘇る。
浴衣越しに、じわりと水が広がるような感触の後に、
布が溶けて肌に粘液が貼りつき、全身を生温かく包んでいった。
(待って……逆に、水を弾けば……溶けたりしない?)
そう気づいた瞬間、視線が雨具コーナーに跳び、
防水、防水、防水――その言葉が頭の中で反響する。
駆け足で並ぶ棚を目で追い、
タグに刻まれた性能を一つひとつ確認していく。
そうやって目に留まったのは、超撥水加工のレインウェア。
分厚い生地と縫い目はすべてシーリング処理、
色は地味だが、信頼できる日本製と書いてあった。
しかも最大サイズ――これなら、私の全身を包める。
そして隣には、長靴。
粘液を踏んでも怖くないし、足裏からの浸透も防げる。
さらに、レインウェアはフード付きなので、髪まで完全に覆える。
それを次々とカートへ放り込み、口元が自然に吊り上がった。
「……これでリベンジできる…これなら絶対に溶けたりしない…」
その言葉は確信というよりも、あの場所に向かわせる自分への言い訳。
頭の中では、雨具に包まれた自分が巨大ナメクジの横を通り抜け、
屋根上にいる小型のナメクジを、箱に閉じ込めていくイメージ。
胸の奥で心臓が熱を帯び、昂ぶりがじわじわ広がる。
レジで会計を済ませ袋詰めされた商品をカートに乗せたまま外へ出るが、
荷物は見ただけで重く、持ち上げようと思った瞬間に冷や汗がにじんだ。
(……これを旅館に持って帰る? タクシー? この格好? さすがに…)
思いつきでサービスカウンターへ向かい、淡々と声をかける。
「これを、ここに送ってくれる?」
伝票を書いている間も、店員の視線が何度も麗華の全身をなぞる。
もちろん、仕事中の彼女は無表情を装っているが、
眉間にはシワが寄って、定期的に疲れたようなため息を漏らした。
(やっぱり…そうよね。そういう反応するわよね…ごめんね)
仕事中の女も、麗華が目の前で伝票を書いているせいで、
前ボタンを弾き飛ばしそうな程に、大きな乳房が見えているし、
ペンで文字を書き込んだり、軽く身体を動かす度に、
激しく揺れているのが気になっている。
しかも伝票を差し出されたときに、麗華が中腰で身を乗り出したので、
真っ白な太ももの奥が、シャツの合わせ目からハッキリ覗けてしまった。
そんな何処か視線が落ち着かない店員の態度が気になって、
麗華は自分の格好を、もう一度思い出してしまう。
(この格好だと…やっぱり…まあ、見るわよね。あはは)
男性用の白ボタンシャツであっても、
麗華が下着無しで着るのは、色々と限界だったらしい。
前ボタンが張り詰めて伸び、丈はお尻の下辺りまでしか届かない。
足元は、安っぽい旅館のサンダル。
――普通に考えれば「事件に巻き込まれた人」にしか見えない。
そう思って一度は困ったような顔をしたが、すぐに笑みに変わる。
(まあ、どう思われようと、関係ないわね…じゃあ、このままだって…)
色々と気になる店員の態度を無視して、
麗華は荷物を送る手続きを淡々と済ませた。
だが、問題は何も解決していない。
今の格好で街を歩くのは、相変わらず目立つし、
旅館に戻っても、夜まで暇つぶしをする必要がある。
(まだ。新しい客も旅館に来ていないだろうし…誰かいない?
今朝の人達は、もう……帰ったわよね。う~ん。どうしようかな)
旅館に戻っても遊び相手がいないので、
麗華は仕方なく、次の目的を決めようと外に出る。
外へ出るとすぐに夏の陽射しが肌を撫で、白シャツに汗がにじむ。
(どんな服を…その後に、何をして楽しもうかな…夜まで…ウフフ)
その汗に濡れたシャツが、一段と麗華の身体を透けさせていった。
ホームセンター②
(……最初から粘液で溶ける? それとも布に粘液が染みていくから?)
昨夜、あのヌルヌルが体に触れた瞬間の記憶が蘇る。
浴衣越しに、じわりと水が広がるような感触の後に、
布が溶けて肌に粘液が貼りつき、全身を生温かく包んでいった。
(待って……逆に、水を弾けば……溶けたりしない?)
そう気づいた瞬間、視線が雨具コーナーに跳び、
防水、防水、防水――その言葉が頭の中で反響する。
駆け足で並ぶ棚を目で追い、
タグに刻まれた性能を一つひとつ確認していく。
そうやって目に留まったのは、超撥水加工のレインウェア。
分厚い生地と縫い目はすべてシーリング処理、
色は地味だが、信頼できる日本製と書いてあった。
しかも最大サイズ――これなら、私の全身を包める。
そして隣には、長靴。
粘液を踏んでも怖くないし、足裏からの浸透も防げる。
さらに、レインウェアはフード付きなので、髪まで完全に覆える。
それを次々とカートへ放り込み、口元が自然に吊り上がった。
「……これでリベンジできる…これなら絶対に溶けたりしない…」
その言葉は確信というよりも、あの場所に向かわせる自分への言い訳。
頭の中では、雨具に包まれた自分が巨大ナメクジの横を通り抜け、
屋根上にいる小型のナメクジを、箱に閉じ込めていくイメージ。
胸の奥で心臓が熱を帯び、昂ぶりがじわじわ広がる。
レジで会計を済ませ袋詰めされた商品をカートに乗せたまま外へ出るが、
荷物は見ただけで重く、持ち上げようと思った瞬間に冷や汗がにじんだ。
(……これを旅館に持って帰る? タクシー? この格好? さすがに…)
思いつきでサービスカウンターへ向かい、淡々と声をかける。
「これを、ここに送ってくれる?」
伝票を書いている間も、店員の視線が何度も麗華の全身をなぞる。
もちろん、仕事中の彼女は無表情を装っているが、
眉間にはシワが寄って、定期的に疲れたようなため息を漏らした。
(やっぱり…そうよね。そういう反応するわよね…ごめんね)
仕事中の女も、麗華が目の前で伝票を書いているせいで、
前ボタンを弾き飛ばしそうな程に、大きな乳房が見えているし、
ペンで文字を書き込んだり、軽く身体を動かす度に、
激しく揺れているのが気になっている。
しかも伝票を差し出されたときに、麗華が中腰で身を乗り出したので、
真っ白な太ももの奥が、シャツの合わせ目からハッキリ覗けてしまった。
そんな何処か視線が落ち着かない店員の態度が気になって、
麗華は自分の格好を、もう一度思い出してしまう。
(この格好だと…やっぱり…まあ、見るわよね。あはは)
男性用の白ボタンシャツであっても、
麗華が下着無しで着るのは、色々と限界だったらしい。
前ボタンが張り詰めて伸び、丈はお尻の下辺りまでしか届かない。
足元は、安っぽい旅館のサンダル。
――普通に考えれば「事件に巻き込まれた人」にしか見えない。
そう思って一度は困ったような顔をしたが、すぐに笑みに変わる。
(まあ、どう思われようと、関係ないわね…じゃあ、このままだって…)
色々と気になる店員の態度を無視して、
麗華は荷物を送る手続きを淡々と済ませた。
だが、問題は何も解決していない。
今の格好で街を歩くのは、相変わらず目立つし、
旅館に戻っても、夜まで暇つぶしをする必要がある。
(まだ。新しい客も旅館に来ていないだろうし…誰かいない?
今朝の人達は、もう……帰ったわよね。う~ん。どうしようかな)
旅館に戻っても遊び相手がいないので、
麗華は仕方なく、次の目的を決めようと外に出る。
外へ出るとすぐに夏の陽射しが肌を撫で、白シャツに汗がにじむ。
(どんな服を…その後に、何をして楽しもうかな…夜まで…ウフフ)
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