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暇つぶし
ホームセンター①
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(まだ外は熱いよね…やっぱりアレは涼しくならないと…うふふ)
上機嫌のままタクシーを降りると、真夏の熱気が肌にまとわりつき、
汗が滲んでいた美しい肌に白シャツが貼りつく。
そんな夏の日差しを浴びた彼女の首筋を伝う汗が、背中に線を描き、
胸元や谷間を伝って腹部に流れ、その感触すらも妙に気になってしまい、
さっき収めた気持ちをざわつかせてしまう。
(この身体…やっぱり…もぉ~。何かしたんじゃないの?)
麗華は歩幅を早めるが、アスファルトが照り返す日差しは眩しく、
白シャツの内側に光が差し込み、
その下に何も着ていないことまで暴かれるような錯覚や、
異常な興奮が身体を駆け巡っていた。
駆け込むようにホームセンターの自動ドアをくぐると、
冷気が一気に身体を撫で、火照った気持ちを切り裂いていく。
(気の所為…そうよ…そんな事なかったわ…熱いのは日差し…)
思わず肩をすくめるが、すぐに表情を引き締めてカート置き場へ向かい、
取っ手を握る手のひらに、鉄の冷たさがじんと沁みていった。
――視線が集まっている。
入口付近からレジ奥まで、誰もが何気なく彼女を一瞥するが、
麗華には、それが自分の気持ちに突き刺さる刃のように思えた。
(夏だから…そう、夏だから……でも、笑えるほど、視線が集まるわね)
乾いた笑いを浮かべながらも、平然を装ってカートを押す。
しかし何処か居心地が悪いらしく、麗華のショートヘアが激しく揺れ、
白シャツの前ボタンを無理やりとめたせいで、
軽く透けた布の表面に浮き出た身体までもが、釣られて揺れていく。
残念な事に、白シャツ程度で麗華の美しい姿は隠せない。
大胆に腰を振って歩けば、一番下のボタンを止めたとしても、
布が上下に揺れて後ろからお尻がはみ出し、
布の合わせ目が左右に分かれて、陰毛がない割れ目を見せてしまう。
それらすべてが「目立たない方が不自然」なほど、
彼女の美しく妖艶な身体を浮かび上がらせて新しいオスを誘っていた。
(……仕方ないわ。注目を浴びるのは、避けられないけど…)
そんな姿に気づいている自分を奮い立たせて、
集まった視線から逃げ出すように、殺虫剤の棚に向かう。
そこに有った「遠くまで噴射可能」と書かれたスプレー缶を確認すると、
ある程度の重みを感じたが、口元には皮肉の笑みが浮かんだ。
「……これで、あの化け物が死ぬわけない…全然足りない…」
声は小さく、自分の胸にだけ落ちる。
「でも…ウフフ。これって…」
だが、あまりの滑稽さに鼻で笑い、
缶を棚に戻した後に脳裏に浮かぶのは、昨日の戦闘。
――3m程の巨大なナメクジが二匹。
――屋根から降り注ぐように落ちてきた、雑魚ナメクジが沢山。
――手のひらサイズのナメクジですら、「雑魚」と呼べる感覚。
手のひらサイズのナメクジが、屋根の上から一斉に降り注いできたら、
普通は「悲鳴を上げて逃げ惑うはずなのに」と、
何処か自分は壊れていると自覚してしまう。
(大型は無理。でも小型なら……小型だけなら…あの子…あの快感…)
組織の指示が蘇る――「生体サンプルの回収」。
その時に山本の顔を思い出してしまい、吐き気と嫌悪が渦を巻くが、
それすら押し殺して、小型ナメクジを思い出すと心が癒やされていく。
(回収する…手のひらサイズが数匹…溶けない…あの可愛い子達…)
麗華は視線を走らせ、キャンプ用品の棚で金属コンテナを見つけると、
それは頑丈な造りで、内側は密閉加工に見えた。
――これなら小型を閉じ込めて持ち帰れる。かも…? 彼等を持ち帰り…
(数匹なら…真っ暗な部屋で…ウフフ。多少減っても…)
「ゴトン」と音を立ててカートに放り込むと、計画が形を成していく。
「……今日は、小型狙い。生体サンプル…あの可愛い子達を…」
低く自分に言い聞かせる声が、冷たい鉄の反響のように響く。
続けて、何か着るものはないかとワークウェアの棚へと移った。
耐薬品、防護服、耐熱――吟味する眼差しはすでに戦いを見据えている。
カートの車輪が床を転がる音が、
まるで意志を持つかのように静かな通路に響いていた。
ホームセンター①
上機嫌のままタクシーを降りると、真夏の熱気が肌にまとわりつき、
汗が滲んでいた美しい肌に白シャツが貼りつく。
そんな夏の日差しを浴びた彼女の首筋を伝う汗が、背中に線を描き、
胸元や谷間を伝って腹部に流れ、その感触すらも妙に気になってしまい、
さっき収めた気持ちをざわつかせてしまう。
(この身体…やっぱり…もぉ~。何かしたんじゃないの?)
麗華は歩幅を早めるが、アスファルトが照り返す日差しは眩しく、
白シャツの内側に光が差し込み、
その下に何も着ていないことまで暴かれるような錯覚や、
異常な興奮が身体を駆け巡っていた。
駆け込むようにホームセンターの自動ドアをくぐると、
冷気が一気に身体を撫で、火照った気持ちを切り裂いていく。
(気の所為…そうよ…そんな事なかったわ…熱いのは日差し…)
思わず肩をすくめるが、すぐに表情を引き締めてカート置き場へ向かい、
取っ手を握る手のひらに、鉄の冷たさがじんと沁みていった。
――視線が集まっている。
入口付近からレジ奥まで、誰もが何気なく彼女を一瞥するが、
麗華には、それが自分の気持ちに突き刺さる刃のように思えた。
(夏だから…そう、夏だから……でも、笑えるほど、視線が集まるわね)
乾いた笑いを浮かべながらも、平然を装ってカートを押す。
しかし何処か居心地が悪いらしく、麗華のショートヘアが激しく揺れ、
白シャツの前ボタンを無理やりとめたせいで、
軽く透けた布の表面に浮き出た身体までもが、釣られて揺れていく。
残念な事に、白シャツ程度で麗華の美しい姿は隠せない。
大胆に腰を振って歩けば、一番下のボタンを止めたとしても、
布が上下に揺れて後ろからお尻がはみ出し、
布の合わせ目が左右に分かれて、陰毛がない割れ目を見せてしまう。
それらすべてが「目立たない方が不自然」なほど、
彼女の美しく妖艶な身体を浮かび上がらせて新しいオスを誘っていた。
(……仕方ないわ。注目を浴びるのは、避けられないけど…)
そんな姿に気づいている自分を奮い立たせて、
集まった視線から逃げ出すように、殺虫剤の棚に向かう。
そこに有った「遠くまで噴射可能」と書かれたスプレー缶を確認すると、
ある程度の重みを感じたが、口元には皮肉の笑みが浮かんだ。
「……これで、あの化け物が死ぬわけない…全然足りない…」
声は小さく、自分の胸にだけ落ちる。
「でも…ウフフ。これって…」
だが、あまりの滑稽さに鼻で笑い、
缶を棚に戻した後に脳裏に浮かぶのは、昨日の戦闘。
――3m程の巨大なナメクジが二匹。
――屋根から降り注ぐように落ちてきた、雑魚ナメクジが沢山。
――手のひらサイズのナメクジですら、「雑魚」と呼べる感覚。
手のひらサイズのナメクジが、屋根の上から一斉に降り注いできたら、
普通は「悲鳴を上げて逃げ惑うはずなのに」と、
何処か自分は壊れていると自覚してしまう。
(大型は無理。でも小型なら……小型だけなら…あの子…あの快感…)
組織の指示が蘇る――「生体サンプルの回収」。
その時に山本の顔を思い出してしまい、吐き気と嫌悪が渦を巻くが、
それすら押し殺して、小型ナメクジを思い出すと心が癒やされていく。
(回収する…手のひらサイズが数匹…溶けない…あの可愛い子達…)
麗華は視線を走らせ、キャンプ用品の棚で金属コンテナを見つけると、
それは頑丈な造りで、内側は密閉加工に見えた。
――これなら小型を閉じ込めて持ち帰れる。かも…? 彼等を持ち帰り…
(数匹なら…真っ暗な部屋で…ウフフ。多少減っても…)
「ゴトン」と音を立ててカートに放り込むと、計画が形を成していく。
「……今日は、小型狙い。生体サンプル…あの可愛い子達を…」
低く自分に言い聞かせる声が、冷たい鉄の反響のように響く。
続けて、何か着るものはないかとワークウェアの棚へと移った。
耐薬品、防護服、耐熱――吟味する眼差しはすでに戦いを見据えている。
カートの車輪が床を転がる音が、
まるで意志を持つかのように静かな通路に響いていた。
ホームセンター①
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