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偽善者と攻城戦イベント 二十三月目

偽善者と攻城戦前篇 その05

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≪せんゆうされたりょういきへ、まものがおくられます。これをふせげずクリスタルをはかいされたばあい、せんゆうはしっぱいされますのでごちゅういください≫


 予想通りというかなんというか、攻城戦が始まってから半刻ほど経ったとき……突如アナウンスが、そんなことを告げてきた。


「メルス、なんか来た!」
「さっきまでは獣だったのに……急に種類が変わったわよ」

「そういうイベントだしな。やることもできたし、始めるか。アリィ、トランプ兵を二十体ほど門の辺りに集めてくれ。アリスは敵の詳細は可能な限り見てほしい」

「えっ? う、うん」
「分かったわ」

「準備しておいて正解だった。クリスタルが思いのほか便利でな、素材さえあれば好きなだけ攻城戦で使えるアイテムを用意できるみたいなんだ──[設置]」


 ボタンを押して、都市を囲う壁の上に指定したアイテムを並べていく。
 それが終わるとほぼ同じとき、アリィが派遣したトランプ兵たちが到着する。


「それって、たしか……大砲だっけ?」

「魔力式らしいがな。魔力を装填し、それを弾として放つ魔道具だ。アリィ、トランプ兵たちだけで魔力を籠められるか?」

「できるにはできるよ。ただ、トランプたちに籠めた魔力が無くなったら消えちゃうよ」

「一定距離まで近づくと再配置ができなくなるからな……増設ユニットと補給ユニットを用意しておこうか。あと、そっちに派遣できる都市の作品も送っておく」


 素材を迷宮ダンジョンで集められ、しかも複製できるチート野郎こと俺です。
 条件に合ったレア度の素材をクリスタルに入れることで、それらは用意できた。

 その地に合った物が召喚できるようだが、ここだと芸術作品っぽいヤツが当て嵌まる。
 何を模しているか分からないオブジェクトたちが、今は壁の上に鎮座していた。

 おまけに俺が援軍に送ったのも、この都市に暮らす人々が生みだした作品たちだ。
 当然、彼らの感性が生みだした作品であるので……なんだかおかしな光景になった。


「これ、あとから観た人がどう思うかな?」

「まあ、そういう未来の話は置いておこう。アリス、どうだった?」

「一回目っていうことみたいだし、そこまで強い個体は居ないわね。黒狼ブラックウルフと同じ位階ランクかそれ以上、ただし種類は決まっていないみたいね。魔子鬼デミゴブリンやら人形ドールやらお祭り騒ぎよ」

「……なら、特に新しい策は練らなくてもいいかな? というか、最初から使える仕掛け全部を使わなきゃいけないなんて、クソゲーでしかないしな──発射ファイアー!」


 合図に合わせ、大砲に魔力を籠めさせる。
 充填が完了した時点で自動的に魔力が精練されて弾となり、外へ射出された。

 ドーンと響く音を立てて飛んでいったそれは、地面に墜ちるのと同時に凄まじい衝撃を生みだして魔物たちを一掃していく。


「──ふははははっ、圧倒的ではないか我が軍は!」

「「うわー」」

「……あの、止めてくれない? 俺だって分かっているんだよ、孤軍奮闘なのにこれを言うヤツの残念さぐらい!」

「やらなきゃいいのに、それなら」
「アリィ、それが様式美おやくそくってものよ」


 そんな会話をしている間にも、状況は着々とこちらに有利なように動いている。
 相手は今の祈念者からすれば雑魚ばかり、そうじゃなくとも補正が有れば楽勝だ。

 一日目はあくまで体験、占有した時にどうなるかを教えるためのものなのだろう。
 大砲が撃ち込まれるたび、どんどん吹き飛ぶ魔物を観ながらそんなことを考える。


「アリィたち、これからどうする? だいぶ消沈していた心も落ち着いてきたし、帰りたいなら帰ってもいいけど」

「えー、その言い方はないんじゃないの? せっかく呼ばれてきてあげたんだから」
「そうよ。アリィだって、せっかく張り切って準備をしてたんだから」
「ちょ、なんで言っちゃうのアリス!?」

「そうだったのか……なんか、ごめ……じゃないや、ありがとうな──アリィ、アリス」

「ほ、褒めてほしかったわけじゃ……こ、こちらこそ、ありがとうごじゃいましゅ……」
「アリスへの気遣いもできるなんて、成長しているわね。ええ、手伝った甲斐があるわ」


 顔を真っ赤にして俯くアリィと、ほんのりと赤らめながらも毅然とした表情を保つアリス……二人の性格がよく分かる反応だ。

 ちょっと反省し、謝罪ではなく感謝を伝えようという考えを基に行動してみたが、どうやら正解だったみたいだな。

 ──さて、やる気もチャージされたし、魔物なんてさっさと屠って攻城戦の魔物侵入イベントも終わらせてやろうじゃないか。


  ◆   □   ◆   □   ◆


≪──いっかいめのこうじょうせんはしゅうりょうとなります。みなさん、おつかれさまでした。じかいもまた、きていのじこくにおこなわれますが、いこうはゲリラてきにまものがはっせいすることがあります≫

≪せんゆうをされたクランのかたは、しょうごでないからといってなにもしないわけにはいきません。どうめいをくんだクランのかたとともに、せんゆうしたりょういきをまもりぬいてください≫


 と言ったGM06によって、イベントは再び争いではなく守りへと移行する。
 ちなみに都市は防衛できたし、魔物も出てきた分は殲滅できた。


「それじゃあ、そろそろアリィは帰るよ。頑張ってね、メルス」

「ああ、ありがとう」


 トランプ兵もアリスもすでに居なくなっており、アリィも帰還したため再びボッチだ。
 しかし、やることもできた……次の眷属を呼びだすなら、よりよい環境にしないとな。


「生産神の加護持ちってところを見せつけないと……さて、何から始めようか」


 レッツ魔改造!
 しばらくは問題ないだろうと、部屋を出て都市中を駆け巡るのだった。


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