1,650 / 2,515
偽善者と公害対策 二十五月目
偽善者と旅での修行 その09
しおりを挟む
先日、大量更新をしていますので、まだの方はぜひ
===============================
起き上がったわたしは、さっそく治療行為に参加しました。
どうやら参加者も増えているようで、簡単な回復魔法は祈念者の方々が治しています。
……回復魔法のレベリングと考える人もいるでしょうが、今は猫の手も借りたい事態なので何も言えません。
「こ、ここがそうです」
「……人数は少ないですね」
「不幸中の幸いです。それでも、長時間一つの状態異常になっているため、どういった影響が出るのか分かりません」
対して、わたしが案内してもらった場所には誰も祈念者は居ません。
そこはもっとも深刻な患者の居る場所……状態異常を治す魔法が不明な方々が居ます。
「看破スキルを使いましょうか?」
「先ほど祈念者の方に試してもらったのですが、どうやら看破しようとした方へ同様の症状が移ってしまうそうです。そのお方曰く、『ろぐあうと』? すれば解消されるようですが……『ですぺな』? があるそうです」
「ありがとうございます。つまり、視ることはできても呪い返しのような目に遭ってしまうみたいです。その方は、症状を視ることができたのですか?」
「はい。“回復”でしたので、すぐに念のため隔離して治療しました。使用後は他の方々と同じように鎮静化しています」
状態異常を治そうにも、調べるだけで自身も同じ状態異常に罹ってしまう。
今回のケースはすぐに治せるので、良かったですが……危険ですね。
唯一の救いは、それを試したのが祈念者で誰も死んではいないこと。
自分が罹った状態異常が分からないので、すぐには治しづらいでしょう。
また、移った状態異常が本当に患者のモノなのかどうか不明です。
弱体化した結果なのか、それとも異なるモノなのか……調べなければなりません。
「わたしがやりますので、少し離れていてください。おそらく、これなら完治できます」
「……ご武運を」
遠くに移動しつつも、それでも見守ってくださる女性に感謝します。
……先ほどのように倒れた時の場合を、心配してくださっているのでしょう。
ペコリと頭を下げてから、わたしは意識を集中します。
そして、固有スキル──【万能克復】を発動させました。
「うぐっ……かはっ!」
望んだのは状態異常の完治。
発動後、淡い光が患者の方を包むと……苦しそうな表情が和らぎました。
──この時点で一つ目のスキルの効果は終了し、わたしに対価を求めてきます。
かつての実験時、その対価となる痛みは多少の痛みと言い切れる程度でした……今、わたしを苛む痛みはそれとは桁違いでした。
脳をぐちゃぐちゃにかき混ぜられ、何度も激しくハンマーを叩きつけられる……視界はグラリと揺れ、真っ赤に染まります。
平衡感覚も狂い、支えるための力も無くなり倒れる──寸前に、何かがわたしを支えてくれました。
感知や探知もする気力がありませんが、おそらくはメルです。
倒れてしまってはあの方を心配させてしまうからという、少しおかしな配慮ですね。
それに、このスキルは長時間発動させることで、もう一つの効果を発揮します。
そのためにも、強制的に患者から離されるのは御免でした。
「うぅ……これが、原因──痛ッ!」
患者の体内を調べ、治した症状の原因を理解することができる効果です。
メル曰く、この効果は本来の使い方ではない……いわゆる応用とのこと。
一度治した際の過程を見直し、どのように治療すれば正しく治すことができたのかを洗い直すという、裏技みたいな調べ方。
すでに呪い返し(仮)も含めたネズミの状態異常を治していますので、この方法ならば逆に悪影響の原因も分かります。
「メル……もう、大丈夫です」
《そっか。なら、三秒後に解除するね》
予告通り、体の支えは失われました。
少し寂しいとも思いましたが、気を引き締めてポーションを飲みます。
先ほどの女性が治療の完了を見て、こちらに戻ってきます。
ちょうど伝えてほしいこともありましたので、そのまま来てもらいました。
「ご、ご無事で何よりです……鑑定スキルでも、状態異常が無くなっていますね。いったい、どのような方法で」
「すみませんが、今は。それよりも、伝えてほしいことがあります──治療方法が、判明しました」
「! く、詳しくお願いします」
「はい、それは──」
□ ◆ □ ◆ □
ネズミ──『呪病鼠』は噛んだ相手に印を刻み、そこを媒介に状態異常を起こします。
時間経過でその症状が悪化し、最後には死に至る……恐ろしい能力です。
そして、それは時間経過以外にも異なる方法で症状を悪化させました。
周囲の患者、つまり同じくネズミに印を刻まれた者が居ることで悪化するのです。
日本人ならばよく分かる──『ネズミ講』というものが分かりやすい表現でしょう。
印を持っている人が感染源となって、周囲の者を蝕んでいくのです。
ただし、それは王の個体が生きている間だけに限るため、最悪の事態は防げました。
それでも相互に状態異常を高め合う、そんな呪い染みた能力が残っています。
それを何とかするために、この場に居る全員の協力が必要となります……プーチがポーションを作り上げるまで、最低限の処置をしておくためにも。
===============================
起き上がったわたしは、さっそく治療行為に参加しました。
どうやら参加者も増えているようで、簡単な回復魔法は祈念者の方々が治しています。
……回復魔法のレベリングと考える人もいるでしょうが、今は猫の手も借りたい事態なので何も言えません。
「こ、ここがそうです」
「……人数は少ないですね」
「不幸中の幸いです。それでも、長時間一つの状態異常になっているため、どういった影響が出るのか分かりません」
対して、わたしが案内してもらった場所には誰も祈念者は居ません。
そこはもっとも深刻な患者の居る場所……状態異常を治す魔法が不明な方々が居ます。
「看破スキルを使いましょうか?」
「先ほど祈念者の方に試してもらったのですが、どうやら看破しようとした方へ同様の症状が移ってしまうそうです。そのお方曰く、『ろぐあうと』? すれば解消されるようですが……『ですぺな』? があるそうです」
「ありがとうございます。つまり、視ることはできても呪い返しのような目に遭ってしまうみたいです。その方は、症状を視ることができたのですか?」
「はい。“回復”でしたので、すぐに念のため隔離して治療しました。使用後は他の方々と同じように鎮静化しています」
状態異常を治そうにも、調べるだけで自身も同じ状態異常に罹ってしまう。
今回のケースはすぐに治せるので、良かったですが……危険ですね。
唯一の救いは、それを試したのが祈念者で誰も死んではいないこと。
自分が罹った状態異常が分からないので、すぐには治しづらいでしょう。
また、移った状態異常が本当に患者のモノなのかどうか不明です。
弱体化した結果なのか、それとも異なるモノなのか……調べなければなりません。
「わたしがやりますので、少し離れていてください。おそらく、これなら完治できます」
「……ご武運を」
遠くに移動しつつも、それでも見守ってくださる女性に感謝します。
……先ほどのように倒れた時の場合を、心配してくださっているのでしょう。
ペコリと頭を下げてから、わたしは意識を集中します。
そして、固有スキル──【万能克復】を発動させました。
「うぐっ……かはっ!」
望んだのは状態異常の完治。
発動後、淡い光が患者の方を包むと……苦しそうな表情が和らぎました。
──この時点で一つ目のスキルの効果は終了し、わたしに対価を求めてきます。
かつての実験時、その対価となる痛みは多少の痛みと言い切れる程度でした……今、わたしを苛む痛みはそれとは桁違いでした。
脳をぐちゃぐちゃにかき混ぜられ、何度も激しくハンマーを叩きつけられる……視界はグラリと揺れ、真っ赤に染まります。
平衡感覚も狂い、支えるための力も無くなり倒れる──寸前に、何かがわたしを支えてくれました。
感知や探知もする気力がありませんが、おそらくはメルです。
倒れてしまってはあの方を心配させてしまうからという、少しおかしな配慮ですね。
それに、このスキルは長時間発動させることで、もう一つの効果を発揮します。
そのためにも、強制的に患者から離されるのは御免でした。
「うぅ……これが、原因──痛ッ!」
患者の体内を調べ、治した症状の原因を理解することができる効果です。
メル曰く、この効果は本来の使い方ではない……いわゆる応用とのこと。
一度治した際の過程を見直し、どのように治療すれば正しく治すことができたのかを洗い直すという、裏技みたいな調べ方。
すでに呪い返し(仮)も含めたネズミの状態異常を治していますので、この方法ならば逆に悪影響の原因も分かります。
「メル……もう、大丈夫です」
《そっか。なら、三秒後に解除するね》
予告通り、体の支えは失われました。
少し寂しいとも思いましたが、気を引き締めてポーションを飲みます。
先ほどの女性が治療の完了を見て、こちらに戻ってきます。
ちょうど伝えてほしいこともありましたので、そのまま来てもらいました。
「ご、ご無事で何よりです……鑑定スキルでも、状態異常が無くなっていますね。いったい、どのような方法で」
「すみませんが、今は。それよりも、伝えてほしいことがあります──治療方法が、判明しました」
「! く、詳しくお願いします」
「はい、それは──」
□ ◆ □ ◆ □
ネズミ──『呪病鼠』は噛んだ相手に印を刻み、そこを媒介に状態異常を起こします。
時間経過でその症状が悪化し、最後には死に至る……恐ろしい能力です。
そして、それは時間経過以外にも異なる方法で症状を悪化させました。
周囲の患者、つまり同じくネズミに印を刻まれた者が居ることで悪化するのです。
日本人ならばよく分かる──『ネズミ講』というものが分かりやすい表現でしょう。
印を持っている人が感染源となって、周囲の者を蝕んでいくのです。
ただし、それは王の個体が生きている間だけに限るため、最悪の事態は防げました。
それでも相互に状態異常を高め合う、そんな呪い染みた能力が残っています。
それを何とかするために、この場に居る全員の協力が必要となります……プーチがポーションを作り上げるまで、最低限の処置をしておくためにも。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
494
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる