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偽善者と終焉の島 前篇 六月目
偽善者と『不死魔王』 その03
しおりを挟む第一のラッパ:地上の三分の一、木々の三分の一、全ての青草が焼ける。
第二のラッパ:海の三分の一が血になり、海の生物の三分の一が死ぬ。
第三のラッパ:にがよもぎという星が落ち、川の三分の一が苦くなり、人が死ぬ。
第四のラッパ:太陽、月、星の三分の一が暗くなる。
第五のラッパ:蝗達が額に神の刻印が無い人達を、五ヶ月苦しめる。
第六のラッパ:四人の天使が、人間の三分の一を殺す。生き残った人間は相変わらず、悪霊、金、銀、銅、石の偶像を拝む。
第七のラッパ:この世の国は我等の主、メシアの物となる。天の神殿が開かれ、契約の箱が見える。
――要約、ヨハネの黙示録。
いや、別に関係無いんだけどな。
ラッパを吹いた途端様々なことが起きた。
結界内に生えている植物の三分の一が行き成り発火したのだ……あ、関係あったよ。
(最後の審判)は、何が起こるかランダム、どの宗教における審判が行われるかも分からない謎のスキルだったんだが、今回はヨハネの第一の効果が起こったみたいだな。
城の辺りにあった植物も勿論発火した為、現在城は炎に包まれている……城を制作時に例え魔法耐性や火炎耐性を籠めたとしても、(最後の審判)によって起こった炎を消すことは無理なんだろうな(俺の城には趣味で神鉄鉱石コーティングを後から行ったから、神の裁きでも来ない限りは平和だぞ)。
《……し、聞こえますか》
そんな時、グーとは違う念話が頭に響く。
ちなみにだが、最近は必要時以外はその日に一緒にいる眷属以外からの念話が来ることは無い。取次……だっけ? 一緒にいる眷属がそれをやってから念話が来る。
眷属も増えてきたので、頭の中で一気に念話をされても困るしな(別に全てを聞くことは可能だが、返信ができない。誰からやるかで偶に機嫌が悪くなる眷属がいたので、こんな風になった)。
……おっと、今はそこじゃないな。そんな事情があるので他の眷属から念話が来ない。なら状況で聞こえた、この声の持ち主は――
「……初めましてだな、お前がガーか?」
《はい。私が貴方の聖武具、"慈愛のラッパ"の自我であるガーです》
……ドロップアウトする前の状態みたいだな。百合でも無く殺戮天使でも無く、駄落する前の駄天使になったな。なんかこう、神々しい感じなんだよ、直感的にそんな物に思えるような存在ってか?
――まぁ、あまり気にしないがな。
「とりあえず、鑑定するぞ」
《はい……す、少し恥ずかしいですが》
俺は(鑑定眼)を発動させ、ガーの詳細を視てみる――
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慈愛のラッパ 製作者:メルス
聖武具:【慈愛】 自己進化型:覚醒
RANK:X 耐久値?/?
今代の【慈愛】所持者が創り出したラッパ
魔力を籠めることで表面積を無限に拡張可能
当然音を出すことも可能で、その音色は最後の審判を告げる音とも言われている
また、この喇叭は意思を持ち、攻撃や主以外の者を拒絶する
装備スキル
(自我の花:ガー)New
(音魔法)(振動魔法)(無限拡張)
(サイズ調整)(最後の審判)←Upgrade
(破壊成長)
New
(同族召喚)(確率操作:限定)
(?)(?)(?)(?)(?)(?)……
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「(最後の審判)が強化されているんだが、具体的にどうなったんだ?」
《えっとー、発生する現象が増えましたね》
「まだ全てを把握していないから何とも言えないが……ガーは何が起こるか把握できているのか」
《あ、はい。私のスキルですので……メルス様、聴きますか?》
「あぁ、頼む」
《……(コホンッ)えっとー、まずはヨハネの黙示録の七つの笛である――》
それから、俺は(最後の審判)で発生する現象を全て記憶したわけだが……かなりの種類があるみたいだ。そもそもとして、最後の審判という概念自体が宗教によって異なっていたからな。
今回はそんな宗教毎のそれとは別に、漫画やアニメに出てきた似たような概念を持つ物が組み込まれたらしい。
具体的に言うとそうだな……火の七日間とかもそれに当てはまったらしいぞ。
まぁ要するに、世界が滅ぶような現象が組み込まれたらしい。
これを聞いた時の俺の気持ちが分かるか? 物騒なんだよ! どうしてこうも使い辛いスキルばっかり増えるんだよ! ……って考えたりもした。
でも、(最後の審判)には破壊を齎す現象ばかりでは無い。永遠の命がどうのこうのする現象や、Yes! ・キリストが復活するのもあるしな。
(確率操作:限定)は、そんな物騒な現象が出来る限り起きないように解放されたスキルらしい。俺のLUCの数値分、指定の現象が発生する確率を上げれるスキル。
それは破壊を防ぐ為のスキルである。【慈愛】を司る者が行うのは、できるだけ幸せを齎す物が良いと、偽善者さんは思うな……俺のLUCは0だけど。
閑話休題
「ガーはとりあえず、人形の中に入って受肉作業に移行してくれ」
《はい、分かりました》
と言うことでガーは受肉を行う為、もうお休みだ。(最後の審判)は、そう何度も連続して使えるような代物じゃないのだ。
《マスター、人が……》
「いや、さすがに分かるさ。あそこまでジッと見られればな」
ガーを仕舞っている間に、状況はかなり変化していた。
なんと、城の炎が消されていたのだ。
しかも城の中からいかにも強そうな何かが現れており、上空にいる俺にバッチリ気付いているぞ。
《マスター、どうする?》
「まぁ、話してみるか」
俺はとりあえず、そいつの元へゆっくりと降りて行った。
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