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偽善者と終焉の島 中篇 七月目

偽善者とモノギガンテ

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 前回のあらすじ
 エレト平原の特殊フィールドを探す為、辺り一帯の魔物を狩り尽くした俺とリー。
 だが代償としてリー(が驚いて意識)を失ってしまい、孤立してしまった。
 果たして、メルスは単独でエリアボスを倒すことができるのか!!
 ……って感じで行けば少しは盛り上がる気がするんだけどな~。
 今回はリーのツッコミも全く無いから面白みに欠けると言うかなんと言うか……」


 あまりの大きさに未だに黒い影しか見えない魔物を見つめながら、俺は一人寂しく語っていく。
 ……クッ、惜しいツッコミ役を無くした……ネタ要素的な意味で。
 リーの意識が戻って来てくれれば、数々のツッコミが俺を癒してくれるのに……。


「そもそもさー、なんでこんなにデカいのをエリアボスに設定しているのさ運営はー。絶対に倒させる気無いだろうにー。
 何? 俺は蟻ポジションですか? 象VS蟻でファイトをしたとしても、象が踏み潰すだけですぐに終わってしまうだろうが!
 大体、蟻だって単独で戦うワケじゃあ無いじゃん? 集団で攻めて象イラつかせて、その隙に色々やって勝つじゃん?
 だけど俺ソロじゃん? ……ハァ。というかこれ、絶対に象じゃないから話の前提条件も変わっちゃうし、象以上にデカいし……これ、一寸法師も口の中に入れないだろうよ」


 逆光の所為からかいつまで経っても容姿が確認できないので、(光魔法)で照らしてみると、それは直ぐに分かった。


「――猿やん」


 この島の生き物らしく黒毛で体を包み、二足歩行で歩いている……そんな巨大な猿が目の前にはいた。
 手には何やら大きくて硬そうな黒い棒を持ち、地面を突いているよ(それがこの揺れの原因だろうか)。

 (鑑定眼)発動――


モノギガンテ・モルタル Lv75
エリアボス アクティブ
地上 格上


 確か……モノは猿のスペイン語の意味だったな。昔、ネットで見たことがある。
 ギガンテは多分巨大なだから……普通に大きい猿って意味なのか。


「かと言ってもねー、名前が分かっても弱点が分かる便利なスキルは……あるにはあるけど全然看破に成功しないし、そもそもあれにはかなりのLUCが必要だし、二足歩行だからどうせ弱点は人と同じかな? それなら大体分かるし大丈夫か」

 GUOOOOOOOO!

 足元で何かが光っていることに気付いたのだろう。
 猿は再び大声を上げて棒を高々に空へと掲げ……振り下ろす。

(――"地形変化・山囲")

 【箱庭作り】を発動させて地面を踏みつけると、粘土のように足元が揺れ始め、猿の周りに巨大な山が形成されていく。
 その山々は、ドーナツ状に猿を取り囲んでいった。

 猿はその激しい揺れに耐えることができずに、ドシンッと転び尻餅をついていた。


「……無様!!」


 別にクジラの目玉を抉り取ったワケでは無いが、何となくそう言ってしまった。

 だが、それを聞いた猿は目に見えて怒り出し、棒は辺りに振り回していく。


「ヘイヘーイ、そんな大きいだけが取り柄の棒で何ができるっていうんだよ……ゲッ、面倒なスキルを付けてるなー。
 何だよ(状態異常付与:暗闇)(状態異常付与:難聴)(状態異常付与:沈黙)って、真ん中の奴は主人公なら常にその状態だろう、わざわざ状態異常として登録する必要無いだろう」


 猿の持っていた棒は"三猿の黒棒"といい、先のスキルと不壊系のスキルを持ったレア物であった。
 猿の魔物か獣人が装備した時のみステータスに大幅補正とも記載されていたから、プレイヤーでもこれで強化されるんだろう……売れるな。


「……えっと~、お猿さんお猿さん。聞こえていますか? 古今東西猿というものは、大体が敵役または憎まれ役として物語に出ていました。特に日本の過去の文献では、大体どこかの娘を攫っていくのですが……殆どがそこに居合わせた猟師や僧侶、そして犬によって退治されるんですよね。
 そして今、ここに居合わせるは冥界また地獄の番犬であるケルベロス! ただでさえ犬が苦手な猿に首三つの犬をプレゼント! いやー鬼畜の所業だねー。
 とにかく、今からそっちに行くから大人しくしてて(ブオンッ)……は無理そうだし、一気にその魂、狩らせて貰いやすぜ!!」


 途中で俺の居る所に横薙ぎをしてくる奴に容赦はしない!
 俺は尖った犬歯をむき出しにしながら、猿へと一気に駆け寄る。


「――なぁ、電子レンジって知ってるか?」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


≪エレト草原の"モノギガンテ・モルタル"が討伐されました≫

《初討伐称号『モノスレイヤー』を入手しました》
《ソロ初討伐称号『モノスレイヤー・ソロ』を入手しました》
《初討伐報酬を"登攀の補尾"入手しました》
《ソロ初討伐報酬"猿酒の瓢箪"を入手しました》

≪この放送の全ては秘匿されます≫


今回の(適応)(アレンジ)の記憶(一部割愛)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

(竜化)を習得しました

(三位一体)を習得しました

(頭数増加)を習得しました

(毒液生成)を習得しました

(部分獣化)を習得しました

(部分竜化)を習得しました

(獄炎武装)を習得しました

(死氷武装)を習得しました

(死の門番)を習得しました

(青銅の咆哮)を習得しました


一定以上の経験量を確認

種族スキル(三頭犬獣人)の作成を試みます

……成功しました


(人化)は(三頭犬獣人)に統合されます

(獣化)は(三頭犬獣人)に統合されます

(保存)は(三頭犬獣人)に統合されます

(再生)は(三頭犬獣人)に統合されます

(霊化)は(三頭犬獣人)に統合されます

(魂喰)は(三頭犬獣人)に統合されます

(神獣化)は(三頭犬獣人)に統合されます

(竜化)は(三頭犬獣人)に統合されます

(三位一体)は(三頭犬獣人)に統合されます

(頭数増加)は(三頭犬獣人)に統合されます

(毒液生成)は(三頭犬獣人)に統合されます

(部分獣化)は(三頭犬獣人)に統合されます

(部分竜化)は(三頭犬獣人)に統合されます

(獄炎武装)は(三頭犬獣人)に統合されます

(死氷武装)は(三頭犬獣人)に統合されます

(死の門番)は(三頭犬獣人)に統合されます

(青銅の咆哮)は(三頭犬獣人)に統合されます


また、(三頭犬獣人)は種族スキル(獣人)に統合されます


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 (振動魔法)"マイクロウェーブ"を(神氣)で強化し、猿の肉体にある水分子を振動させて加熱した。
 その結果猿は茹で上がったようにチンされてしまったよ。

 あと関係無いがケルベロス因子、どこからパクって来たんだよってスキルがあるな。
 炎属性なのか氷属性なのかはっきりして貰いたいところだ。

 俺はそんなどうでも良いことを思いながらも、猿へ向けて収納アプリを起動させた。


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