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偽善者と終焉の島 中篇 七月目

偽善者と『覇導劉帝』 その05

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 闘いは今まで以上に過激なものへと変化していく。
 それほどまでに、知性を有した戦闘狂が強かったからである。


『――"炎劉覇爪"!』

("龍氣"+"鬼氣"+(操糸術)="鬼龍斬糸")
("聖氣"+"神氣"+(矛術)="天之瓊矛")

 途轍もない程に嫌な予感のする炎を帯びた攻撃を、自身の保有するイメージの中でもかなり上位に存在する技を以ってして弾こうとする。
 ……が、押し負けて世界の果てまで逝ってキューしそうになる。

(――"転移眼")
((牙突術)+"牙点竜犀"+(竜殺し)="牙竜刺")

 (転移眼)で勢いをそのままに、飛ぶ方向をシュリュの方へと変えて攻撃を行う。


『甘いわ! ――"嵐劉覇爪"!』


 そんな突撃も、荒れ狂う風の力を纏った爪に一瞬で弾かれてしまう。
 ……クッ、やはり正攻法では勝てないな。


『やはりどれだけ足掻いても畜生は畜生。人ごときが劉帝に勝てると思うなど――甚だしいわ!』

「うるせぇな~。そうやって驕っているなんて――お前は実に【傲慢】だ」

『傲慢で結構。朕は武で覇を唱えた劉帝であるぞ! それ即ち、その傲慢に釣り合うだけの力を持つ証なり。故に、朕は其方を畜生として扱おう』

「何言ってんだ? お前は。それは強い奴が言うことのできるセリフだろ? 今から俺に敗北するお前に、それを言う資格はねぇ」


 そうやって、自分の力を過信することこそが【傲慢】であるというのに……。


『言うではないか、畜生風情が。本当に死にたいようだな……一瞬で殺すぞ』

「そういうことは、実行できるようになってから言ってくれよ。今までに、一回でも俺に傷を与えられたのか? できなかった奴が俺を殺すことができるのか? ……無理だろ」

『ほぅ、朕の覇気に耐えるか。だがその言葉で関心も消えたわ。望み通り、全力で潰してやろう』


 今までも感じていた威圧が、何十倍にも膨れ上がり、俺の体を舐め回すように包み込んでいく。

 その覇気に竦み上がりそうになるが、【異常反転】が即座に発動し、逆に俺の意識を興奮させていく……と思う。

 全部ステータスを視て分かったことだ。
 実際には俺の感情は全くと言って良い程に揺れ動いておらず、ただシュリュをどうやって倒そうかということを考えている。


「来いよ。言葉で言っている間は、何もかもが机上の空論だぞ。あ、りゅう帝はただ発言するだけで充分なのか、ゴメンゴメン。座っているだけで良い奴に、一々ケチを付けちゃ駄目だったよねっ――!? ("攻撃無効")」

 ミシッ ベキベギュ!

「うぐっ……ガァッ!(――【物体再成】)」


 全てを言い切る前に、シュリュは音速の速さで俺に迫って来る。
 眼で捉えられてはいても、(未来眼)で推測される未来に――普通に対処して生き残る未来は存在していなかった(転移しても、その先で結局殺されていた)。

 なので、一日に一度限り発動できる(攻撃無効)を発動させ、絶対不可避の死の運命から免れる……が、攻撃を無効化できても衝撃からは逃れられない。
 上からの重圧を感じた直後には、俺は地面に叩き付けられていた。

 それでも体を事前にセーブしておいた状態に戻して復活させ、戦闘可能な状態へする。

 本来なら【因果応報】でカウンターを決めたいところだが……実際にシュリュによって受けたダメージは0である為、発動させたところで全く意味が無い(マシューを止めようとした時に、(攻撃無効)を発動させなかったのにはちゃんとワケがあったのだ……べ、別に忘れていたワケじゃ、無いんだからね)。


『……スキルか。命拾いをしたな。だが、次は無いと思え「は? まだ次があると思っているのか?」 ……クッ、これは!?』


 追い打ちを掛けようとしたシュリュは、突然動かなくなった体に戸惑っている。
 俺を格下として見ていたシュリュは気付いていなかった。
 俺がわざわざ低空飛行を行い、この空間を駆け回っていた理由を。


「影ってのは体と共に存在し、いつまでも離れることの無い……切っても切れない縁の持ち主だ」

『な、何を言っている畜生……』

「最後まで話を聞けよ。――つまり、体を動かせば影も動く相対の関係だ。なら、影を動かせば体が動くんじゃないか? 本来ならできない馬鹿な考えも、魔素が存在するこの世界ならば可能になる」

『……其方は影を縛っていると』

「その通りだ」


 イメージ的にはアレだ――時喰みの□を強化したようなものだ。
 かつて考えてみた『さいきょうのわざ』の一つ――【影魔法】と(掌握)を用いた万物への干渉である。

 予め発動させる場所を【影魔法】を発動させながら巡り、俺の支配領域に入れた後、その影に触れた状態で(掌握)を発動させる。
 そうすることで、支配領域内に影があるもの全てに干渉ができるのだ。

 ……今更考えると、スリラーなバークの持ち主っぽいな。
 影を取り込めるなら、最初のイメージもそれで良かったんだがな。


『……フンッ、仕掛けさえ分かってしまえばどうとでもなる』

「そう思うか? ならどうにかしてみろよ」

『言われなくとも――ッ!?』

「おいおい、早く脱出してくれよ。こっちはそこまで語彙力が無いんだ。お前さんをいつまでもからかうことができないからさ」

『其方、朕の力を……』


 ご明察。
 "奪命掌"、"奪魔掌"、(衰弱魔法)に(禁忌魔法)……悪影響のある能力をじゃんじゃん使っている。
 ……その際にステータスの完全版が見れたのだが、『りゅう帝』は『劉帝』だった……辰でも龍でも無かったな。


「さぁ、早く脱出してみろよ!」

『クッ、殺せ! 朕も劉帝……畜生の情けなど受け入れぬわ!』

「(くっ殺だと!?) ……そ、そうか。なら遠慮なく殺させて貰おう」


 俺は主人公じゃ無い。
 全てを救うのは無理だ。
 特に、くっ殺を言った相手を助けられるのは主人公だけだろう。

 俺がやったって解放した瞬間に、逆に殺されるだけだ。
 回避する方法ももう無いし、死んでもらうのが一番だと思うよ。

 ――ま、偽善者としての活動もするけど。


「それじゃあ、次に会う時は劉帝なんて矜持は捨てて、一人の女の子として俺と真剣に向き合ってくれよ」

『……ふざけているのか』

「一度死んで英霊になっても、お前さんは元劉帝としての枷があったんだろうな。なら、俺に殺されて二度目の死を迎えたら、お前は真の意味で自由の筈だ。いつか出会えたらならその時は……俺の眷属として、女として、一緒にイチャイチャしようぜ」


 そう言うと、シュリュは少しだけ俺の目をジッと見てから……笑い出した。


『……ふ、フハハハハハ! 面白い、面白いぞ其方は! 名は何と申す』

「……メルスだ」

『メルス、約束しよう。朕がまた其方と出会えたのならば、その時に朕が朕であったならば、朕は其方のものとなろう!』

「そりゃあ嬉しいこった。――んじゃあ、また後でな・・・・・

『うむ、また来世で』

("天之瓊矛""――――――")

 二つの技を発動させ、シュリュの体を一突きする。
 そうすると、シュリュの体から力が抜け、急速に地面へと墜ちて来る。

 割と本気で言ったその言葉を、シュリュは受け入れてくれた。
 ならば、俺は……。


また・・後でな・・・(――"天網")」


 シュリュの体をそっと着地させながら、俺はそう呟いた。


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