上 下
706 / 2,529
DIY、新境地を求める

旋極会 後篇

しおりを挟む


「貴殿が『生者』であったか。妾こそがこの領域の主──【奴隷王】である」

「王、なのですか?」

「そうであるが……何か問題でも?」

「いえ、てっきり姫なのかと……」

 とまあ、会話で分かるように、俺の目の前に居る【奴隷王】は少女だ。

 あくまで見た目が、という限定されたモノではあるが、少なくとも王という性別では無いと思う。

「職業に文句を言うでない。わざわざ姫という名に変更するほど、奴隷の主とは特異な職業ではないということだ」

「なるほど、そういうことでしたか」

 たしかに、【魔王】にいちいち姫とか付かなさそうだし……男女で異なる印象を与えるかどうか、などが関係しているのかも。

 ただ、名前が違っても能力は同じだし、上限なども共有されているらしい。

「それで、汝は何故にこの地を訪れた?」

「ご挨拶ととあるアイテムの宣伝を。最近、地上で流行りの品でございます」

「うむ──受け取ってまいれ」

 侍らせた少女の一人がこちらへ来て、俺の差しだしたアイテムを受け取り【奴隷王】の下へ届ける。

 それが何なのかすぐに察した彼女は、手に取ったそれを弄び始めた。

「ふむ、光線銃というヤツじゃな。わざわざこれを持ち込んだ理由は?」

「奴隷たちの育成に使えるかと思いまして。必ず一定以上のダメージを発生させるので、一度撃たせたうえで他の者が敵を倒せば、それだけで経験値が入るようになります」

「なるほど、戦力増強に使えるわけか……よい手土産であるぞ」

「そう言っていただき、幸いでございます」

 最近売り始めたアップデートパッチを使うと、属性付きの光線が放てるようになり、使い続ければ属性に関するスキルが習得しやすくなる……という仕掛けを施した。

 誰も再現できないブラックボックスに関わる技術なので、利益は単独で総取り……その一部を生産ギルドに回せば大抵のことは多めに見てもらえるので、やりたい放題で大儲けしているぞ。

「して、いくつほど持ち込んだ?」

「そうですね、無料でとなるとだいたい十丁ほどです。しかし、大量に購入していただけるのであれば、お安くしておきますよ」

「そうじゃなぁ……では、二百丁ほど買わせてもらおうか」

「お買い上げ、ありがとうございます」

 すぐに値段を計算し、それを紙に記したうえでメモを奴隷に渡してもらう。
 メモを【奴隷王】が見ている間に、瞬時に大量の光線銃を並べておく。

「! それほどの用意ができておるのか」

「お得意様との交渉の機会は、決して見逃してはいけませんので。求められればそれをすぐに提供する。それが商人として、まず信頼される条件ですよ」

 まあ、だからといって信用されるわけじゃない……問題はここからである。

しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

【R18】Яainy, Rainy~雨とともに落ち、雨とともに降る~

恋愛 / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:205

目を開けてこっちを向いて

BL / 完結 24h.ポイント:220pt お気に入り:193

いわゆる異世界転移

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:113pt お気に入り:348

【完】眼鏡の中の秘密

BL / 完結 24h.ポイント:404pt お気に入り:42

私の初恋の人に屈辱と絶望を与えたのは、大好きなお姉様でした

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:3,822pt お気に入り:96

Beyond the soul 最強に挑む者たち

SF / 連載中 24h.ポイント:2,108pt お気に入り:282

猫耳幼女の異世界騎士団暮らし

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:2,621pt お気に入り:391

処理中です...