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第170話 解決したいので人を頼りたい
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「わざわざこんな場を設けるなんて楓たんにしては珍しいね」
楽しそうに笑いながら桜が言った。
「まあね。僕ももう少し動かないといけない気がしてさ」
楓は手を組みながら、あくまで真剣な面持ちで答えた。
「動かないと?」
不思議そうな声が椿から漏れた。
それもそうだろう、楓はまだ何も話をしていなかった。
今、楓は桜と椿の二人に放課後の教室に残ってもらい、三人で会話をしていた。
「あたしたちに話さなきゃいけないこと?」
楓は桜の言葉に頷いた。
「うん。実は困ったことがあって」
「わかった。あれでしょ。最近またふと……」
「そうじゃない」
楓が食い気味に否定すると、桜は違ったかと頭をかいた。
「それで、困ったことって?」
椿に先を促され、楓は頷き口を開いた。
かわいい弟分である咲夜と、こちらもかわいい彼女である向日葵。
二人が仲良くしてくれず、いざこざの絶えない関係ということ。
それを、途中不関係なことや話せないところをを端折りながら説明した。
今もどこからか向日葵や咲夜が見ているかもしれない。
先に帰ってもらったものの、この場にいないだけで千里眼のような力を使えば監視は可能だった。
形だけ三人なのだが、何も知らない二人は説明を聞くと納得したように頷いていた。
「なるほどーやっぱりそうだったんだね」
「絶対違うこと言おうとしてたでしょ」
「確かに言おうしてたのは別のことだけど、そのことはわかってたよ?」
「ええ。花森さんが来た時も、向日葵さんの雰囲気は重かったものね」
わかる人にはわかるよな。
楓はそう思いながら頭をかいた。
やはりそう簡単に誤魔化せるものではないのだ。
「そうなんだよ。真里とも仲悪かったんだよね。今は結構いい感じだからそっちはいいんだよけど、真里以上に仲が悪いから、どうにかしたくて。そこで二人から何か案をいただけたらなーって」
「そんなことなら大丈夫だよ。あたしに任せて」
「私も協力するわ」
二人の頼もしい言葉に、楓は思わず頬がほころんだ。
葛の誤解だけでなく、初めから人を頼っておけばよかったと楓は思った。
「ありがとう」
「じゃあ、早速だけど、一緒に遊べばいいんじゃない? 親睦会みたいにさ」
「それは、もうやったよ」
「やったの? やってあれなの?」
信じられないものを見たように、桜は大げさにのけぞった。
目を見開く様子を見れば、想定外だったのだろう。
「そんなに驚くほどのことではじゃないでしょ」
楓が驚きたい気持ちで言ったものの、桜の驚いた様子は変わらなかった。
「だって、真里たんと向日葵たんの時だったら、それでなんとかなったじゃん」
「うーん」
思い返せば、楓の記憶では向日葵と真里が仲良くし出したのは、ハロウィンの日以降だった。
となれば、桜が二人で一緒に遊ぶことが、何より仲良くなるために大切と考えてもおかしくなさそうだった。
だが、しかし、
「もう、遊んだんだけどなー」
「出かけたり、ゲームしたりした?」
「どっちもやったよ」
「体は動かした?」
「それもした」
今のところ試した、もとい実行したものではあったが、いずれも効果はないと言ってよかった。
楓としては心なしか、前よりは落ち着いた気もしたが、気のせいな気もした。
変化があったにしろ認識できないほどのものだった。
「なら、どうしたものかね?」
「あれは? アートなんてどうかしら」
今度は椿が提案した。
「アート?」
「そう。何か気持ちをぶつけて作品を作ってみる。一緒にじゃなくても、同じ場でやるのはいいんじゃない?」
「確かに、それはやってないな。いいかも」
椿らしい提案に楓は思わず感嘆の声を漏らした。
向日葵はもちろん、咲夜もアートは得意な記憶があった。
少なくとも楓は咲夜が作る作品が好きだった。
意見の食い違いで余計にこじれる原因にもなりそうだったが、やってみないことにはわからない。
楓は手近な紙に、アートとメモした。
「なんであたしの提案は書かなかったのに、椿たんの提案はしっかりメモしてるの?」
「いや、桜の言ったのはやったからいいかなと思って」
「本当に? どれも協力とかじゃなくて、勝負とか競うものにしちゃったんじゃないの? それも真剣勝負とかさ」
「う」
桜の指摘に図星な楓は、返す言葉もなかった。
その様子に桜は得意そうに胸を張った。
「ほら、バトルになったら真剣になるのは世の常でしょ? ましてや我が強いなら、どんな勝負も勝ちたくなるものじゃない?」
「そんな気がする。今まであんまり意識してなかったけど、別の内容なら効果があるかもしれない」
楓はそうして、桜に押し切られる形で、メモに運動、お出かけ、ゲームと書き足した。
さらに注意として、競わないもの、と付け加えた。
その様子を見ると、桜は満足そうに頷いていた。
「別にアイデアが採用されたから偉いってわけでもないんだけど」
「いいでしょ。あたしだって貢献したいんだから」
「その気持ちがありがたいけどさ」
桜は前のめりで楓に言った。
突然の出来事に楓ははにかみながら目をそらした。
いい友達を持ったな。と楓は思った。
だが、競わないものに連れ出すのは自分なんだよな、と楓は改めて考え直した。
そして、多くなりすぎては実行に困ることに気づいた。
「とりあえずこんなところかな?」
「ちょっと待ってよ。まだまだ出そうよ」
「まあ、多い方がいいけど、まだあるの?」
メモを見直しながら、楓は少し思案した。
実行できて仲を深められそうなもの、アイデア貧困の楓にはすぐには思いつかなかった。
「お食事は?」
椿の言葉に楓は顔を上げた。
楓としてもどうなのか把握していない。
そのうえ話していいことなのかもわからない。
思い出すように目を泳がせてから、楓はええいと思って口を開いた。
「まあ、一緒にご飯は食べてるんじゃないかな?」
「昼も食べてたんだし、そりゃそうじゃん。でも、若干口論になってた気がするけど、椿たん何言ってんの?」
桜が不安そうな顔を椿に向けながら言った。
楓も胃が痛かったことを思い出しながら椿を見守った。
すると、少し言葉を選ぶようにしながらも、椿は楓と桜の視線を真っ向から受け止めた。
「そういう普段から食べられるものじゃなくて、特別なやつよ」
「たとえば?」
「ケーキとか」
「そんな簡単に食べられなくない? 特別なケーキなんて」
「特別と言っても、値段が高い必要はないのよ。少し日常から離れていればそれでいいの」
「それならお菓子とかだと、テレビで紹介されるようなのを、真里が作ってくれたよ。向日葵が咲夜と食べたのかはわからないけど」
楓がなんとなくつぶやいたことに、二人は絶句した。
急に教室が静まり返ったことで、楓は瞬きを繰り返した。
「え、どうしたの二人とも?」
「真里たんってお菓子作りとかするの?」
「まあ、最近は凝ってるみたいだけど」
「それも、テレビで紹介されてるの?」
桜の驚いた様子に、楓は慌てて首と手を横に振った。
「そうじゃなくて、テレビで紹介されてるみたいな豪華さってこと」
「見た目だけなら、手先の器用さでなんとかできるんだね」
「いや、味も美味しいけど」
さらなる衝撃があったらしく、二人は一度目を見合わせてから再び楓を見た。
それからも少しの間つづきの言葉が出てこないらしく、黙ったままだった。
「あの真里たんが美味しくて見た目もいいお菓子が作れるの?」
「本当かしら?」
「二人は真里のことをどう思ってるのさ」
楓としても、当初出された時は意外に思い、毒でも入っているのかと警戒していた。
だが、実際はそんなことはなかった。見た目をよくしただけの食品サンプルではなく、味までいい本物だった。
さすがに、自分にばかり食べさせようとする態度にはこりごりしてしまったが、今となっては二人の驚きようは大袈裟に思えた。
言っていいのか悩んでいるのか、思考を口にするだけにも関わらず、二人はしばらく黙り込むと、先に桜が口を開いた。
「あたしは正直、真里たんはお菓子を食べるだけだと思ってた。小さくてかわいいけど、あんまり作ったりするタイプじゃないと思ってた」
「私も同じだわ。無邪気に食べてる姿は容易に想像できるけど、作ってる姿はちょっとイメージが湧かない」
楓は腕を組みながらうんうんとうなった。
悪魔なのだし無邪気かどうかは思うところがあったが、おおむね同意だった。
だが、楓に食べさせるためのお菓子なのだとしたら、二人が一緒に食べていなくともおかしな話ではない。
楓はお菓子を食べさせる。と追加でメモをして、満足したように背もたれに背中を預けた。
「とりあえずこれくらいでいいかな?」
「いいんじゃない? 楓さんは多すぎても、できなかったことを気にしそうだし」
「なんだか言い当てられてしまった気分」
「ふふふ。それはそうよ。さすがにわかるわよ」
椿は楽しそうに笑っていた。
だが、桜は不満そうに頬を膨らませた。
「あたしとしてはもっと仲良くできそうなイベントはあると思うけどな」
「せっかくだけど遠慮しとくよ」
「えーそれでいいのー?」
同意しない楓が不満なのか桜は楓の肩を揺さぶった。
頭が大きく動かされながらも、楓は力強く頷いた。
「うん。お菓子作りと言っても、何人かで食べるとなると、どうやって頼むのかとか誘うのかとか考えないとだし」
「それくらいちゃちゃちゃーってやればいいじゃん。それに、せっかくならあたしも真里たんのお菓子食べたいーダメかな?」
「いいんじゃない? 本人に聞かないとわからないけど、なら椿もどう?」
「私もいいの?」
「人数が増えたらどれくらい手間が増えるのかはわからないけど、本人もそこまで手間じゃないだろうし」
「なら、お言葉に甘えて」
勝手に約束を取り付けてしまったが、きっと真里なら大丈夫だろう。
それに、向日葵と咲夜のために作ってくれというよりも話しやすい。
二人だけに食べさせては何か企んでいることがすぐにわかってしまう。
パーティという形はアリだな。そう思いながら、楓はどう伝えたものかと考えた。
楽しそうに笑いながら桜が言った。
「まあね。僕ももう少し動かないといけない気がしてさ」
楓は手を組みながら、あくまで真剣な面持ちで答えた。
「動かないと?」
不思議そうな声が椿から漏れた。
それもそうだろう、楓はまだ何も話をしていなかった。
今、楓は桜と椿の二人に放課後の教室に残ってもらい、三人で会話をしていた。
「あたしたちに話さなきゃいけないこと?」
楓は桜の言葉に頷いた。
「うん。実は困ったことがあって」
「わかった。あれでしょ。最近またふと……」
「そうじゃない」
楓が食い気味に否定すると、桜は違ったかと頭をかいた。
「それで、困ったことって?」
椿に先を促され、楓は頷き口を開いた。
かわいい弟分である咲夜と、こちらもかわいい彼女である向日葵。
二人が仲良くしてくれず、いざこざの絶えない関係ということ。
それを、途中不関係なことや話せないところをを端折りながら説明した。
今もどこからか向日葵や咲夜が見ているかもしれない。
先に帰ってもらったものの、この場にいないだけで千里眼のような力を使えば監視は可能だった。
形だけ三人なのだが、何も知らない二人は説明を聞くと納得したように頷いていた。
「なるほどーやっぱりそうだったんだね」
「絶対違うこと言おうとしてたでしょ」
「確かに言おうしてたのは別のことだけど、そのことはわかってたよ?」
「ええ。花森さんが来た時も、向日葵さんの雰囲気は重かったものね」
わかる人にはわかるよな。
楓はそう思いながら頭をかいた。
やはりそう簡単に誤魔化せるものではないのだ。
「そうなんだよ。真里とも仲悪かったんだよね。今は結構いい感じだからそっちはいいんだよけど、真里以上に仲が悪いから、どうにかしたくて。そこで二人から何か案をいただけたらなーって」
「そんなことなら大丈夫だよ。あたしに任せて」
「私も協力するわ」
二人の頼もしい言葉に、楓は思わず頬がほころんだ。
葛の誤解だけでなく、初めから人を頼っておけばよかったと楓は思った。
「ありがとう」
「じゃあ、早速だけど、一緒に遊べばいいんじゃない? 親睦会みたいにさ」
「それは、もうやったよ」
「やったの? やってあれなの?」
信じられないものを見たように、桜は大げさにのけぞった。
目を見開く様子を見れば、想定外だったのだろう。
「そんなに驚くほどのことではじゃないでしょ」
楓が驚きたい気持ちで言ったものの、桜の驚いた様子は変わらなかった。
「だって、真里たんと向日葵たんの時だったら、それでなんとかなったじゃん」
「うーん」
思い返せば、楓の記憶では向日葵と真里が仲良くし出したのは、ハロウィンの日以降だった。
となれば、桜が二人で一緒に遊ぶことが、何より仲良くなるために大切と考えてもおかしくなさそうだった。
だが、しかし、
「もう、遊んだんだけどなー」
「出かけたり、ゲームしたりした?」
「どっちもやったよ」
「体は動かした?」
「それもした」
今のところ試した、もとい実行したものではあったが、いずれも効果はないと言ってよかった。
楓としては心なしか、前よりは落ち着いた気もしたが、気のせいな気もした。
変化があったにしろ認識できないほどのものだった。
「なら、どうしたものかね?」
「あれは? アートなんてどうかしら」
今度は椿が提案した。
「アート?」
「そう。何か気持ちをぶつけて作品を作ってみる。一緒にじゃなくても、同じ場でやるのはいいんじゃない?」
「確かに、それはやってないな。いいかも」
椿らしい提案に楓は思わず感嘆の声を漏らした。
向日葵はもちろん、咲夜もアートは得意な記憶があった。
少なくとも楓は咲夜が作る作品が好きだった。
意見の食い違いで余計にこじれる原因にもなりそうだったが、やってみないことにはわからない。
楓は手近な紙に、アートとメモした。
「なんであたしの提案は書かなかったのに、椿たんの提案はしっかりメモしてるの?」
「いや、桜の言ったのはやったからいいかなと思って」
「本当に? どれも協力とかじゃなくて、勝負とか競うものにしちゃったんじゃないの? それも真剣勝負とかさ」
「う」
桜の指摘に図星な楓は、返す言葉もなかった。
その様子に桜は得意そうに胸を張った。
「ほら、バトルになったら真剣になるのは世の常でしょ? ましてや我が強いなら、どんな勝負も勝ちたくなるものじゃない?」
「そんな気がする。今まであんまり意識してなかったけど、別の内容なら効果があるかもしれない」
楓はそうして、桜に押し切られる形で、メモに運動、お出かけ、ゲームと書き足した。
さらに注意として、競わないもの、と付け加えた。
その様子を見ると、桜は満足そうに頷いていた。
「別にアイデアが採用されたから偉いってわけでもないんだけど」
「いいでしょ。あたしだって貢献したいんだから」
「その気持ちがありがたいけどさ」
桜は前のめりで楓に言った。
突然の出来事に楓ははにかみながら目をそらした。
いい友達を持ったな。と楓は思った。
だが、競わないものに連れ出すのは自分なんだよな、と楓は改めて考え直した。
そして、多くなりすぎては実行に困ることに気づいた。
「とりあえずこんなところかな?」
「ちょっと待ってよ。まだまだ出そうよ」
「まあ、多い方がいいけど、まだあるの?」
メモを見直しながら、楓は少し思案した。
実行できて仲を深められそうなもの、アイデア貧困の楓にはすぐには思いつかなかった。
「お食事は?」
椿の言葉に楓は顔を上げた。
楓としてもどうなのか把握していない。
そのうえ話していいことなのかもわからない。
思い出すように目を泳がせてから、楓はええいと思って口を開いた。
「まあ、一緒にご飯は食べてるんじゃないかな?」
「昼も食べてたんだし、そりゃそうじゃん。でも、若干口論になってた気がするけど、椿たん何言ってんの?」
桜が不安そうな顔を椿に向けながら言った。
楓も胃が痛かったことを思い出しながら椿を見守った。
すると、少し言葉を選ぶようにしながらも、椿は楓と桜の視線を真っ向から受け止めた。
「そういう普段から食べられるものじゃなくて、特別なやつよ」
「たとえば?」
「ケーキとか」
「そんな簡単に食べられなくない? 特別なケーキなんて」
「特別と言っても、値段が高い必要はないのよ。少し日常から離れていればそれでいいの」
「それならお菓子とかだと、テレビで紹介されるようなのを、真里が作ってくれたよ。向日葵が咲夜と食べたのかはわからないけど」
楓がなんとなくつぶやいたことに、二人は絶句した。
急に教室が静まり返ったことで、楓は瞬きを繰り返した。
「え、どうしたの二人とも?」
「真里たんってお菓子作りとかするの?」
「まあ、最近は凝ってるみたいだけど」
「それも、テレビで紹介されてるの?」
桜の驚いた様子に、楓は慌てて首と手を横に振った。
「そうじゃなくて、テレビで紹介されてるみたいな豪華さってこと」
「見た目だけなら、手先の器用さでなんとかできるんだね」
「いや、味も美味しいけど」
さらなる衝撃があったらしく、二人は一度目を見合わせてから再び楓を見た。
それからも少しの間つづきの言葉が出てこないらしく、黙ったままだった。
「あの真里たんが美味しくて見た目もいいお菓子が作れるの?」
「本当かしら?」
「二人は真里のことをどう思ってるのさ」
楓としても、当初出された時は意外に思い、毒でも入っているのかと警戒していた。
だが、実際はそんなことはなかった。見た目をよくしただけの食品サンプルではなく、味までいい本物だった。
さすがに、自分にばかり食べさせようとする態度にはこりごりしてしまったが、今となっては二人の驚きようは大袈裟に思えた。
言っていいのか悩んでいるのか、思考を口にするだけにも関わらず、二人はしばらく黙り込むと、先に桜が口を開いた。
「あたしは正直、真里たんはお菓子を食べるだけだと思ってた。小さくてかわいいけど、あんまり作ったりするタイプじゃないと思ってた」
「私も同じだわ。無邪気に食べてる姿は容易に想像できるけど、作ってる姿はちょっとイメージが湧かない」
楓は腕を組みながらうんうんとうなった。
悪魔なのだし無邪気かどうかは思うところがあったが、おおむね同意だった。
だが、楓に食べさせるためのお菓子なのだとしたら、二人が一緒に食べていなくともおかしな話ではない。
楓はお菓子を食べさせる。と追加でメモをして、満足したように背もたれに背中を預けた。
「とりあえずこれくらいでいいかな?」
「いいんじゃない? 楓さんは多すぎても、できなかったことを気にしそうだし」
「なんだか言い当てられてしまった気分」
「ふふふ。それはそうよ。さすがにわかるわよ」
椿は楽しそうに笑っていた。
だが、桜は不満そうに頬を膨らませた。
「あたしとしてはもっと仲良くできそうなイベントはあると思うけどな」
「せっかくだけど遠慮しとくよ」
「えーそれでいいのー?」
同意しない楓が不満なのか桜は楓の肩を揺さぶった。
頭が大きく動かされながらも、楓は力強く頷いた。
「うん。お菓子作りと言っても、何人かで食べるとなると、どうやって頼むのかとか誘うのかとか考えないとだし」
「それくらいちゃちゃちゃーってやればいいじゃん。それに、せっかくならあたしも真里たんのお菓子食べたいーダメかな?」
「いいんじゃない? 本人に聞かないとわからないけど、なら椿もどう?」
「私もいいの?」
「人数が増えたらどれくらい手間が増えるのかはわからないけど、本人もそこまで手間じゃないだろうし」
「なら、お言葉に甘えて」
勝手に約束を取り付けてしまったが、きっと真里なら大丈夫だろう。
それに、向日葵と咲夜のために作ってくれというよりも話しやすい。
二人だけに食べさせては何か企んでいることがすぐにわかってしまう。
パーティという形はアリだな。そう思いながら、楓はどう伝えたものかと考えた。
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