寝たふりして机に突っ伏していると近くから僕の配信について感想を言い合う美少女たちの声が聞こえてくるんだが!?

マグローK

文字の大きさ
36 / 56

第35話 怜からの尊敬

しおりを挟む
「あんなことがあっても影斗はキララちゃんを続けるのね。尊敬するわ」

 怜は僕の部屋に入ってくるなり真顔でそんなことを言ってきた。

 おそらく大神くんのことを言っているのだろう。嫌味、ではなさそうだ。

 学校でいじめられ、まさかネットでもいじめられるとは思ってもいなかった。

 被害としては誹謗中傷を色々なところから食らっているのだろう。怖くてエゴサーチをそんなにしないから実際のところはわからない。

 しかし、この間は怜の方が気にしていたのに変なものでも食べたのだろうか。

「まあな」

 普通に答えると、なんだか変な視線を向けてくる。

 いつもより変だ。

 やはりなにか変なものでも食べたのだろう。

 先ほどよりも真剣な表情で、怜は僕の返事だけでは納得しなかったのか、顔をのぞき込んできた。

「な、なに? 変なものでも食べた?」

「食べてないわよ。影斗はどうして続けられるの? 私は自分のことじゃないのに、かなりショックだったのに、それに私が必要ないことしたのに、それでも影斗は気を落としていないように見える。世界一の配信者でも目指してるの?」

「なれたらいいなとは思う。けど、目指してはいないよ。多分そんなことになったら今以上に人をなかなか信用できなくなりそうな気がするし」

 ま、ここまでキララを思ってくれる怜なら言ってもいいか。

「ただ」

「ただ?」

「周りの人は笑顔でいてほしいんだ」

「それだけ?」

「そう。それだけ。僕は一人じゃ生きていけなかった。生きているのが辛かった。だから逃げたかった。最初はそんな理由だったけど、今となっては怜たちのおかげで普通に学校に行けてるしさ。なら、僕にもなにかできたらいいな。そう思った時に、人を笑顔にできる今の活動を続けるのがいいんじゃないかって考えたんだよ。そのために少しでもよく、少しでも素早く、あと少しでもラクにできるように心がけてる」

「だから今までは一人だったの?」

「うっ。それもあるけど、い、いや。今も言ったように怜たちのおかげだよ。あと、僕は経験的に人を信じられなかったってのももちろんある。でも、一位は目指さなくても競い合ってともに上を目指せる存在は大事だなって考え直したよ。コラボを繰り返してね。あとは協力してくれる仲間もいることだし……ってどうした!?」

 急に怜は目元を押さえ出した。

 え、なに? どうして?

「え、あ、えと」

「う、うう」

 すすり泣いてる声が聞こえてきた。

 ど、どうしよ。

「そんなに嫌な話だった? ごめん。なんか語っちゃって」

「ううん? 私の思い込みかもだけど、私をキララちゃんのライバルとして認めてくれたのかなって思うと嬉しくて」

 そりゃこんな超人認めないわけにはいかないだろう。

「否定するようで悪いけど、怜はライバルって言うか仲間の方だな。協力してくれてるし。ライバルは怜が紹介してくれた河原アイリーンさんとかだよ」

 だが、ライバルより仲間という言葉の方が嬉しかったのか、さらにぶわっと涙を流す怜。

 本当にキララのことになると感情の起伏が激しい。

 でも、嫌がっているわけじゃなく、喜んでくれてるなら素直に嬉しい。

 それに、普段クールな怜が崩れるところは見ていて面白い。けど、大丈夫なのだろうか。

 手でこすったらあとになったりしないだろうか。

「えーと、ハンカチいる?」

「ありがとう。影斗って、優しいわよね」

「よく日向から言われる」

「そう。日向さんが自慢げに話していたわけだわ。こうして関わると納得ね。きっとフィアラさんも若菜さんも私と同じ気持ちよ」

 さらっとそんなことを言いながら怜は目元を拭い始めた。

 自慢げに話していた。いた? 過去形?
 
 しかも、関根さんも白鷺さんも?

「え、なんて?」

「…………」

 なにも言わずになぜか含み笑いを浮かべている怜。

「教えてあげてもいいけど」

「またそれか……」

 僕を脅すこと、少し楽しんでるんだよな。

「ま、怜は協力者のうちの一人というだけの方向にしてもいいんだけどな。それに、言ってよかったのか? 日向に知られたらどうなるか」

「大好きってよく言ってるわ。優しいってよく言ってるわ! ねぇ、お願いだからライバルでいて、仲間でいて、黙っていて! 私を見捨てないで、そういう雑な扱いじゃないの。馬車馬のように働かせてほしいの!」

 怜は大声を出しながら勢いよく僕にすがりついてきた。

 人目がないからと好き勝手やりやがって。

 なんだか距離感が近いんだよ。

「ってか。は? 大好き?」

「そうよ。言ってたわよそんなこと。いっつも日向さんは影斗のいいところばかり話してるの。でも内緒よ? どうしてかわからないけど黙ってるよう言われてるんだから」

 そりゃそうだろう。僕と知り合いだってことは隠すよう言ってあったんだし。

「最近はフィアラさんも若菜さんも影斗のことチラチラ見てるし。私が影斗の参謀なのに! ね!」

 日向は好き好きって、友だちとして言うこともありえるのだが、大好きって。

 それに直接じゃなく、怜から言われるとなんか信憑性がある。

 日向……。

「お願い。お願いよ! どうして無視するの? 私が参謀でしょ? 私だけが参謀でしょ? キララちゃんは最初から参謀がいたの? 私の関係なんて軽い遊びみたいなものだったの? 浮気だったの? うわああああ!」

「ちょっと待て、それ以上大きな声を出すな。母さんあたりに聞かれたら勘違いされるだろ。参謀だから、参謀って言ってるから」

「うわあああ! お願いよ! 捨てないで、なんでも、なんでもするから。お願い。それだけはやめて!」

「僕がクソ野郎みたいに言うな! 元はと言えば炎上の話だったろ。わかったから、僕だって少しはやり返したかったんだよ。落ち着いてくれ。僕の制服もなんかしめっぽい気がするんだが、泣きすぎだよ。深呼吸深呼吸」

「うわああああ!」

 いつものクールさはどこに置いてきたのか、かなり取り乱している。

 唯一の参謀という立場を怜なりに気に入ってくれていたのだろうか。

 本当にキララのことになると普段の人格をどこかへ置いてきたんじゃないかってほど変わってしまう。

 でも、これの中から出てくるアイデアに僕は最近助けられてるんだよな。

「ありがとう。協力者」

 キョトンとした顔で怜は僕を見上げてきた。

 なんか急に落ち着かれると恥ずかしくなってくるんだが。

 思わず目をそらした。

「これでいいだろ?」

「ダメ」

「どうして」

「もう一回」

「え」

「もう一回言って」

 うるんだ目で見上げてくる。

 ここで嫌だと言って叫ばれても面倒か。

「ありがとう協力者」

「へへ。私、役に立ててる?」

「当たり前だろ。今回だって、一人だったらもっとめんどいことになってたかもしれないし」

 ぽんぽんっと頭を撫でてから座り直させて、僕は怜に向き合った。

「さあ、作戦会議といこうぜ。今回の対処はさりげなくやろう。僕は大丈夫でもファンのショックはでかいだろうからさ」

「そうね。やっぱり影斗は優しいわ」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

学校一の美人から恋人にならないと迷惑系Vtuberになると脅された。俺を切り捨てた幼馴染を確実に見返せるけど……迷惑系Vtuberて何それ?

宇多田真紀
青春
学校一の美人、姫川菜乃。 栗色でゆるふわな髪に整った目鼻立ち、声質は少し強いのに優し気な雰囲気の女子だ。 その彼女に脅された。 「恋人にならないと、迷惑系Vtuberになるわよ?」 今日は、大好きな幼馴染みから彼氏ができたと知らされて、心底落ち込んでいた。 でもこれで、確実に幼馴染みを見返すことができる! しかしだ。迷惑系Vtuberってなんだ?? 訳が分からない……。それ、俺困るの?

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

俺をフッた幼馴染が、トップアイドルになって「もう一度やり直したい」と言ってきた

夏見ナイ
恋愛
平凡な大学生・藤堂蓮には忘れられない過去がある。高校時代、告白した幼馴染の星宮瑠奈に「アイドルになるから」とこっ酷くフラれたことだ。 数年後、瑠奈は国民的アイドル『LUNA』として輝いていた。遠い世界の住人になった彼女との再会なんて、あるはずもなかった――そう、変装した彼女が俺の前に現れ、「もう一度やり直したい」と泣きつくまでは。 トップアイドルの立場を使い強引に迫る元幼馴染と、過去の傷。揺れ動く俺の日常を照らしてくれたのは、俺の才能を信じてくれる後輩・朝霧陽葵の存在だった。 俺をフッた幼馴染か、俺を支える後輩か。過去の清算と未来の選択を描く、ほろ苦くも甘い、逆転ラブコメディ、開幕。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

小さい頃「お嫁さんになる!」と妹系の幼馴染みに言われて、彼女は今もその気でいる!

竜ヶ崎彰
恋愛
「いい加減大人の階段上ってくれ!!」 俺、天道涼太には1つ年下の可愛い幼馴染みがいる。 彼女の名前は下野ルカ。 幼少の頃から俺にベッタリでかつては将来"俺のお嫁さんになる!"なんて事も言っていた。 俺ももう高校生になったと同時にルカは中学3年生。 だけど、ルカはまだ俺のお嫁さんになる!と言っている! 堅物真面目少年と妹系ゆるふわ天然少女による拗らせ系ラブコメ開幕!!

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

幼馴染が家出したので、僕と同居生活することになったのだが。

四乃森ゆいな
青春
とある事情で一人暮らしをしている僕──和泉湊はある日、幼馴染でクラスメイト、更には『女神様』と崇められている美少女、真城美桜を拾うことに……? どうやら何か事情があるらしく、頑なに喋ろうとしない美桜。普段は無愛想で、人との距離感が異常に遠い彼女だが、何故か僕にだけは世話焼きになり……挙句には、 「私と同棲してください!」 「要求が増えてますよ!」 意味のわからない同棲宣言をされてしまう。 とりあえず同居するという形で、居候することになった美桜は、家事から僕の宿題を見たりと、高校生らしい生活をしていくこととなる。 中学生の頃から疎遠気味だったために、空いていた互いの時間が徐々に埋まっていき、お互いに知らない自分を曝け出していく中──女神様は何でもない『日常』を、僕の隣で歩んでいく。 無愛想だけど僕にだけ本性をみせる女神様 × ワケあり陰キャぼっちの幼馴染が送る、半同棲な同居生活ラブコメ。

大好きな幼なじみが超イケメンの彼女になったので諦めたって話

家紋武範
青春
大好きな幼なじみの奈都(なつ)。 高校に入ったら告白してラブラブカップルになる予定だったのに、超イケメンのサッカー部の柊斗(シュート)の彼女になっちまった。 全く勝ち目がないこの恋。 潔く諦めることにした。

処理中です...