寝たふりして机に突っ伏していると近くから僕の配信について感想を言い合う美少女たちの声が聞こえてくるんだが!?

マグローK

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第37話 キララの切り抜き

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「切り抜き面白いよ!」

 早朝一番元気に挨拶! の代わりに日向が切り抜きをすすめてきた。

「日向も切り抜き見るんだ」

「そりゃ、もちろん。さんこ……ううん。面白いからね」

 なんだ、今の間は。

 今はいいか。

 しかし、うんうん。日向まで見てるとは、怜のおすすめで開放したかいがあったな。

 やっぱり需要あったのか、放送長いからな。全部見切れないもんな。

 近くにファンがいると反応が直でわかるというメリットも大きい。

「それでも、一部残念なのもあるけどね」

「そうなのか?」

「ビッグ・ゴッド・オーガだっけ。そんなチャンネル知ってる?」

「ああ……」

「あれ、大神だよね?」

「そうだろうな」

 思い返される苦い記憶。

 キララを罵倒しているらしき動画。

 そういえば、切り抜きを解放する前から勝手に動画を使われていたな。

「そのチャンネルに、なんかキララちゃんのダメなところーみたいなこと言いながら動画を切り抜いて、ダメな証拠出してみたって動画にされてて」

「マジか」

 そんなことまでされてるのか。

 以前の動画は悪質だからと、怜からいろいろと対処法を聞いてなんとかやったけど、新しいのが出たのか。

 またやるのか。面倒だな。

「そういうのがあるのはいいの。傷つくけど、キララちゃんが人気って証拠でしょ?」

「だな。でも、日向強いな」

「キララちゃんのが苦しいんだもん」

「確かにな」

 でも、日向は何事もなかったかのように振る舞っているようにすら見える。

 ネガティブは受け流すか、そもそも気にしないのだろうか。それとも、気にしても対処できてしまうのか。

 なににしてもうらやましい限りだ。

 まあ、ファンが倒れないのは僕としても嬉しい。

「それに、キララちゃんの配信でそれとなくファンをフォローしてくれたし」

「気遣いも効いたってことか?」

「そりゃそうだよ! 私は勇気が湧いたもん。今だって大神のことスルーできるのもキララちゃんのおかげなんだから」

「やっぱり大事なんだな」

「でも、暗くなってても仕方ないよ。でさ。影斗の切り抜きのおすすめとかある?」

 急に熱心になったな。

 いやーな報告もあったが、切り抜きのおすすめか。

「えーと、動画としてってよりチャンネルとして注目してるのがあるんだけど」

「うんうん!」

 僕の手を強く握ってやけに顔を寄せてくる。

 どうして日向はそんなに切り抜きに熱心なんだ?

 別に知りたがるようなことでもないような……。まさか気づかれた? いや、まさかな。

 特になにも出ないが、期待の目でにじり寄ってくるし、やっぱ無しはダメだな。

「キラララララー切り抜きっていうチャンネルの切り抜きかな。なんか切れ味が良くてクスッとできるからおすすめだよ。まあ、日向なら知ってるかキララちゃんも紹介してたし」

 本人特権で紹介までしてしまったほど、今最も熱い雲母坂キララ切り抜きチャンネルだろう。

 日向ならどうせ隅から隅まで見てるだろうから、切り抜きは復習みたいなことになるんだろうけど。

「あ、あー。あれね? あ、あははははは。そーかーそーかー」

 いやどうして急に顔をそらす。本人が紹介してたことだから知ってて興味を失ったってか? 俺だぞ。ショック!

「いやー。あれねー。そうかー。影斗もあれかー」

 なんだこのとぼけてるみたいな反応は。

 まさか、キララ本人が紹介したチャンネルなのに知らない?

 でも、それにしてはなんだか反応が変なような……。

 ちょっとカマかけてみるか。

「もしかしてキララちゃんのキラって言う数数えてみた。も知らない?」

「いやーあれかー。し、知ってるよー。や、やだなー」

「あれいいよな。どこがよかった?」

「いやー内容かなーキラってそんなに言わないもんねー」

 あれ、知ってた。

「そうだな。まさか名前がキラ、らざか、キラ、ラだからってキラって言葉を多く言ってるとは思わなかったよ」

「あ、あー。あれねー。あーれはいい切り抜きだよね。へへへー」

 うーん。知ってたけどなんとも怪しい。

 それに、なんで僕の方を見ないんだ。

 結構気に入ってて自分で紹介までした、というか配信で見てみたのに。結構恥ずかしかったのに。

 大笑いしたのが気に入らなかったのか?

 いや、そんなはずは。

 これで日向が、僕がキララだってことを知ってたらより恥ずかしい。

「いやー。はははーそうかー結構見てるんだねー」

 こうなると知ってはいるが、しっかりとは見てないとかか。

 話題に乗り遅れたくないけど、実は知らないとかか。

「なあ、その反応」

「わーっと! この話はこの辺にしよ!」

「え?」

「そう、そうだ! 影斗には今度面白い話をしてあげよう。特別だぞー? それじゃ!」

 走り出そうとする日向。

 しかし、一向に日向は遠くへと遠ざからない。

「手を握って。って毎朝言ってるのは日向だからな」

 顔を真っ赤にして日向は止まった。

「うううう」

 空いた片手で顔を隠す日向。

「自分で言い出しておいてなにも知らないってのはキツいよな」

「やめて、それ以上はやめて! 内容知ってた通り、そのチャンネルは知ってるの。でも、本当に面白い話は後日してあげるから、今日だけは、今日だけは勘弁して」

「別にいじめようってつもりじゃないんだよ。でも、どうしてきりぬ」

「いいから、お願い」

「う」

 急に涙目を解放して見上げてきた日向に意地悪で掴んでいた手の力が緩んだ。

「へへっまたあとでー」

 さっきまでの照れが嘘のようにキレイに笑うと、日向は一目散に僕から逃げていった。

「マジでなんだったんだ」

 面白い話のハードルを上げるためにこんなことを?
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