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第一章 勇者パーティ崩壊
第6話 魔王城防衛役
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暗雲立ち込める空の下で、俺は幼馴染で魔王のパトラに手を引かれ、魔王城に近づいていた。
パトラが何を言っても聞かないせいで、俺は抵抗できずに歩かされている。
まあ、魔王城の中じゃなくて外にテレポートしてきたんだから、何か考えがあってのことなのだろう。
「いった!」
いきなり手が弾かれて、俺は自分の手を押さえた。
なんだ。何が起きたんだ。
ゆっくり手を伸ばすと、俺とパトラの間に、見えない壁が存在しているらしく、俺はそれ以上先に進めなかった。
「そうそう。ここだったここだった」
絶対忘れてただろと思いつつ俺はパトラを睨んだ。
「何これ。魔王城を防衛しろとか言いながら、お前はそこで人質やってろってこと?」
「違うわよ。そんな薄情じゃないわよ。カイセイにこれを渡してなかったのは謝るけど、そんなひどいことしようとしてたんじゃないからね」
「まあ、冗談だけど、何それ」
パトラが懐から取り出したのは、紫色に輝く不思議な石がついたペンダント。
石の真ん中には、何かを模しているのかツノの生えた顔が刻印されている。
「パトラのファンクラブのグッズ?」
「違う、わよ。違う。違う、と思う……」
「やけに歯切れが悪いけど」
「いいのよそれは! カイセイが変なこと言うからでしょ? とにかく本来は魔王軍幹部を示すペンダント。今のカイセイの役職を示す重要な道具だから」
「え、これを受け取ったら世界の半分をパトラが支配したりするの?」
「それができればいいんだけど、もしかしてできる?」
「いやぁ」
頭をかきながら苦笑いを浮かべる。
「全部をなくしていいならできるかもしれないけど、試してみる? でもそれじゃ意味ないでしょ?」
「意味ない」
やっぱり。
俺のスキルがどこまで届くか試したことはないが、多分どこまでも届くと思う。
世界のどこかに端っこがあるのなら、俺は全世界に対して力を使える自信がある。
とりあえず受け取ったペンダントを身につけ、俺は壁を通り抜けた。
「なるほど。つまり、俺は俺の力でこの壁を強化して、魔王軍以外がどうやっても入れないようにすればいいのか。それならこの壁で魔王城は守られてるし被害は出ないと」
「で、できれば壁からもう少し離れたところにやってくれない?」
「なんで?」
「壊されたら、せっかく作ったのに立ち直れない気がするから」
パトラの泣きそうな様子を見るとどうやら相当大事なものらしい。
まあ、直属の上司である魔王様の頼みなら断ることもできないし、壁で守られているとわかっているなら、どこでやっても同じか。
「わかったよ。壁の外に壁を作ればいいんだな?」
「お願い」
「じゃ、巻き込まないように魔王城に戻っててくれよ」
「お願いね」
「任せとけ。俺は終わったら合図として、なんか打ち上げるからさ。そうしたら戻って来てくれればいいよ」
「え、魔王城に入って来てもいいよ?」
「いや、パトラに確認してもらわないとだろ? それに、俺一人じゃ多分迷子になっちゃうし、俺の場所ないだろうしさ。案内でもしてくれよ。ってそんな暇じゃないか」
「ううん。わかった。待ってるからね」
「おう」
パトラは手を振って城の方へと走り出した。
「いや、テレポート使わないのかよ」
ま、いいか。
しかし、不思議だ。このペンダントをつけているだけで、見えない壁を通れたり、通れなかったりする。
これが魔王軍の技術力なのか。
「俺も、少し工夫してこんなのできるといいけど、ま、試しにやってみるか」
実現できたら、壁の中にも壁が作れるわけだし。
「こんくらいでいいかな」
結局テレポートで来た場所まで戻って来てしまった。
壁から離れてと言われたが、どれくらいかわからないし、十分そうな距離をできるだけ取っておいた。
「さて、始めますか」
俺は手を前に突き出して、目をつぶった。
どうするかはまだ考えていない。
壁を作れと言われても、やるのは初めてだ。
封印を解いたとは言え、自分でも力を使えることに驚いているのだ。
久しぶりで感覚を忘れていなかったのだから。
「まずはお試しからかな。『ウォーターフォール』!」
最初に、先ほども使った滝のような雨を降らしてみた。
しかし、後ろが見えてしまうし、パトラのように水が得意なら問題なく通ってくるんじゃないか。
「うーん。壁って難しいな。ぐるっと囲うだけでいいと思ってたけど、違うんだな」
さっきも思ったが、別にぐるりと覆うことは問題なくできた。
あとは、壁となるような防御力なんだが。
「入れなければいいんだろ? なら、荒れ狂わせちゃえばいいんじゃないか? 『サンダーストーム』!」
俺は続けて滝の雨を嵐の層へと変えた。
「うん。これなら、魔法も通さないだろうし、生身ならたとえ雷が得意でも丈夫じゃないと体が保たない。保っても、多分動けないだろうし」
俺は問題なく通れるし、あとはこれをどうやってさっきの壁みたくするかだけど。
「おうおう! にいちゃん。ここがどこだか知っての行動か?」
「はい?」
知らない紫色の肌をした悪魔が二人? でいいのか? 二匹か? まあいいや。
片方は何故か顔をしかめ、腕を押さえていた。
「どうかしました?」
「どうかしましたじゃねえんだよ! これお前の魔法かなんかだろ?」
「そうですけど」
「これのせいでなぁ! 俺の友達のサンちゃんが怪我しちゃったじゃねぇかヨォ!」
「サンちゃん?」
「あー。いてえなぁ」
どうやら痛がってる方がサンちゃんと言うらしい。
本当に痛がっているのかわからないけど、俺の作った壁に触って耐えたなら大したものじゃないか?
ダンジョンにいた黒いのよりもよっぽど頑丈と言うことになる。
魔王軍にはそんな精鋭ばかりなのか。
しかし、困った。俺、回復魔法とかは本当に使えないんだよな。
「今すぐ魔王城に戻って回復を頼んだらいいんじゃないですか? そうすればきっと治りますよ」
「そんなことできるか!」
「え!?」
お金がないとか?
でも、ここにいても治らないだろうし。
「早く対処した方がいいんじゃ」
「魔王城付近に人間がいて、しかも自分から逃げ道を消すようなバカがいるのに逃げられるわけないだろうが!」
あれ、パトラ、俺のこと何も言ってない感じ?
普通の人間だと思われてる?
さっきまで怪我していたはずの悪魔の方も腕を振り回し臨戦態勢だ。
あ、普通の人間だと思ってるパターンだ。
二匹の悪魔が襲いかかってきた!
パトラが何を言っても聞かないせいで、俺は抵抗できずに歩かされている。
まあ、魔王城の中じゃなくて外にテレポートしてきたんだから、何か考えがあってのことなのだろう。
「いった!」
いきなり手が弾かれて、俺は自分の手を押さえた。
なんだ。何が起きたんだ。
ゆっくり手を伸ばすと、俺とパトラの間に、見えない壁が存在しているらしく、俺はそれ以上先に進めなかった。
「そうそう。ここだったここだった」
絶対忘れてただろと思いつつ俺はパトラを睨んだ。
「何これ。魔王城を防衛しろとか言いながら、お前はそこで人質やってろってこと?」
「違うわよ。そんな薄情じゃないわよ。カイセイにこれを渡してなかったのは謝るけど、そんなひどいことしようとしてたんじゃないからね」
「まあ、冗談だけど、何それ」
パトラが懐から取り出したのは、紫色に輝く不思議な石がついたペンダント。
石の真ん中には、何かを模しているのかツノの生えた顔が刻印されている。
「パトラのファンクラブのグッズ?」
「違う、わよ。違う。違う、と思う……」
「やけに歯切れが悪いけど」
「いいのよそれは! カイセイが変なこと言うからでしょ? とにかく本来は魔王軍幹部を示すペンダント。今のカイセイの役職を示す重要な道具だから」
「え、これを受け取ったら世界の半分をパトラが支配したりするの?」
「それができればいいんだけど、もしかしてできる?」
「いやぁ」
頭をかきながら苦笑いを浮かべる。
「全部をなくしていいならできるかもしれないけど、試してみる? でもそれじゃ意味ないでしょ?」
「意味ない」
やっぱり。
俺のスキルがどこまで届くか試したことはないが、多分どこまでも届くと思う。
世界のどこかに端っこがあるのなら、俺は全世界に対して力を使える自信がある。
とりあえず受け取ったペンダントを身につけ、俺は壁を通り抜けた。
「なるほど。つまり、俺は俺の力でこの壁を強化して、魔王軍以外がどうやっても入れないようにすればいいのか。それならこの壁で魔王城は守られてるし被害は出ないと」
「で、できれば壁からもう少し離れたところにやってくれない?」
「なんで?」
「壊されたら、せっかく作ったのに立ち直れない気がするから」
パトラの泣きそうな様子を見るとどうやら相当大事なものらしい。
まあ、直属の上司である魔王様の頼みなら断ることもできないし、壁で守られているとわかっているなら、どこでやっても同じか。
「わかったよ。壁の外に壁を作ればいいんだな?」
「お願い」
「じゃ、巻き込まないように魔王城に戻っててくれよ」
「お願いね」
「任せとけ。俺は終わったら合図として、なんか打ち上げるからさ。そうしたら戻って来てくれればいいよ」
「え、魔王城に入って来てもいいよ?」
「いや、パトラに確認してもらわないとだろ? それに、俺一人じゃ多分迷子になっちゃうし、俺の場所ないだろうしさ。案内でもしてくれよ。ってそんな暇じゃないか」
「ううん。わかった。待ってるからね」
「おう」
パトラは手を振って城の方へと走り出した。
「いや、テレポート使わないのかよ」
ま、いいか。
しかし、不思議だ。このペンダントをつけているだけで、見えない壁を通れたり、通れなかったりする。
これが魔王軍の技術力なのか。
「俺も、少し工夫してこんなのできるといいけど、ま、試しにやってみるか」
実現できたら、壁の中にも壁が作れるわけだし。
「こんくらいでいいかな」
結局テレポートで来た場所まで戻って来てしまった。
壁から離れてと言われたが、どれくらいかわからないし、十分そうな距離をできるだけ取っておいた。
「さて、始めますか」
俺は手を前に突き出して、目をつぶった。
どうするかはまだ考えていない。
壁を作れと言われても、やるのは初めてだ。
封印を解いたとは言え、自分でも力を使えることに驚いているのだ。
久しぶりで感覚を忘れていなかったのだから。
「まずはお試しからかな。『ウォーターフォール』!」
最初に、先ほども使った滝のような雨を降らしてみた。
しかし、後ろが見えてしまうし、パトラのように水が得意なら問題なく通ってくるんじゃないか。
「うーん。壁って難しいな。ぐるっと囲うだけでいいと思ってたけど、違うんだな」
さっきも思ったが、別にぐるりと覆うことは問題なくできた。
あとは、壁となるような防御力なんだが。
「入れなければいいんだろ? なら、荒れ狂わせちゃえばいいんじゃないか? 『サンダーストーム』!」
俺は続けて滝の雨を嵐の層へと変えた。
「うん。これなら、魔法も通さないだろうし、生身ならたとえ雷が得意でも丈夫じゃないと体が保たない。保っても、多分動けないだろうし」
俺は問題なく通れるし、あとはこれをどうやってさっきの壁みたくするかだけど。
「おうおう! にいちゃん。ここがどこだか知っての行動か?」
「はい?」
知らない紫色の肌をした悪魔が二人? でいいのか? 二匹か? まあいいや。
片方は何故か顔をしかめ、腕を押さえていた。
「どうかしました?」
「どうかしましたじゃねえんだよ! これお前の魔法かなんかだろ?」
「そうですけど」
「これのせいでなぁ! 俺の友達のサンちゃんが怪我しちゃったじゃねぇかヨォ!」
「サンちゃん?」
「あー。いてえなぁ」
どうやら痛がってる方がサンちゃんと言うらしい。
本当に痛がっているのかわからないけど、俺の作った壁に触って耐えたなら大したものじゃないか?
ダンジョンにいた黒いのよりもよっぽど頑丈と言うことになる。
魔王軍にはそんな精鋭ばかりなのか。
しかし、困った。俺、回復魔法とかは本当に使えないんだよな。
「今すぐ魔王城に戻って回復を頼んだらいいんじゃないですか? そうすればきっと治りますよ」
「そんなことできるか!」
「え!?」
お金がないとか?
でも、ここにいても治らないだろうし。
「早く対処した方がいいんじゃ」
「魔王城付近に人間がいて、しかも自分から逃げ道を消すようなバカがいるのに逃げられるわけないだろうが!」
あれ、パトラ、俺のこと何も言ってない感じ?
普通の人間だと思われてる?
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あ、普通の人間だと思ってるパターンだ。
二匹の悪魔が襲いかかってきた!
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