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第一章 勇者パーティ崩壊

第16話 勇者問い詰められる

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 王を前にして、僕たちはカイセイを見殺しにしようとしたことの報告を求められていた。

 こうなったら今までと同じように、事実を捻じ曲げて僕たちの行動を正当化するしかない。

「王よ。我々がダンジョンで強敵と遭遇したのは事実であります。その時、苦戦を強いられました。ですが、真っ先に囮として正面切って戦いに行ったのはカイセイでした。逃げろと言っていたんだと思います。我々は死亡したと思い、カイセイの犠牲を無駄にしないため、結晶を使い脱出し、ただちに帰還しました。決して、カイセイを見殺しにしようという意思はありません」

 こんなところか。どうせ相手は魔王軍だ。その事実が知れれば僕たちが責められることはない。

 今はとにかくカイセイが死んでから、僕たちが逃げたということを証明しなければ。

 見殺しは評判悪いからな。

「そうか。お主たちはカイセイがガードンよりも囮として優れていると判断したのか」

「いえ、そういうわけでは……」

 痛いところをつかれた。確かに、ガードンが戦いに行った方が自然だ。

 サポーターが急に前に出てくるなんて普通に考えておかしい。

 どう言ったものか。

 そうだ。

「しかし、サポーターとして前線に立たない分、戦わせていたことに引け目を感じたのではないでしょうか。カイセイでないのでわかりませんが、直接戦力になる僕たちを生かしてくれようとしたのではないかと思われます」

「ほう。お主たちはサポーターに引け目を感じさせていたと?」

「そんなつもりは……」

「今の主張だとそういうことにならないか」

 くそ。

 じゃあどう言えばよかったってんだよ。

「まあわかった。カイセイは死んでいたとしよう」

 よし。

「では、なぜ魔王はカイセイを生き返らせ、そして魔王城に壁のような嵐まで発生させてカイセイを迎え入れたのだ?」

「単純に人質なのではないでしょうか」

「それはおかしいだろう。カイセイが人質たり得ないではないか」

 確かに、生きていてこその人質なら、死んだ人間を人質にすることはできないか。

「それは、はい」

 そもそもカイセイは一般人。王族でもなんでもないわけで、人質として交渉材料になりそうもない。

 僕だって同じ立場なら、人質に取ったりしない気がする。
 
「そもそも人質にしたのだとしてもおかしいのだ。今のところ魔王からカイセイを人質にしているという話は来ていない」

「え」

 先遣隊の一人から声が漏れた。

 そうか、助けてやってくれと言っていたし、カイセイと仲がよかったからな。

 だからこそ告げ口しやがったのか。

 今はそんなこと考えても仕方ない。表情に出てしまう。

「カイセイ様は人質じゃないんですか?」

「そうなのだ。そう考えられる。生きている状態でいなくなったならまだしも、死んだと思われていたなら、生存を伝えてくることが筋だろう。なら、カイセイはなぜさらわれ、そして生き返らせられたのか」

 くそ。くそ。くそ。

 そういうことか。

 これは王が僕たちに思っていることを言わせるための誘導尋問なのか。

「さあ、勇者よ。どう思う。カイセイはなぜ、死してなお魔王に連れ去られたのだ?」

「カイセイは魔王が欲しがるほどの実力者だったから、ではないでしょうか。だからこそ、死んでなお連れ去られ、そして、蘇生されたのだと思います」

「だろうな。余の見立ても同じだ。そして、カイセイの性格ならば助けられた恩を返すため、魔王軍の力になっていることだろう。用はスカウトされたと考えているのだが」

「なっ」

「何か知っておるようだな」

「知っていて黙っていたか。王を騙すために!」

 衛兵が武器を出して進み出てきた。

「違います!」

 思わず図星であることをバラしてしまった。

 どうする。どうする。

 これ以上嘘をつき続けるのは無理か。

 だが、もう後には引けない。

「ですが、王よ。勇者である我々は生きています。今からでも準備を整え、魔王を殺し、カイセイを連れ帰ります」

「そうではないだろう」

「はい?」

「そうではないだろうと言っておるのだ」

 何が違うんだ。

 僕たちは間違ったことは言っていないはずだ。

 何も、何も間違っていないはず。

「わからんのか。お主は勇者でありながら、カイセイの実力を見抜けず、果ては仲間を見捨てて逃げ出した小心者だ」

「そんな」

「違うか」

「ち、違いません」

 事実だ。

 実力が敵わない敵が現れたから、僕たちは逃げ出した。

 最初から放置して殺すつもりだったが、逃げたことは事実だ。

 そして、カイセイの実力を見抜けなかったことも。

「そんな人間を余が信用できると思うか?」

「いえ」

「では、お主からは勇者の資格を剥奪することにしよう」

「ゆ、勇者の資格を?」

「そうだ。貴様は今からただのバドンだ。勇者パーティから魔王軍へと渡った者が現れたなどと知れたら、余の立場がどうなるかわかったことではない。そもそも仲間を捨てて逃げるなど勇者のやることではない。恥を知れ」

「で、ですが王よ」

「話は終わった。出ていくがいい」

 一歩進み出ると護衛が僕に向けて武器を構えた。

 どうやら、王の一言で僕は勇者ですらなくなったらしい。

「姫」

 だが、隣にいる姫ならわかってくれるはずだ。

 僕は何度も国の窮地を、姫のピンチを救ってきたのだ。こんな一度のミスで勇者でなくなるなんておかしい。

 困っている時、助けてくれるのは、恩を感じている人間だろう。

 想像通り、姫は僕に向けて笑顔を向けてきた。

「姫!」

「さようなら」

「え」

「さあ、出て行け。姫もお前に用はないそうだ」

「そんな。嘘ですよね。姫。嘘だ。嘘だー! 勇者は僕しかいないというのに」

「勇者なら、また別の者を探せば良い」

「嘘だ。そんなの嘘だ。僕が勇者なんだ僕が」

「しつこいぞ平民。さっさと出て行け」

 まだ話は途中だったが、僕たちは城から追い出された。
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