魔王城でスローライフ〜勇者パーティを追放されたので可愛い魔王たちとのんびり暮らします〜

マグローK

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第一章 勇者パーティ崩壊

第18話 ドラゴンと戦え

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 なんかレバレちゃんがワクワクしてるんだけど。

 話と違わない?

 レバレちゃんが面倒くさいという雑用がどんなものか、全員で解決しに行くという話だったのだが、なぜレバレちゃんがワクワクしてるのか。

「レバレちゃんに任せようと思ってたこと。みんなでやろうか」

 パトラがそう言って話し出したのは、とある双子幹部の話だった。

 その幹部はスーとノーと言うらしい。

 二人はまだ子供でありながら、戦闘能力ではレバレちゃんに匹敵するほどの二人だという。

 自由気ままな性格で、好き勝手やらせた方がいいだろうと、基本パトラは自由にしていたそうだ。

 しかし、事件が起きた。

「スーちゃんもノーちゃんもいなくなっちゃったの」

「いいじゃん別に」

「よくない!」

 仲がよくないのか、気にしていない様子のレバレちゃんを、パトラは強く揺さぶり出した。

 なおもパトラは続ける。

「二人は強いけど、まだ幼いから心配なの。それで最後に見かけたらしいのが」

 なんて話を聞いていたらついてしまった。

 入り口から、すでに熱気があふれてくる洞窟。

 感じる雰囲気は、奥にいる者がただ者ではないと、誰もが納得しそうな空気感だった。

「この中に?」

「多分……」

「南の果ての洞窟に入ってったなんて」

 二人が最後に見つけられたのはこの南の果ての洞窟周辺。

 この世界をぐるりと囲む山、東西南北と中央の洞窟。それぞれに住んでいると言われる龍。そのすみかにいるということか。

「まあ、果てって言うけど、実際この世界は丸いんだけどね」

「そうなの?」

 お、食いついた。

 やっぱり領土に関係してそうなことはパトラも知りたがるのか。

「俺のスキルで確かめてみた感じだと、この世界は球状にできてるんだよ。まあ、実際に一周してみたことはないけど、この先ずっと進めば戻って来られるはずだよ」

「じゃあ、なんで山の外に世界がないってことになってるんだろ」

「誰も行ったことがないからじゃない? わからないけど」

「そんな無駄話よりさっさと中に入ろう! この中からは強者の気配を感じる!」

 面倒くさがっていたのが嘘のように、レバレちゃんは今か今かと待ち侘びている。

 強敵を前に血湧き肉躍るってのか?

「いいけど、準備できてるの?」

「もちろんだよ。ボクは剣さえ持てればそれで戦えるんだから。それに相手は炎のドラゴンでしょ? ボクの相手としてうってつけだと思わない?」

 レバレちゃんは剣聖と呼ばれていたが、晴れの勇者とも呼ばれていた。

 パトラが雨を司るように、レバレちゃんの得意フィールドは快晴の下。

 晴れと炎は違う気がするが、高温も得意ということだろうか。

「目的はドラゴン討伐じゃなくてスーちゃんとノーちゃんの救出だからね?」

「わかってるよそれくらい」

「じゃあ、カイセイも準備はいい?」

「まあ、いいけど」

 ダメって言っても行くんだろうし。

 それに、俺はあくまで雑用がどんなものなのか見学に来た立場だ。

 先輩であるレバレちゃんが片付けてくれるなら、それに越したことはない。



「あっつ!」

 普段、俺は自分にとって快適な環境を作り出し、生活していた、そのせいで、ただただ暑い環境は、不快以外の何者でなかった。

 パトラも魔王ながら、バテているようで、少し足取りがふらふらしてきている。

 そんな中レバレちゃんは、やはり得意なのか、鎧を着ているにも関わらず、額に汗一つ浮かべず、平気そうな顔で歩いていた。いや、どこか楽しげにすら見える。

「ほらほら、だらしないぞ」

「俺だってレバレちゃんの邪魔してもいいならこの暑さをなんとかするんですけど」

「ダメだよ。ボクとしては暑ければ暑いほどやる気が出てくるんだから」

「レバレちゃんってそんな熱血キャラだったっけ?」

「まあ、得意フィールドで戦えることなんてそうそうなかったからね」

 気合いだ気合いだ。と言いながら、その場駆け足で動いているレバレちゃん。

 レバレちゃんが少しでも苦戦するようなら、さっさとフィールドを涼しくしてしまおう。

 と言うか、面倒ごとを持ち込んできたスーやらノーやら言う子たちにも責任があるんじゃないか。

 いや、暑いのはドラゴンのせいか。

 俺たちはがそれでも、暑い中を歩き続けて。そして、しばらく歩いていると、少し開けた空間が見えた。

「いた!」

 レバレちゃんの興奮混じりの声に前を注視すると、すでに警戒するようにこちらをうかがっている巨大なドラゴンの姿があった。

「スーちゃん! ノーちゃん!」

 パトラが探していた二人が見つかったらしい。

 おそらく近くにいる小さな二人のことだろう。なぜか寒い場所へ向かう時のように、厚着をしている。とてもじゃないがこの暑さに耐えられるとは思えない。

 実際、ぐったりと地面に倒れ、パトラの呼びかけに応える様子もない。

 気を失っているのか。

「元気だからって、一番苦手な炎のドラゴンと遊ぼうとするなんて」

「幼いからってそんなことある?」

「あるよ。あの二人は見境ないんだよ。だからボクは苦手なんだ」

 もしかして雑用って、いつもあの二人が持ち込むことなのか?

 うーん。なら、外で勝手にしてもらうことが雑用を減らすため?

 でも、幼くても助けに行くってことは、戦力として優秀なんだろうし。幹部らしいし。うーん。

「詳しい話は後。相手が悪かったねレッドドラゴン。一般人ならすでにヘロヘロだろうけど、ボクに炎は通用しないよ」

 レバレちゃんはノリノリで剣に炎を纏わせて、勢いよく突っ込んでいった。

 一方ドラゴン。そんなレバレちゃんの実力を察したのか、それともただ相手にしていないのかレバレちゃんを見て動かない。

 そのまま突っ込むレバレちゃん。剣を一振りして、ドラゴンを通り過ぎた。

「グルグル」

 荒い息を吐きながら、ドラゴンは身動きを取らない。

「あれ?」

 どうやらドラゴンの作り出したフィールドの影響をレバレちゃんは受けないが、ドラゴンの方もレバレちゃんの攻撃をものともしないらしい。

「あ、あれはブレスの構えなんじゃ」

 深く息を吸い込むようにドラゴンは体を持ち上げた。

 今度はレバレちゃんがドラゴンの様子を見たまま攻撃を待っているかのようだ。

 ドラゴン、そんな余裕そうなレバレちゃんに腹が立ったのか、勢いよくファイアブレスを吐き出した。

「レバレちゃん!」

 パトラの悲鳴。

 しかし、レバレちゃんはさすが剣聖なのか、それとも本人のスキルゆえなのか、ここに来るまでとなんら変わらない様子だ。ブレスなど、どこ吹く風といった様子で立っている。

「これはお互いに相性が悪いみたいだね」

「どういうこと?」

「多分、ボクもドラゴンも得意攻撃が同じ属性で、耐性があるからダメージを与えられないみたい」

「だって。どうしようカイセイ」

「そう言われても、俺見学でしょ?」

「見学じゃなくていいよ。私もここまで暑いと全力出せないし、何か考えがあるならやっていいよ」

「うーん」

 あることはあるが、一か八かみたいなところだし。

 ま、最悪パトラを頼ったり、俺が直接攻撃すればいいし、せっかくなら試してみるか。
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