魔王城でスローライフ〜勇者パーティを追放されたので可愛い魔王たちとのんびり暮らします〜

マグローK

文字の大きさ
39 / 48
第一章 勇者パーティ崩壊

第39話 死にかけの勇者

しおりを挟む
 スキルが使えないとわかった次の日から、僕たちの特訓の日々が始まった。

 思い出せない以上は、それ以上の力を得るために鍛えなければいけない。

 わかってはいたが、こんなことをやってきたとは思えないほど辛かった。

 正直もう勇者なんてやめたい。

「ほらほら、その程度じゃ人類を守れませんよ」

「く、くそ」

 相変わらずスキルは出ない。

 僕は剣に電撃を纏わせ攻撃するスキルを使っていたらしい。

 剣が木だったからじゃないか、そんなことをランドリアさんに言われ、剣を変えてもらった。

 だが、電撃だけでも出せないのに、剣に纏わせることなんてできない。

 そのせいで、スモールドラゴンも倒せない。

「グアアアアア」

 普通のドラゴンより小さいドラゴンらしいが、僕たち人間よりは明らかに大きい。

 体当たりされただけでも、吹っ飛んでしまいそうなほど大きく、そして速い。

 これでスモールなんて、正直考えられない。考えたくない。

「ガードン。デコイというスキルを使えないか?」

「だ、だめだ。どうやるのかわからない」

「じゃ、盾を構えてドラゴンの前に構えてくれ」

「む、無理だ。そんなの」

 ガードンが弱気だ。

 僕に勝てそうだった時は強気になっていたのに、相手が相手だからか。

「誰かが庇わないと後ろの二人がやられますよ」

 その通りだ。武器を握りしめて震えているマジュナとヒルギス。

 二人は僕たちよりも肉体的には弱い。

 襲われればひとたまりもないだろう。

「そうだ。ヒルギス。僕らの筋力を強化してくれないか。マッスルアップというスキルがあるらしい」

「ま、マッスルアップ!」

「どうだ? ガードン」

「な、なんか力が湧いてきたような」

 よし、これで。

「スキルは発動してませんよ」

「「「「え!?」」」」

 嘘だ。ガードンは力が湧いてきたって。

 ガードンが嘘ついてるのか?

 いや、勘違いか。

「スキルを発動して強化された時は体が光ります」

 じゃ、ダメなのか? 違うのか?

「ひとまず僕が注意を引く!」

 スモールドラゴンがのっそりした動きをやめ、こちらを狙い始めた。

 くそう。

 僕は勇者なんだ。力はなくとも仲間を守る。

 前に出る。勇気ある者、になりたい。

 怖い。

「誰かが前に」

「行く!」

 僕は前に出た。

「マジュナ。今のうちに詠唱をしてくれ、ファイアボールでいい。頼む」

 僕はドラゴンに追っかけられながらマジュナに頼んだ。

 悲鳴にも似た声が僕のところまで聞こえてくる。

 詠唱がうまくいっているのかは全くわからない。

「ファイアボール!」

 マジュナの声が響いてきた。

 しかし、ドラゴンには何も当たった様子はない。

 嘘だろ。

「ぐはっ」

 急に背中に重いものが当たった。

 やったか?

 いや、違う。やられた。

 視界が揺らぐ。

 ダメだ意識が。



 ドラゴンと戦った後も、目が覚めると僕たちは特訓に戻った。

 見えない剣の仕掛けられた中でゴブリンと戦ったり、視界を邪魔されながらスライムと戦ったりした。

 弱いと言われる敵ならばなんとかなったものの、少し強いレベルの相手では力が及ばなくなった。

 僕たちが勇者パーティにも関わらず不甲斐ない結果を残しているせいか、ランドリアさんの態度が少しずつ厳しくなっていった。

「そんなんじゃ人類は滅ぶぞ! お前ら!」

「はい!」

 なんてのは日常茶飯事だった。

 戦わされる敵も日に日に強くなり、僕らは寝ても覚めてもボロボロだった。

 傷は不思議と治っているものの、精神的に参っていた。

「もうこうなったら最終手段に出る」

「最終手段?」

 そしてある日、僕たちの前にいるランドリアさんはそんなことを言ってきた。

「もういいからトーナメント形式で四人で戦え、それでどうにかする」

「どうにかって。それでスキルを使えるようになるんですか?」

「知らん。いいからやれ。今まで教えたことを実践するんだ」

 よくわからないが、僕たちはテキトーに戦う相手を決定した。

 初戦は僕対マジュナにヒルギス対ガードンに決まった。

「あと、決めるのは最下位だ。上位じゃない」

「どうして」

「いいからやれ!」

「は、はい!」

 今さら僕たちはランドリアさんに逆らえなかった。

 これで敵と戦う力が手に入るのか?

 僕たちは仲間と戦うためにこんなことをしていたんじゃないはずなのに。

「でも、やるからには手加減なしだ」

「ええ。そうでなくては仲間として信頼されていない気がするものね」

 僕は剣を構え。マジュナは杖を構える。

 掛け声は待ってもこない。

「いくぞ!」

 だから僕は声を上げた。

 一撃入魂。

 負かすからと言って、次に影響を残したくない。

「ふはあ!」

 僕は通り過ぎざまにマジュナに一撃を加えた。

 マジュナの目が高速で動いた気がした。

 何が起きたかわからないといった様子だ。

「……ほう。やっと少しは形になったか」

「僕の勝ちだ」

 マジュナは僕の背後で倒れた。

 マジュナを少し休ませての二戦目、ガードン対ヒルギス。

「始め!」

 僕が声をかけると、ガードンは走り出した。

 ヒルギスは動かない。

 どうしたんだ。何か考えが?

「『フラッシュ』!」

「「「なっ」」」

 眩しい。

 ランドリアさん含め、ヒルギスを見ていた僕もガードンも同時に目をつむった。

 いつの間にスキルを使えるように?

 何も見えないまま気づくと倒れる音。

 なんとか目を開けると、ガードンがその場で倒れていた。

 続く三戦目。

「始め!」

 僕の掛け声とともに、マジュナが何かを唱え始めた。

「『ファイアボール』!」

「グアアアアア!」

 今度はマジュナが魔法を使い、ガードンが叫びを上げながら敗れた。

 みんな、特訓は無駄じゃなかったのか。

 しかし、ガードン……。

 ガードンは、ランドリアさんに連れて行かれた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?

木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。 追放される理由はよく分からなかった。 彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。 結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。 しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。 たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。 ケイトは彼らを失いたくなかった。 勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。 しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。 「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」 これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。

ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜

平明神
ファンタジー
 ユーゴ・タカトー。  それは、女神の「推し」になった男。  見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。  彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。  彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。  その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!  女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!  さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?  英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───  なんでもありの異世界アベンジャーズ!  女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕! ※不定期更新。最低週1回は投稿出来るように頑張ります。 ※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。

防御力を下げる魔法しか使えなかった俺は勇者パーティから追放されたけど俺の魔法に強制脱衣の追加効果が発現したので世界中で畏怖の対象になりました

かにくくり
ファンタジー
 魔法使いクサナギは国王の命により勇者パーティの一員として魔獣討伐の任務を続けていた。  しかし相手の防御力を下げる魔法しか使う事ができないクサナギは仲間達からお荷物扱いをされてパーティから追放されてしまう。  しかし勇者達は今までクサナギの魔法で魔物の防御力が下がっていたおかげで楽に戦えていたという事実に全く気付いていなかった。  勇者パーティが没落していく中、クサナギは追放された地で彼の本当の力を知る新たな仲間を加えて一大勢力を築いていく。  そして防御力を下げるだけだったクサナギの魔法はいつしか次のステップに進化していた。  相手の身に着けている物を強制的に剥ぎ取るという究極の魔法を習得したクサナギの前に立ち向かえる者は誰ひとりいなかった。 ※小説家になろうにも掲載しています。

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

外れスキル《コピー》を授かったけど「無能」と言われて家を追放された~ だけど発動条件を満たせば"魔族のスキル"を発動することができるようだ~

空月そらら
ファンタジー
「鑑定ミスではありません。この子のスキルは《コピー》です。正直、稀に見る外れスキルですね、何せ発動条件が今だ未解明なのですから」 「何てことなの……」 「全く期待はずれだ」 私の名前はラゼル、十五歳になったんだけども、人生最悪のピンチに立たされている。 このファンタジックな世界では、15歳になった際、スキル鑑定を医者に受けさせられるんだが、困ったことに私は外れスキル《コピー》を当ててしまったらしい。 そして数年が経ち……案の定、私は家族から疎ましく感じられてーーついに追放されてしまう。 だけど私のスキルは発動条件を満たすことで、魔族のスキルをコピーできるようだ。 そして、私の能力が《外れスキル》ではなく、恐ろしい能力だということに気づく。 そんでこの能力を使いこなしていると、知らないうちに英雄と呼ばれていたんだけど? 私を追放した家族が戻ってきてほしいって泣きついてきたんだけど、もう戻らん。 私は最高の仲間と最強を目指すから。

さんざん馬鹿にされてきた最弱精霊使いですが、剣一本で魔物を倒し続けたらパートナーが最強の『大精霊』に進化したので逆襲を始めます。

ヒツキノドカ
ファンタジー
 誰もがパートナーの精霊を持つウィスティリア王国。  そこでは精霊によって人生が決まり、また身分の高いものほど強い精霊を宿すといわれている。  しかし第二王子シグは最弱の精霊を宿して生まれたために王家を追放されてしまう。  身分を剥奪されたシグは冒険者になり、剣一本で魔物を倒して生計を立てるようになる。しかしそこでも精霊の弱さから見下された。ひどい時は他の冒険者に襲われこともあった。  そんな生活がしばらく続いたある日――今までの苦労が報われ精霊が進化。  姿は美しい白髪の少女に。  伝説の大精霊となり、『天候にまつわる全属性使用可』という規格外の能力を得たクゥは、「今まで育ててくれた恩返しがしたい!」と懐きまくってくる。  最強の相棒を手に入れたシグは、今まで自分を見下してきた人間たちを見返すことを決意するのだった。 ーーーーーー ーーー 閲覧、お気に入り登録、感想等いつもありがとうございます。とても励みになります! ※2020.6.8お陰様でHOTランキングに載ることができました。ご愛読感謝!

お荷物認定を受けてSSS級PTを追放されました。でも実は俺がいたからSSS級になれていたようです。

幌須 慶治
ファンタジー
S級冒険者PT『疾風の英雄』 電光石火の攻撃で凶悪なモンスターを次々討伐して瞬く間に最上級ランクまで上がった冒険者の夢を体現するPTである。 龍狩りの一閃ゲラートを筆頭に極炎のバーバラ、岩盤砕きガイル、地竜射抜くローラの4人の圧倒的な火力を以って凶悪モンスターを次々と打ち倒していく姿は冒険者どころか庶民の憧れを一身に集めていた。 そんな中で俺、ロイドはただの盾持ち兼荷物運びとして見られている。 盾持ちなのだからと他の4人が動く前に現地で相手の注意を引き、模擬戦の時は2対1での攻撃を受ける。 当然地味な役割なのだから居ても居なくても気にも留められずに居ないものとして扱われる。 今日もそうして地竜を討伐して、俺は1人後処理をしてからギルドに戻る。 ようやく帰り着いた頃には日も沈み酒場で祝杯を挙げる仲間たちに報酬を私に近づいた時にそれは起こる。 ニヤついた目をしたゲラートが言い放つ 「ロイド、お前役にたたなすぎるからクビな!」 全員の目と口が弧を描いたのが見えた。 一応毎日更新目指して、15話位で終わる予定です。 作品紹介に出てる人物、主人公以外重要じゃないのはご愛嬌() 15話で終わる気がしないので終わるまで延長します、脱線多くてごめんなさい 2020/7/26

処理中です...