魔王城でスローライフ〜勇者パーティを追放されたので可愛い魔王たちとのんびり暮らします〜

マグローK

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第一章 勇者パーティ崩壊

第41話 子どもを危機から守りたい

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 神出鬼没の人物が要注意人物だとわかったが対策が思いつかない。

 あまりにも険しい顔で唸っていたせいで、俺はパトラに魔王城を追い出された。

 今は、外の空気を吸うため、魔王城周辺を散歩中だ。

「しっかし、晴れってないよなここ」

 魔王城周辺の天気は基本的に悪い。

 曇りか雨、大荒れの雷それくらいしか見たことがない。

 俺が無理やり晴らした時は青空が見えたが、それ以降青空を見てない気がする。

「これ、誰も疑問に思ってないのか?」

 まあ、見たことがないなら、疑うこともない、か。

「あーダメだ! 関係ないこと考えてる」

 対策が思いつかない。

 でも、壁を破れないみたいだし、入ってくることはできないだろう。

 あれ?

「まさか、俺が壁を作ったせいでこんな天気になってるってことはないよな?」

 後でパトラに聞いとこ。

「うわっ」

「きゃっ」

 悲鳴と閃光に反射的に手を伸ばし、雷を俺に引きつけた。

 危うく女の子に当たるところだった。

 アルチさんが庇おうとしたが、アルチさんだって雷の直撃は大ダメージのはずだ。

 防げてよかった。

「少し体が痺れるな。攻撃の吸収は練習が必要か」

「カイセイさん。ありがとうございます。助けていただいて」

「いやいいって」

「ほらお礼を言いなさい」

「お兄ちゃんありがとう」

「ははは。どういたしまして」

 アルチさんの妹だろうか。

 何にしても無事でよかった。

 俺が気づいていないだけで、魔王城周辺では子供が雷に打たれて死ぬことは多いのかもしれない。

 これも防衛の一端になるんじゃないか?

「ちょっと、パトラに聞いてみるついでに提案してみるか」



 俺を追い出した張本人である魔王パトラ。

 正直魔王ってもっと忙しいもんだと思っていたが。

「……」

 魔王の間。その玉座に座って寝ている。

 サボり。とかじゃないよな?

 ま、さっきも幹部がろりっ子と散歩してたし、案外仕事は少ないのかもしれない。

「パトラ」

「何? あ、カイセイ? 対策思いついた?」

「いや、違う。パトラに大事な話がある」

「大事な話? えっ! 大事な話!? な、何?」

 なんだか急にテンションが上がった? やはり、俺の提案を待っていたということか。

「その前に一つ聞きたいことがあるんだが」

「何? なんでも、答えられることなら答えるよ? できれば恥ずかしくないのにしてね」

 恥ずかしいこと聞くか? このタイミングで。

「魔王城周辺の天気は俺が来る前もこんな感じだったか?」

「こんな感じって?」

 そうか、パトラもここに住んで長いのか。

「晴れた空がなかったかな? と思ってさ」

「そういえばないね。晴れって。この間カイセイがレバレちゃんと戦いに行った時は晴れたけど、あれやったのカイセイでしょ?」

「ああ」

 やっぱりそれくらいか。

 だとすると、俺の壁は関係なかったようだ。よくは、ないか。

「それで、話に戻るんだが」

「うん!」

「今の天気で犠牲になる人を減らしたい。だから、魔王城周辺の天気を安全なものにコントロールさせてくれないか」

「え?」

「ダメか?」

「いや、ダメじゃないけど、大事な話ってそれ?」

「そうだけど、そこまで大事じゃなかったか?」

 パトラは考え込んでいる。

 なんだろう。もっと大きなことをしてほしかったってか?

 そう言われても、今の俺にできることはこれくらいしか。

「ううん。大事な話だよ。ここ周辺の雷は生活に支障が出るほどだからね。鍛えてれば問題ないけど、子どもやお年寄りなんかは怪我の原因になるからさ」

「おうよ。任せてくれ」

「じゃ、お願いするね」

 俺は約束を取り付けた。

 早速、外に出て天気を変化させることを決めた。

「……カイセイってこのままずっと思わせぶりなままかな?」

「ん? 何か言ったか?」

「ううん。なんでもない」

「そうか?」

 油断していて聞き逃した。

 注意していれば聞こえたのだが、まあ、仕方ない。なんでもないなら、なんでもないんだろう。



「そういえば、ただの怪我の原因とかだったな」

 死ぬってのは考えすぎだったか。さすがは魔王軍と言ったところか。人間よりも丈夫らしい。

 と言っても、ただ天気を変えるだけなら簡単だ。俺がスキルを使えばいいだけだ。

 だが、天候として日々変化させ、そして危険を回避できるようにする。

 環境もあるだろうし、あんまり天候操作って永続的にしない方がいいような気がするけど。

「ま、いいか。任せられたってことは、少なくとも魔王城の近くは影響があってもいいってことだろう」

 俺はひとまず天気を変え、雲を吹き飛ばした。

 やはり空は青い。

 あとはこれをランダムなサイクルにするだけか。

「順に変わるようにってのはできそうな気がするけど」

 嵐を壁として設置することもやっているし、問題は人間世界の天気の再現。

 ランダム性。

 うーん。

 そうか、元の天候はランダムなのだし、それを少し俺が手を加えて、晴れが出るようにすればいいか。

「『ウェザーゲート』!」

 天気の発生源を作り、日々の天気の変化に対応して、空模様を変えられるようにした。

 これで、きっとうまくいくはず。

「あとは信じて待つだけか」

 天気は何も作り出すだけでなくあるものも使うことができるのか。

 俺はレーダーで精度を上げたり、新しく作ったりはしてきたが、あまり使うということをしてこなかった。

 神出鬼没の人物。次来た時はあえて霧を濃くすれば、濃さの違いから居場所を炙り出せるんじゃないか?

 少なくとも違和感は感じ取れるはず。

 俺の出した天気なら、触れる存在の位置を感知することなど容易。

「副産物だが、対策も思いついた。あとは実践あるのみ、か」

 俺は試しに霧を撒きながら魔王城周辺を歩きまくった。

 確かに、何もなしでやるよりも人の位置を把握できた。

 だが、晴れたはいいが前が見えないと、パトラだけでなく色々な人たちに叱られてしまった。
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