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第一章 勇者パーティ崩壊
最終話 勇者の父のその後
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「ぐ。うう」
濃い霧の中、俺の流した電流で体がしびれているらしく、霧の男は俺の前で倒れている。
「さて、これで終わりかな?」
「ま、まだだ」
「立つのか」
霧の男は意外にもタフらしく、俺の攻撃をくらっても立ち上がった。
だが、全身を霧にすることはできないらしく、今まで見えなかったら胴体が見える。
そしてそこにはバドンの祖父が持っていた、装飾のゴテゴテした剣が下げてあった。
「ほう。これが気になるか。ああ。そうか、そう言えば勇者パーティだったか、なら、これと似たものを見たことはあるわけだ」
「勇者の剣」
「そうさ」
あれは俺が壊したはず。
ならこの剣はなんだ?
勇者の剣は一本しかないはずだろう?
偽物?
「君の考えを当てようか、これが偽物だと思っているのだろう?」
「ああ」
「ざーんねん。あんなものと一緒にしてもらいたくない。あれはただの偽物さ。こっちが本物」
確かに、見かけの迫力は今霧の男が持っている剣の方がある。
だが、それがどうしたと言うのだ?
「その剣で勝てると?」
「ほう。この剣に買ったつもりでいるのか」
俺の嵐の鎧は強度で負ける要素がない。
それに、剣を使った戦いをしかけてこない以上、バドンの父とは言え、そこまで剣の腕はないのだろう。
「形成逆転だな。これで、終わりだ!」
さすがに勇者の父。
俺の反応より早く、剣は振り下ろされていた。
しかし、嵐の鎧が剣を受け止めてくれた。
受け止めた?
「マジか。本物は砕けないのか」
「砕けてたまるか! これは本物の勇者の剣なんだぞ。そもそもなぜ攻撃を受け止められる。それがおかしいだろう」
「そう言われても」
驚きに目を見開きながら、霧の男は大きく飛びのいた。
俺としては嵐の鎧で砕けなかった方が驚きだが、これは防御用のものだし、仕方がないか。
「勇者の父なら勇者なんじゃない?」
「確かに。剣そのものが頑丈と言うより、壊れない魔法でもかかっているのかもしれん」
「この剣が他のものに強度で負けると言いたいのか?」
「それはあり得るだろ」
「そんなわけあるか!」
再度接近してくると、今度は連続で攻撃を当ててくる。
だが、どれも鎧に当たるとはじかれ、俺のところまで刃は届いてこない。
「そもそもそれ、あんたのじゃなくてバドンのじゃないのか?」
「は? そんなわけないだろ」
「散々だな。息子を勇者に仕立て上げるなら、しっかり勇者の武器渡してやれよ」
なんだろう。地雷だったのか、霧の男の攻撃スピードが上がった?
「親が子に何したっていいだろ!」
「あんたも勇者じゃないのか? 恥ずかしくないのか?」
「私は霧の勇者。だから、この剣を持っているんだ。悪いのは私の父の方だ。いつまでも自分で剣を持ち、子である私に渡さなかった。やっと使えるようになったんだ。どう使おうと私の勝手だろう」
「勇者ってこんなのばっかなのか」
「こんなところに住んでる奴には言われたくないわ!」
「そうかよ。こんなところの力見せてやるよ」
今日は悪天候。こんなところの力を見せつけるにはもってこいの天気だ。
俺は空のスキルを一時解除すると、すぐ近くに雷が落ちた。
「俺には俺のスキルは効かない。そして、俺の仲間にもだ。だが、敵にはどうだろうな」
「何をする気だ?」
「こうするのさ、『神鳴り』!」
「やっと目を覚ましたか」
「ふん。魔王軍幹部とやらは随分と甘いんだな。私を生かしておくか」
ここは魔王城の地下。
何やら笑ってらっしゃる。
確かに、生かしてやろうと思っている。だが、そのままの姿で生かしてやるほど、俺も優しくない。
先代魔王様への捧げ物も必要だからな。
「一つ話をしておこう。俺のスキルは応用が効く。だから、一度見たスキルは似せて使うことができる。こんな風に『サウザンド』!」
「敵に実力を教えてどうする?」
「どうするも何も、こうするんだよ。俺的『ソウルブレイカー』」
「なぜお前がぁ!」
察しが悪いなぁ。全く。
まあいいや。
きらりと輝くものが、霧の勇者の体から流れ出てきた。
これが霧の勇者の魂だろう。
「先代魔王様、新しい魂を持ってきました。また勇者の魂ですって」
「おい、カイセイ。勇者ってまさか」
「まあまあ、そんなこといいじゃない。それで、先代魔王様、魂の入れ物ですが」
「なんだ。今回はやけに乗り気だな」
「どうせ、このまま放置してるより、先代魔王様の遊び相手として捧げた方が、俺の印象もよくなるかなって」
「印象がよくなっても、女の子になってほしいことに変わりはないぞ。勝手にやったら嫌われてしまうからやらないが」
「先代魔王が嫌われるの嫌な相手って誰だよ」
「まあ、いいじゃない」
「僕には何も教えてくれないのな」
だって、勇者だし。
「ほれ、そこに入れ物が三つあろうだろう。好きなのに入れるといい」
「わかりました」
俺は三つの中から一際小さな人形の中に魂を入れた。
「……せいぜい遊んでもらうんだな。一生そこで」
「どうして別部屋なんだ?」
「それじゃ俺はこれで」
「おい。ずっと無視か!」
「バドン様?」
「なんでマジュナまで僕の行動を縛るんだ! おかしいだろ。なんで今の状況楽しんでるんだよ。なあ、カイセイ! カイセーイ」
俺はバドンを無視して歩き続けた。
把握している脅威は無くなった。
そのせいか、俺はゆっくりと自給自足生活に足を踏み込んでいた。
天候をのどかにしたせいか、無邪気に外を駆け回る子どもたちを見かけるようになり、自然の観察をするようになった。
それくらい、不毛な土地が見違えるほど緑豊かになった。
俺は、壁とその外の様子を見守りつつ、そんな豊かな緑の中、日々自由に生きていた。
「カイセイがやらなくても食事の準備くらいするよ?」
狩りも料理もできるパトラは、いつもそんなことを言っている。
他の幹部たちも、色々な理由をつけて、俺を呼んでくる。
一応要望には応えているが、気づけばいつも壁の近くにいる。
「いいんだよ。これは俺がやりたいことだから。そういえば気づいたか? 壁は日に日に強化されてるんだぞ?」
「そうなの? でも、そんなこと必要?」
「必要かどうかじゃない。俺がやりたくてやってるんだ」
「まあ、ここは私も落ち着くからね。……ここなら大抵二人だし」
「ん?」
「なんでもなーい」
何か隠し事されている気がするが、気のせいか。
「おーい」
ぞろぞろとやってきた仲間たちに手を振りながら、俺はその場に寝転がった。
濃い霧の中、俺の流した電流で体がしびれているらしく、霧の男は俺の前で倒れている。
「さて、これで終わりかな?」
「ま、まだだ」
「立つのか」
霧の男は意外にもタフらしく、俺の攻撃をくらっても立ち上がった。
だが、全身を霧にすることはできないらしく、今まで見えなかったら胴体が見える。
そしてそこにはバドンの祖父が持っていた、装飾のゴテゴテした剣が下げてあった。
「ほう。これが気になるか。ああ。そうか、そう言えば勇者パーティだったか、なら、これと似たものを見たことはあるわけだ」
「勇者の剣」
「そうさ」
あれは俺が壊したはず。
ならこの剣はなんだ?
勇者の剣は一本しかないはずだろう?
偽物?
「君の考えを当てようか、これが偽物だと思っているのだろう?」
「ああ」
「ざーんねん。あんなものと一緒にしてもらいたくない。あれはただの偽物さ。こっちが本物」
確かに、見かけの迫力は今霧の男が持っている剣の方がある。
だが、それがどうしたと言うのだ?
「その剣で勝てると?」
「ほう。この剣に買ったつもりでいるのか」
俺の嵐の鎧は強度で負ける要素がない。
それに、剣を使った戦いをしかけてこない以上、バドンの父とは言え、そこまで剣の腕はないのだろう。
「形成逆転だな。これで、終わりだ!」
さすがに勇者の父。
俺の反応より早く、剣は振り下ろされていた。
しかし、嵐の鎧が剣を受け止めてくれた。
受け止めた?
「マジか。本物は砕けないのか」
「砕けてたまるか! これは本物の勇者の剣なんだぞ。そもそもなぜ攻撃を受け止められる。それがおかしいだろう」
「そう言われても」
驚きに目を見開きながら、霧の男は大きく飛びのいた。
俺としては嵐の鎧で砕けなかった方が驚きだが、これは防御用のものだし、仕方がないか。
「勇者の父なら勇者なんじゃない?」
「確かに。剣そのものが頑丈と言うより、壊れない魔法でもかかっているのかもしれん」
「この剣が他のものに強度で負けると言いたいのか?」
「それはあり得るだろ」
「そんなわけあるか!」
再度接近してくると、今度は連続で攻撃を当ててくる。
だが、どれも鎧に当たるとはじかれ、俺のところまで刃は届いてこない。
「そもそもそれ、あんたのじゃなくてバドンのじゃないのか?」
「は? そんなわけないだろ」
「散々だな。息子を勇者に仕立て上げるなら、しっかり勇者の武器渡してやれよ」
なんだろう。地雷だったのか、霧の男の攻撃スピードが上がった?
「親が子に何したっていいだろ!」
「あんたも勇者じゃないのか? 恥ずかしくないのか?」
「私は霧の勇者。だから、この剣を持っているんだ。悪いのは私の父の方だ。いつまでも自分で剣を持ち、子である私に渡さなかった。やっと使えるようになったんだ。どう使おうと私の勝手だろう」
「勇者ってこんなのばっかなのか」
「こんなところに住んでる奴には言われたくないわ!」
「そうかよ。こんなところの力見せてやるよ」
今日は悪天候。こんなところの力を見せつけるにはもってこいの天気だ。
俺は空のスキルを一時解除すると、すぐ近くに雷が落ちた。
「俺には俺のスキルは効かない。そして、俺の仲間にもだ。だが、敵にはどうだろうな」
「何をする気だ?」
「こうするのさ、『神鳴り』!」
「やっと目を覚ましたか」
「ふん。魔王軍幹部とやらは随分と甘いんだな。私を生かしておくか」
ここは魔王城の地下。
何やら笑ってらっしゃる。
確かに、生かしてやろうと思っている。だが、そのままの姿で生かしてやるほど、俺も優しくない。
先代魔王様への捧げ物も必要だからな。
「一つ話をしておこう。俺のスキルは応用が効く。だから、一度見たスキルは似せて使うことができる。こんな風に『サウザンド』!」
「敵に実力を教えてどうする?」
「どうするも何も、こうするんだよ。俺的『ソウルブレイカー』」
「なぜお前がぁ!」
察しが悪いなぁ。全く。
まあいいや。
きらりと輝くものが、霧の勇者の体から流れ出てきた。
これが霧の勇者の魂だろう。
「先代魔王様、新しい魂を持ってきました。また勇者の魂ですって」
「おい、カイセイ。勇者ってまさか」
「まあまあ、そんなこといいじゃない。それで、先代魔王様、魂の入れ物ですが」
「なんだ。今回はやけに乗り気だな」
「どうせ、このまま放置してるより、先代魔王様の遊び相手として捧げた方が、俺の印象もよくなるかなって」
「印象がよくなっても、女の子になってほしいことに変わりはないぞ。勝手にやったら嫌われてしまうからやらないが」
「先代魔王が嫌われるの嫌な相手って誰だよ」
「まあ、いいじゃない」
「僕には何も教えてくれないのな」
だって、勇者だし。
「ほれ、そこに入れ物が三つあろうだろう。好きなのに入れるといい」
「わかりました」
俺は三つの中から一際小さな人形の中に魂を入れた。
「……せいぜい遊んでもらうんだな。一生そこで」
「どうして別部屋なんだ?」
「それじゃ俺はこれで」
「おい。ずっと無視か!」
「バドン様?」
「なんでマジュナまで僕の行動を縛るんだ! おかしいだろ。なんで今の状況楽しんでるんだよ。なあ、カイセイ! カイセーイ」
俺はバドンを無視して歩き続けた。
把握している脅威は無くなった。
そのせいか、俺はゆっくりと自給自足生活に足を踏み込んでいた。
天候をのどかにしたせいか、無邪気に外を駆け回る子どもたちを見かけるようになり、自然の観察をするようになった。
それくらい、不毛な土地が見違えるほど緑豊かになった。
俺は、壁とその外の様子を見守りつつ、そんな豊かな緑の中、日々自由に生きていた。
「カイセイがやらなくても食事の準備くらいするよ?」
狩りも料理もできるパトラは、いつもそんなことを言っている。
他の幹部たちも、色々な理由をつけて、俺を呼んでくる。
一応要望には応えているが、気づけばいつも壁の近くにいる。
「いいんだよ。これは俺がやりたいことだから。そういえば気づいたか? 壁は日に日に強化されてるんだぞ?」
「そうなの? でも、そんなこと必要?」
「必要かどうかじゃない。俺がやりたくてやってるんだ」
「まあ、ここは私も落ち着くからね。……ここなら大抵二人だし」
「ん?」
「なんでもなーい」
何か隠し事されている気がするが、気のせいか。
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ぞろぞろとやってきた仲間たちに手を振りながら、俺はその場に寝転がった。
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