今更あなたから嫉妬したなんて言われたくありません。

梅雨の人

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王の非情な決断

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支離滅裂に喚き散らすルーカスの声が聞こえたのか、すぐに謁見室の扉が開きウィリアムソン侯爵は招き入れられた。
 
「ウィリアムソン侯爵、此度のこと申し訳なかった。」 

 エルザの父が姿勢を正すなり、国王自ら今回のルーカスの件について詫びを入れた。

「陛下、そうおっしゃるのでしたら、今すぐルーカス殿下と我が娘エルザの婚約を破棄させていただきたく存じます。」 

「…すまない、ウィリアムソン侯爵。それは許可できないのだ。

ルーカスの阿呆め。男爵令嬢とはいえ聖女を名乗る者の純潔を奪ってしまっては、王太子妃にするしかなかろう。

かといって、エルザも手放せない。

エルザは既に王太子妃教育を終えてしまった。それに加えあの女に王太子妃の役割が務まるとは到底考えられない。

お主の気持ちもよくわかるが、あの小娘を王太子妃として迎え、エルザに第二妃となってもらう他あるまい。

あの娘が王太子妃としての仕事に慣れるまでエルザに支えてもらい、その後は第二妃として出来る限り本人の希望に沿うようにこちらも対処することを約束しよう。望むなら慰謝料を上乗せして離縁させてやっても良い。」 

「陛下!それはあまりにも残酷だ!」

「すまない、ウィリアムソン侯爵よ…。」

深くため息を漏らす国王との謁見を終えたエルザの父は、娘がこれから置かれるであろう境遇を想い胸を痛めた。 

長い年月を重ね信頼と愛情をはぐくんできた相手の入籍直前不貞の末に、そんな浮気相手達を支えるためだけに第二の妻として嫁がせることになってしまうとは。 

父として力の足りない己の不甲斐なさと、これまで様々なことを犠牲にして王太子妃になるために励んできたエルザの境遇を思うとやるせなさで一杯になった。 

そしてその翌日、ようやく顔色が若干よくなったように見える娘にする話ではないとは分かっていたが、他から余計な情報が入る前にと、先日の王との謁見で決まってしまったことをエルザに告げたのだった。 

ルーカスとの一夜で純潔を失った聖女が王妃になることが決定し、自分はそれでもルーカスの第二妃として嫁ぐと知らされたエルザは絶望の涙を流した。 

泣き崩れる娘を前に、エルザの父は歯を食いしばって王家の無情な仕打ちに涙する娘を抱きしめたのだった。 
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