今更あなたから嫉妬したなんて言われたくありません。

梅雨の人

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眺めることしかできない男

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「またか…またダグラスとエルザはああやって茶を楽しんでいるのか…。なんでエルザはあんなに楽しそうにダグラスとすごしているんだ…何を話してそんなに笑ってるんだ、エルザ…ああっ…くそっ…」 

エルザとダグラスが庭園でお茶をするのが日課になった頃、ルーカスにとってはその時間、自分の執務室からエルザの様子を指をくわえて眺めるのが日課になっていた。 

エルザが嫁いできて、今更だが初夜を迎えたくてもプリシアに泣き落された挙げ句、激しい嫉妬で束縛されてしまい、思うように身動きが取れないルーカスは心底疲れ果てていた。 

しかもプリシアが懐妊したため、無理やり妊婦を放置してエルザの元に行くことに後ろめたさも感じていた。

そうこうしているうちに気が付けば、エルザが自分に嫁いできたというのに未だ二人の時間が皆無な上に閨も共にできていない現実に、ルーカスの苛立ちも最高潮に達していた。 

ルーカスにとってプリシアを気にせず、エルザをゆっくりと己の視界に移すことのできる唯一の時間がこんな情けない形となってしまったことに、こんなはずではなかったと思わずにはいられなかった。

そんなルーカスであったが、聖女であるプリシアを無碍に扱うことも出来ず、しかも自分との子を身籠っているためプリシアの前では優しい夫を演じるように心がけていた。 

幼いころからずっと自分と一緒にいてくれたエルザをいつしか心から愛するようになっていたのに、気が付けばプリシアに翻弄されてしまっていた。

エルザと婚約していたというのにプリシアが自分に馴れ馴れしくするのを拒否できず、あの日プリシアと一夜を共にしてしまった自分に今更ながら心底嫌気がさした。 

そうとも知らないプリシアは、王太子ルーカスの執務がどれだけ忙しいのかなど我関せずで、いつものように突然ルーカスの執務室にやって来たのだった。 
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