愛を知ってしまった君は

梅雨の人

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慌てる夫

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「待ってくれっ、ルビー!」 

「あら、ノア。どうしたの?」 

「どうしたのって…一体、何をしてるんだい?」 

「何をしているかって…今からジョーと一緒に出掛ける途中なんだけど。」 

「出掛けるって…。」 

 「やあ、マクアベル伯爵殿。お久しぶりです。結婚式以来ですね。」 

「え、ええ、ご無沙汰しております。ノースベスト侯爵令息様。今日は私の妻を連れてどこに行くのか伺っても? 」

「だめよ、ノア。それはお楽しみなんだから。私だって今日はジョーがどこに連れていってくれるのか知らされてないのに。ノアも私がいない間、また、カミラと楽しく過ごしたらいいじゃない?ね?それじゃあ、行ってくるわね。行きましょう、ジョー?」 

「ああ、ルビー。楽しみにしていてくれ。では失礼、マクアベル伯爵殿。」 

呆然とするノアを置き去りにしたまま、ジョーンズの安定感のあるエスコートに身をゆだねてルビーは行ってしまった。 

「待ってくれ、ルビーッ」

執事からノースベスト侯爵令息がルビーを訪ねていていると知らされた時のノアは、悪い予感がして息を切らせて駆けつけた。 

それなのに、外出用の美しい装いをしたルビーは、なぜそんなに慌てているのか不思議だといった風にコテンと首を傾げて不思議そうにノアを見ていた。 

不本意ながら、互いに自分たち以外の異性と交流しようが一切干渉しないと誓約書にサインをしたが、まさか本当に、しかもこんなに早くルビーが自分以外の男と接触を図るとは夢にも思っていなかった。 

「旦那様...」

「ルビーが本当に私以外の男と出かけるなんて…。なんであんな契約書にサインしてしまったんだ…。こんなに苦しくなるものなのか.....」
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