愛を知ってしまった君は

梅雨の人

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ノア2

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悶々とした日々を過ごしていたある日、執事のフィンが言いにくそうに口を開いた。 

「旦那様、少しよろしいでしょうか。」 

「どうした、何か不都合なことでもあったのか?」 

「いえ、その…不都合というよりは…。」 

「どうしたんだ。良いから早く言え。」 

 「はい…あの、奥様が…。」 

「ルビーが?ルビーがどうしたんだ。」 

「その、早朝にお出かけになられました。」  

「何?早朝にだと?」 

「ええ…その、私も驚きまして。あんな早朝にお出かけになられていたのでお声をかけさせていただきましたら、少し遠くまで行くからという事で…。」 

「遠くまで…?」 

「ええ、その…ずっと訪れてみたかったところがあったのだけど、旦那様はすでにほかの方と訪ねられたみたいなので、ノースベスト侯爵令息様と今日からそちらに向かうとのことで。

何かあれば知らせを寄越してほしいとおっしゃっておりました。」 

「嘘だろ…行ってみたかった場所って…あの温泉地のことか?
ルビーがあの男とあそこへ向かったというのか…?…そんな…」 


「だっ旦那様!旦那様が倒れたぞっ!!早く医者を呼ぶんだっ!旦那様を抱えて部屋にお連れしろ!」 
 
 ◇

真っ白な世界に私はいつの間にか一人佇んでいた。 


すると目の前にいつかの幸せな記憶が映し出されていた。 

これはいつだったろうか。
なかなか時間が取れずにいた私がルビーにどこか行きたいところがないか尋ねたことがあった。 

『ソルト-街へいってみたいわ!温泉っていうものがたくさんあるんですって。綺麗な湖を眺望できる素敵な宿もあるらしいの。その宿の客室にも各部屋に温泉が設置されてるらしくて、夜はライトアップされていてとても素敵なんですって!』 

『はははっ、すごくルビーは物知りだね。』 

『随分前のお茶会で友人が教えてくれたのよ。彼女の旦那様と訪れて、とても素晴らしかったって!だから私もノアと是非行ってみたいわ!』 

『そうか、愛しい妻のそんな可愛い願いは是非叶えてやらないとな。では今度時間を作るから一緒に行こう。』 

『本当に、ノア?!すごく嬉しいわ!ありがとう!』 

その時のルビーは無邪気に笑顔を溢れさせており、私はそのあまりの可愛さに思わず顔中にキスを送ってしまった。 

使用人の前で恥ずかしいと顔を真っ赤にして怒ってしまったルビーがまた可愛くて、ぎゅっと抱きしめたらルビーもその小さな体で私を抱きしめ返してくれた…。 
 

目の前に映し出されるその幸せ過ぎる過去の二人を見ていると視界がぼやけていつしか見えなくなった。  
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