見捨てられたのは私

梅雨の人

文字の大きさ
114 / 147

108

しおりを挟む
「楽しみだ…ああ、そしてここは簡単な調理ができるようになっている。あまり必要ないとは思うけど。あと、あっちにあるのが小雪の化粧部屋だ。見てみる?」 

「ええ、是非とも。」 


そう言って東吾様に連れて行ってもらった化粧部屋はとても広くて私一人で使うにはもったいない気が致します。 

「ああ、小雪。広すぎて落ち着かないって顔だな。心配しなくていいぞ。ほらここに俺専用の椅子があるだろ?寂しくないようにいつも俺がここで小雪を待っててやる。」 

「恥ずかしいですわ…」 

「…かわいいなあ小雪は…。」 

「またかわいい、かわいいと…東吾様ったら…」 

ほら、また頬が赤くなってる…そうおっしゃられた東吾様に後ろから抱きしめられました。
東吾様の熱を背中に感じつつ鏡越しに見える東吾様に目を向けますと、東吾様の頬も心なしか赤くなっておられました。

「…じゃあ次が最後だ。残りの部屋はまた後日案内するからな。入って。…ここが寝室だ。おいで、小雪。」 

一歩底に足を踏み入れると、大きな寝台と綺麗に輝く湖畔が目の前に広がっております。 

「…気に入った?小雪?」 

「東吾様…ここまで用意してくださって言葉にしようがございません。私は本当に幸せ者でございます…」 

「…小雪…」 


どちらからともなく自然と吸い寄せられるように抱きしめあって東吾様の優しい口づけを受け止めました。
お互いにぴったりとくっついて隙が無いほどに求め合っても足りないとばかりに、たくさんの愛を伝えあい、いつしか頭の中で何も考えられなくなっておりました。

体力が尽きてもう駄目だと思うのに、何度も何度も終わりなく求められるのが心の底から嬉しくて、幸せで流れる涙を東吾様が啜ってくださるたびに本当に東吾様と夫婦になれてよかったと心から思うのでした。 

朝方目が醒めると、東吾様がじっと私を見つめておられました。
目を開けた瞬間に東吾様のお顔がこのように近くにあって動揺を隠すのに苦労致します。
「おはようございます、東吾様…」
「おはよう…小雪…愛してる…」
「私も…東吾様を愛しております…」

逞しい腕に抱きしめられて幸せを噛み締めます。

昨夜の私の痴態を思い出して赤面した私の髪の毛を手櫛で優しく梳いてくれる東吾様はとてもやさしい表情をしておりました。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

〈完結〉遅効性の毒

ごろごろみかん。
ファンタジー
「結婚されても、私は傍にいます。彼が、望むなら」 悲恋に酔う彼女に私は笑った。 そんなに私の立場が欲しいなら譲ってあげる。

戻る場所がなくなったようなので別人として生きます

しゃーりん
恋愛
医療院で目が覚めて、新聞を見ると自分が死んだ記事が載っていた。 子爵令嬢だったリアンヌは公爵令息ジョーダンから猛アプローチを受け、結婚していた。 しかし、結婚生活は幸せではなかった。嫌がらせを受ける日々。子供に会えない日々。 そしてとうとう攫われ、襲われ、森に捨てられたらしい。 見つかったという遺体が自分に似ていて死んだと思われたのか、別人とわかっていて死んだことにされたのか。 でももう夫の元に戻る必要はない。そのことにホッとした。 リアンヌは別人として新しい人生を生きることにするというお話です。

【完結】愛も信頼も壊れて消えた

miniko
恋愛
「悪女だって噂はどうやら本当だったようね」 王女殿下は私の婚約者の腕にベッタリと絡み付き、嘲笑を浮かべながら私を貶めた。 無表情で吊り目がちな私は、子供の頃から他人に誤解される事が多かった。 だからと言って、悪女呼ばわりされる筋合いなどないのだが・・・。 婚約者は私を庇う事も、王女殿下を振り払うこともせず、困った様な顔をしている。 私は彼の事が好きだった。 優しい人だと思っていた。 だけど───。 彼の態度を見ている内に、私の心の奥で何か大切な物が音を立てて壊れた気がした。 ※感想欄はネタバレ配慮しておりません。ご注意下さい。

邪魔者は消えますので、どうぞお幸せに 婚約者は私の死をお望みです

ごろごろみかん。
恋愛
旧題:ゼラニウムの花束をあなたに リリネリア・ブライシフィックは八歳のあの日に死んだ。死んだこととされたのだ。リリネリアであった彼女はあの絶望を忘れはしない。 じわじわと壊れていったリリネリアはある日、自身の元婚約者だった王太子レジナルド・リームヴと再会した。 レジナルドは少し前に隣国の王女を娶ったと聞く。だけどもうリリネリアには何も関係の無い話だ。何もかもがどうでもいい。リリネリアは何も期待していない。誰にも、何にも。 二人は知らない。 国王夫妻と公爵夫妻が、良かれと思ってしたことがリリネリアを追い詰めたことに。レジナルドを絶望させたことを、彼らは知らない。 彼らが偶然再会したのは運命のいたずらなのか、ただ単純に偶然なのか。だけどリリネリアは何一つ望んでいなかったし、レジナルドは何一つ知らなかった。ただそれだけなのである。 ※タイトル変更しました

【商業企画進行中・取り下げ予定】さようなら、私の初恋。

ごろごろみかん。
ファンタジー
結婚式の夜、私はあなたに殺された。 彼に嫌悪されているのは知っていたけど、でも、殺されるほどだとは思っていなかった。 「誰も、お前なんか必要としていない」 最期の時に言われた言葉。彼に嫌われていても、彼にほかに愛するひとがいても、私は彼の婚約者であることをやめなかった。やめられなかった。私には責務があるから。 だけどそれも、意味のないことだったのだ。 彼に殺されて、気がつけば彼と結婚する半年前に戻っていた。 なぜ時が戻ったのかは分からない。 それでも、ひとつだけ確かなことがある。 あなたは私をいらないと言ったけど──私も、私の人生にあなたはいらない。 私は、私の生きたいように生きます。

〈完結〉【書籍化&コミカライズ・取り下げ予定】記憶を失ったらあなたへの恋心も消えました。

ごろごろみかん。
恋愛
婚約者には、何よりも大切にしている義妹がいる、らしい。 ある日、私は階段から転がり落ち、目が覚めた時には全てを忘れていた。 対面した婚約者は、 「お前がどうしても、というからこの婚約を結んだ。そんなことも覚えていないのか」 ……とても偉そう。日記を見るに、以前の私は彼を慕っていたらしいけれど。 「階段から転げ落ちた衝撃であなたへの恋心もなくなったみたいです。ですから婚約は解消していただいて構いません。今まで無理を言って申し訳ありませんでした」 今の私はあなたを愛していません。 気弱令嬢(だった)シャーロットの逆襲が始まる。 ☆タイトルコロコロ変えてすみません、これで決定、のはず。 ☆商業化が決定したため取り下げ予定です(完結まで更新します)

【完結】私の婚約者はもう死んだので

miniko
恋愛
「私の事は死んだものと思ってくれ」 結婚式が約一ヵ月後に迫った、ある日の事。 そう書き置きを残して、幼い頃からの婚約者は私の前から姿を消した。 彼の弟の婚約者を連れて・・・・・・。 これは、身勝手な駆け落ちに振り回されて婚姻を結ばざるを得なかった男女が、すれ違いながらも心を繋いでいく物語。 ※感想欄はネタバレ有り/無しの振り分けをしていません。本編より先に読む場合はご注意下さい。

完結 貴方が忘れたと言うのなら私も全て忘却しましょう

音爽(ネソウ)
恋愛
商談に出立した恋人で婚約者、だが出向いた地で事故が発生。 幸い大怪我は負わなかったが頭を強打したせいで記憶を失ったという。 事故前はあれほど愛しいと言っていた容姿までバカにしてくる恋人に深く傷つく。 しかし、それはすべて大嘘だった。商談の失敗を隠蔽し、愛人を侍らせる為に偽りを語ったのだ。 己の事も婚約者の事も忘れ去った振りをして彼は甲斐甲斐しく世話をする愛人に愛を囁く。 修復不可能と判断した恋人は別れを決断した。

処理中です...