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(暖かい…)

気が付けばそこは真っ白な世界で、ゆっくりと立ち上がった私はゆっくりと歩きだした。

(どうして誰もいないの?)


『そこを退け!」

『なりません、ラシータ様の許可が得られるまで触れることはないと承っております。だから、ここを退くことはあり得ません。』


(ラシータ?)


『退くんだ。彼女は私の妻だ。触れて何が悪い。』

『なりません。』


(怖いーーー)


ぼんやりとした思考の中、男たちの言い争う声が聞こえてきた。

「うっ」

体中が鉛が入っているかのように重くて、わずかにかすれた声が漏れ出た。

ぼんやりと目の前に映る男たちが一斉にこちらに視線を向けてきたような気がした。


(怖いーーー誰なの…。)

「ラシータ目が覚めたのか?!ああ…よかった…」

そのうちの一人がこちらに向かって手を伸ばしてきたが、もう一人の男がそれを阻止している。

男たちがもみ合っているうちに、一方の男の指が私のうでにかすかに触れた。

「ひっ」

その瞬間体が震える感覚を覚えると同時に男の触れた指を振り払っていた。

「あ…あ…」

「ラ、ラシータ?」

(気持ち悪い…どうして…誰なの?…)

「あ…私は…一体…」

「ラシータ…、混乱しているんだね。もう大丈夫だ。ロナルド、そこを退け。」

「なりません。」

「ラシータ、辛かったね。おい、ロナルド、そこを退けと言っているだろう。やっと目が覚めた妻を夫である私が抱きしめるのに、なぜ貴様が偉そうにそれを止めようとする。」

「ロナルド…?…妻?夫?・・・」

「うっーーーーー」

(頭が重い…ロナルド?妻?夫?ラシータ?一体何を言っているのーーー?)


「医師を…医師を呼ぶんだ!今すぐ!ラシータ?!」

バタバタと騒がしくなった室内の音が遠くに聞こえ出したと同時に私は再び意識を手放した。
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