雪とともに消えた記憶~冬に起きた奇跡~

梅雨の人

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「奥様、ようやくお気付きになられましたな。いや、よかった。」

ぼんやりとした思考の中、目を開けた私の目の前に二人の男性の姿が目に入ってきた。

一人は医師と見受けられる高齢な男性と、一人は輝く銀髪の髪と王子様然とした見た目の若い男性で、若いほうの男性は医師と話をする間もずっと私から視線を逸らすことはなかった。


「先生、妻は、ラシータはもう大丈夫でしょうか?」

「峠は越したかと思います。先日お伝えしたように体の打ち身も奇跡的に酷いものではありませんでしたし。しかし…先ほど聞いた話からすると…おそらく頭を打ち付けたことが原因で記憶を失っているのではないかと。」

「やはり…それで記憶はいつ戻るのでしょうか?」

「それは私にもわかりかねますな。今日かもしれないし、もしかしたら1年後、あるいは…」


(記憶を失っている?)

「ああ、ラシータ。大丈夫だ。私が付いてる。」

そう私に告げる男性のすぐ傍に護衛とみられる先ほどの男性の姿が目に入った。

なぜだか目が離せなくて戸惑っていると、その護衛騎士の男が一瞬のことだったが口角をあげて微笑んだのを見て胸が熱くなった。

「だから君ーーーーーだ。だから、----。分かったね?」
 
目の前で話をしている人物がいるというにもかかわらず、ほかの人に目を向けてしまった自分に気が付いて慌ててしまった。 

「ああ…よかった、ラシータ。」

そう言いながらついには涙をこぼす私の夫だという男を目前で目にして、美形は涙を流しても絵になるなあなんて場違いなことを考えてしまった。

「ラシータ?なぜなんだ、ラシータ。お願いだ私のことだけでも思い出してくれっ」

心ここにあらずの私に気が付いたであろう彼が、突然護衛騎士が制止するのも無視して無理やり私に抱き着いてきた。

 「きゃ…きゃあぁぁぁぁぁ!!」

「なっ、ラシータ、私だ!君の愛する夫のセガールだ!」

「いや!やめて!!」

「セガール様!」

目の前の男は激しく私に拒絶されたのが相当ショックだった様子で、しかしすぐに私に近づいて私を抱きしめてきた。護衛や周囲が私と男を引き放そうとするが私をぎゅっと抱きしめたままの男は決して私から離れなかった。

「ラシータ、何も心配する必要はないんだ。私は君の愛する夫で、君は私の最愛の妻ラシータだ。」

震える私の体を無理やり書き抱いて背中を摩ってくる男の体温を感じると震えが激しくなって喉が詰まったように言葉が出なくなった。

「ラシータ様!!セガール様おやめください!」

激しく拒絶された夫はショックを隠し切れない様子で、それでも大丈夫だ愛していると私を抱きしめ背中をさすってくるのが痛々しくいたたまれない気持ちになった。 
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