愛しの婚約者は王女様に付きっきりですので、私は私で好きにさせてもらいます。

梅雨の人

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この胸の高鳴りはあなただけのもの

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今回のミリアリア様によって企てられた一件により、関係した男子生徒二名と、私を呼び出した女生徒一名はすぐさま退学処分になり復学を禁止された。
つまり、貴族の義務である高等教育を禁止させられたので彼らはもう貴族ではいられなくなるという訳だ。

各家からは速やかに除籍させられた彼らは、私への慰謝料を払い終えるまで鉱山で働くことになったようだ。

可哀そうなんて…全く思えない。

そして、ミリアリア様は、退学処分に加え身分を平民に即座に移された後、最も戒律が厳しい修道院へと送られていった。

もう、彼女とは会う機会がないはずだとマーカス様はおっしゃっていた。

今回、事件を知らされたお父様と、デニロン侯爵夫妻の怒りはもの凄かった。
相手に有無を言わせる隙も与ることがなく最速で相手に最も重い罰を負わせたそうだ。

ただこのような醜聞は何事もなかったとはいえ貴族女性にとっては致命的なものになるため、関係者以外へその詳細は伏せられることになった。

心配したお父様からはもしも私が不安であればすぐに帰国するようにと伝えられたが、私は今の生活に満足しているのでこの留学生活を継続することにした。

その一件以来、マーカス様は以前にもまして私の傍から離れなくなってしまった。
少し離れていたとしても、気が付けばマーカス様の視線を感じる。

「ローズマリー嬢、お願いだから一人に絶対にならないで。僕が戻ってくるまでここで待っててもらえないだろうか?」

そう言い残したマーカス様は、剣術の訓練へと行ってしまった。

それを見ていたバネッサ様は、何とも面白いものを見させてもらったというような顔をして、私に尋ねてきた。

「ねえ、ローズマリー様。マーカス様は私の婚約者の親友だから多少はその人となりを知っているつもりでいるのだけど。あなたが現れてからの彼は、今まで私たちが目にしてきた彼とは随分異なるわ。まあ、私もザッカリーもその変わりようを楽しんではいるのだけれど。私も回りくどい言い方はあまり好みではないから単刀直入に伺うわ。マーカス様のあなたへの接し方は明らかに他の方々とは異なる。それにはお気付きになっているのでしょう?ローズマリー様はマーカス様のことお慕いしているの?」

本当に、単刀直入に聞いてきたなと内心戸惑いつつも、心の内をこの友人に打ち明けることにした。
これまで色々ありすぎて、本当はもう誰かに聞いてもらいたかったのかもしれない。

「バネッサ様もご存じの通り、私はこちらに来る前に婚約者解消した身よ。正直、私なんてマーカス様にはもったいないと思っているの。前の婚約者のことは今はどうとも思ってないわ。お慕いしていたと思っていたけど、今となってはそれがただ一緒にいた時間から来た情なのかどうかも自信がないの。人の本性なんてどうとでも隠せるもので、気持ちなんて簡単に変わってしまうのだと実感して私の心は折れてしまったわ。もう立ち直れないんじゃないかってくらいバキバキに。人って本当に恐ろしい生き物だと思ったわ。そして、そんなふうに思う私自信はとても脆くて情けない人間じゃないかと感じるようになってしまったの。」

そんな私の話を聞いてくれているバネッサ様は、そんなことはないと私に伝えるように首を横に振っている。

「想像したくないけれども、客観的に見て些細なことをきっかけに今のマーカス様の態度が変わってしまう事があってもおかしくないわ。それは誰にでもいえることなのか私にはわからないけれども、恋愛小説でもよく心変わりをしてしまう主人公や恋人の話が出てくるじゃない。また傷つきたくない私は臆病者なのよ。でも、マーカス様と一緒にいるとたまに鼓動が早くなったり、モヤモヤしたり、ドキッとすることがあるの。そんなことは今までなかったからちょっと私自身驚いてはいるの。マーカス様のおそばにいることはとても安心できて、心地よいものだわ。いつか、マーカス様にふさわしい方が現れたらその時は私はその場を去るしかないのよ。」


「…それは本当かい、ローズマリー嬢?」

今ここにいるはずのない声にびっくりした私が振り返ると、すぐそこには真剣な表情をしたマーカス様が立っていた。

「…ローズマリー嬢。僕は君の元婚約者とは絶対に違うと誓うよ。そして、婚約解消したことなんて何も僕にとっては問題ないんだ。君にこう言っては申し訳ないが、それは僕にとっては本当に幸運な出来事だったと思っている。僕は今まで婚約者を決めることはしなかった。それは僕が今まで、どの女性にも興味を惹かれなかったからだ。でも、君に留学先で初めて出会った瞬間に雷に打たれたような衝撃を感じた。恋に落ちてしまったんだとすぐにわかったよ。君は僕といると安心できて心地よいものだと言ってくれたけど、それは僕も君に感じることだよ。もういつもドキドキしっぱなしさ。おかげで良く挙動不審になってしまって、いつも君に引かれやしないかって心配している。君の傍ではいつも情けない僕を見せてしまっているね。僕の君への気持ちは絶対に変わることはないと確信している。僕は心の底から君が好きなんだ。」

そう言って跪いたマーカス様はゆっくりと震えるその手で私の手をとった。

「ローズマリー・アン・デュトロ―侯爵令嬢。私、マーカス・デニロンはあなたを心の底からお慕いしております。私はあなただけを唯一、一生愛し続け、大事にし、この気持ちが絶対に変わらないことを誓います。どうか僕があなたの隣に、僕の命が尽きるその時まで添い遂げることをお許しください。」

マーカス様の手から熱が伝わってくる。気が付くと涙が溢れてその手を濡らしていた。

「マーカス様…。心の底では理解していても私はそれを分からないふりをしていたのかもしれません。私のこの胸の高鳴りはマーカス様だけのもの…。私もマーカス様のことを心からお慕い申し上げております。」

そう言い終わった瞬間、マーカス様は私をその逞しい腕ので抱きしめてくれた。

わっ!と歓声が教室中から沸き起こって我に返った私は、やっと自分達が今教室の中だという事を思い出して赤面してしまった。
でも、我関せずといったマーカス様は私を抱きしめたまましばらく離しては下さらなかった。

放課後になって、あの時私が自分の気持ちを語っていた時にマーカス様がタイミングよく戻ってきたのは、マーカス様と私の関係にじれてしまったザッカリー様とバネッサ様によるものだったことが分かった。

何そしてその日の私たちの話は瞬く間に学園中に、そして社交の場へと広まってしまった。

その日、一緒に屋敷に戻ったマーカス様と私は、マーカス様のご両親であるデニロン侯爵夫妻に私たちの婚約の許可を頂く時間を設けてもらった。

許しを乞う私達へ温かなまなざしを向けてくださった侯爵夫妻は、快く私たちの婚約を許可してくださった。
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