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第参章 - 焔魔王は異形の剣と躍る -
023話「ガザニアの剣は眠りから覚めて」
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『高雅高校防衛戦:9』
第23話「ガザニアの剣は眠りから覚めて」
数人と散弾持ちが一人、一人のプロの殺し屋が一人、一瞬にして殺害された。
しかし、冥府の主にかすり傷一つさえ与えられた者はいなかった。
数分もしない内、校舎三階は一人のイレギュラーの手によって奪還された。
とはいえ、これで終わりとは到底言えない。銃撃戦の音は下階にも聴こえたはずだ。いつ敵が上がってきてもおかしくない。銃火器を所有している敵もこの二人が全てではないだろう。
冥府の主が殺し屋の死体のポケットをまさぐると……あった。予備のマガジンが2つ、片方は重いが、片方は怪しいほどに軽く、重さが違う。
(SIGが恋しいな……)
火遁の術の行使がもう一段解禁されていれば、”影”が米軍から供与を受けているSIG320ピストルやMk18ライフルを最高の状態で撃つ事が出来たのだが……火遁術の”限定行使”は現地調達、現地放棄が鉄則のため、使えるのはどこから輸入したかもわからない、コンディションの怪しい弾の少ない拳銃ばっかりで、その事を冥府の主は非常に残念に思う。
いつか暴発で死ぬ日が来ない事ぐらいは願いたい。
そんな事を思いながら、殺し屋から鹵獲したブローニング・ハイパワーのマガジンを交換する。差し込むのは重い方のマガジン。記憶が確かならこのモデルの拳銃の装弾数は13発――――もっとも、弾薬不足で1発ぐらいは数の合わない可能性もあるが。
冥府の主は廊下の安全確認を行うと、間一髪、暴行を加えかけられていた少女――――ではなく、その隣の教室で震えている無傷の少年少女のグループの元へ駆けた。
「おい君たち! まだ動けるな!? 俺は味方だ! 死にたくなければ手伝ってくれ!」
数は全部で7名、それらに向かって冥府の主が呼びかけると、男女は冥府の主の呼びかけに耳を傾けた。
「あの……俺たちどうしたら……」
「男子四人は机を一つずつ階段まで持ってついてこい! 女子三人! 隣の部屋の女の子を助けて、連れていけるようにしなさい!」
「で、でも……」
「まだ死にたく無いよな?」
確認を取ると、生徒たちは返事をしなかったものの、YESと答える自殺志願者が居ない事は明白だった。
「なら、直ちに行動開始!!!」
「はっ、はい……」
冥府の主は、まるで遥か昔に滅びし大日本帝國の士官のようなハキハキとした威厳ある口調で7人の男女に命令を下す。――――するとどうか、それまで死と蹂躙を待つだけであった少年少女たちは体を震わせながらも、遺伝子に刻まれた戦争の記憶を思い出したかのように行動を開始した。
生徒たちに机を運搬させる間、冥府の主は急ぎ足で階段に向かう。
予想通り、銃声を聞きつけた敵が二階から登って来ていた。曲がり角で出くわしたブラッドフィストの悪漢に対し、膝頭を逆方向に踏み折る逆足蹴を見舞うと、胸の近くで拳銃を抱えるようにして構えるHIGHスタンスの射撃姿勢から、至近距離発砲。
心臓を撃ち抜かれ、そのまま床に倒れ込もうとしていた悪漢の胸倉を素早く掴んだ冥府の主はそれを肉の盾にして階段正面に躍り出る。
踊り場に出て来た悪漢二人に向けてダブルタップで射撃を行う。片手での射撃は反動が少々きつかったが、それでも全弾相手の胴体のどこかには当たってくれた。それに続け別の悪漢が登ってこようとするが、冥府の主は肉の盾を階下に向かって蹴り捨てる。
肉の盾を避けきれず激突した悪漢は階段を転げ落ち、頭、肩、腰を強打する。悪漢は激痛に悶えながらも頭を上げようとしたが、そこをダブルタップの射撃が襲い、内一発が悪漢の脳幹を貫く。冥府の主はまた角へと移動し、身を隠しながら銃を構える。
次に登ってきたのは長髪を後ろに結び、サングラスをかけた殺し屋が一人、あろうことかサプレッサー付きのMAC―10短機関銃を持ちだしてきたのだ。
拳銃とは比較にならない瞬間火力を誇る制圧力が三階に向けて発射され、階段角のコンクリートや、三階天井を派手に抉る。サプレッサーでも消しきれない苛烈な9ミリ弾の連射音と共に殺し屋が吼える。
「野郎、ぶっ殺してやらあああああ!!!」
正面に立っていたなら1.5秒で人肉ユッケが完成してしまうほどの凄まじいフルオート射撃であったが、同時にそれは銃の制御の難しさと弾切れまでの速さも意味している。
(フルオートか……勘弁してくれ)
「お国のお願いでこっちは”持ちこみ禁止”なんだ……」
そんなぼやきが銃声に掻き消されながらも、殺し屋の弾が切れる瞬間を冥府の主は決して見逃さず、ブローニング・ハイパワーの三連続射撃が物陰に隠れようとした殺し屋を襲う。
銃弾は計二発、殺し屋の右腕と右足を貫いた。殺し屋が倒れ込み、体を晒せばそれが最期の時、胸に二発、頭に一発を撃ち込むモザンピーク射撃のメソッドによって、殺し屋を確実に地獄へと送り届けた。
「ネカフェの持ち込み禁止じゃあるまいしなあ」
丁度13発を使い切ったブローニング・ハイパワーが弾切れを起こす。冥府の主は壁を背に弾倉を交換し、体の弾倉を放棄する。
「軽いな……」
(何発入っているやら……)
最後のマガジンはどうにも軽くて怪しい、少なく見積もっても三発ぐらいは入っているとは思うがマガジンが妙に軽く、13発フルに入っていない事は確実だ。恐らくは満足に弾薬を調達できなかったか。天晴、日本警察の銃規制の賜物というわけだ。
冥府の主が更なる敵増援に備えていると、ようやく男子生徒四名が机を運んできた。流石にこの環境で顔色は良くなさそうだが、息を荒くしながらなんとかやってくれている。
「あ、あのっ、机運んで来ました……」
「上出来だ。早速、この下に投げといてくれ」
冥府の主は下の階段踊り場を拳銃で指す。
「えっ、でも……」
男子生徒が躊躇をみせた。
「うあぁ……。たすけ……」
階段踊り場では即死に至らなかった悪漢が二人ほど、腹を真っ赤に染めながらも、その手足をピクつかせている。まだ生きている人間の上に机を投げ落とすなど……。
すると、冥府の主は後ろを指差して問うた。
「あれが上まで登って来ると、君たちは一人残らず”ああ”なるが……それでも宜しいか?」
それはバッドエンドの見本市としては余りに生々しく、最悪すぎるサンプルだ。三階の廊下には体から他人の白濁をしたたらせる乱暴に捨てられ呆然とし続ける裸の少女と、四肢を斬り落とされ、両目を見開いたまま死んでいる哀れな男子生徒の姿。
穢れた性の匂いと、血と臓腑の匂いがシェイクされた邪悪の匂いが男子生徒の鼻をつき、吐き気を覚えた男子生徒が嗚咽する。
「うえっ……! ごほっごほっ……!」
「私の言う通りにすれば生存率が格段に上がる。君たちの力が必要なんだ、頼む」
冥府の主は生徒たちを奮い立たせるように言った。
「わっ、わかりました……!」
哀れであると同時に、絶対自分はこうなりたくないと思えるサンプルを目にした男子生徒は、嘔吐を堪えて机を踊り場に投げ捨てた。
「よし、椅子でも机でも、もっと持ってこい。まだ立てる男子生徒が居たらそいつにもやらせろ」
冥府の主は事切れた男子生徒の死体を拾い上げると、それを階段下に投げ捨てて指示を行う。
まずは二階と三階を繋ぐ通常階段にバリケードを構築し、時間を稼ぐと共に挟み撃ちされる事を防ごう。そうすれば目的の少女だけでなく、三階に残った生徒の内の何割かもついでに救えるかもしれない。
その次はどうするか、屋上に隠した武器を取りにいくべきか、体育館に行くべきか……。冥府の主はとりあえず、三階パソコン室に隠した武器の回収と、ついでに動ける生徒がいるかどうかの確認をしに向かった。
◆
その状況から時を少し遡り、その日の京子は一日中胸騒ぎで落ち着かず、家事もそこそこに読書で気を紛らわせていた。広瀬邸の二階の書斎はカスミの実父である巌のもので、カスミが足を踏み入れる事はまずない。書庫には神道や仏教に関する宗教的書物のほか、時代小説や、空手道・柔道・ボクシングなど格闘技の古めかしい技術書などが並んでいる。
意外な事に漫画もあり、「駿河城御前試合」を原作とした時代劇漫画や、中国拳法を題材にした40年ほど昔の少年漫画も置いてあったりする。無論、どちらもカスミには縁遠い絵柄と世界観の漫画だが。
連絡を受けたのは、半日書斎に籠って時代劇漫画を読みふけっていた時だ。その緊急連絡は登下校ルート担当の顕教と、学校担当の無間、着信時間はほぼ同時だった。
エプロンのポケットに入れたスマートフォンが震える。通知内容と添付画像を見ると、そこには敵襲の報せと、大勢の悪漢たちの写った写真があった。
「嘘……本当に……」
京子は全身から血の気が引くような感覚を覚えた。
恐れていた出来事が、今まさに起ころうとしているのだ。
「でもそんな……どうすれば……、カスミちゃん……」
報告を受け、京子は多いにうろたえ漫画本を思わず床に取り落とす。胸の動悸が早まり、心臓と脳が一体化するかのような錯覚も感じる。
一刻を争うべき状況で不安の沼に足を取られた京子であったが、彼女の視界にひとつの写真立ての姿が入った。
写っているのはカスミの父である巌であるが、今よりもずっと若い。彼が腕に抱いている小さな赤子は娘のカスミだ。……こんなにも小さなころから、京子はこの子の面倒を見て来た。そしてあの頃は、もう一人が居た。
巌の隣に立っている美しい女性は、今のカスミに顔立ちがよく似ている。写真に写るこの女性こそがカスミの実母の広瀬 菊華である。台北出身の彼女は結婚後帰化し、名の読みを「きっか」と変え、巌との間に子を設け……そしてある朝、永遠に去った。
これは在りし日の写真、三人の家族を撮影したのは他でもない……京子自身だ。
「菊華ちゃん……私に力を貸して」
京子は机の上の写真に向けて祈りを捧げた。それは科学的には何の合理性もない行為だったが、祈りの儀式は京子の精神を支え、先に去った者たちの加護を信じる信仰は京子に自身を与え、彼女自身が今、何をすべきかを心の内に自然と指し示す。
死者は何も言わない。何も答えてはくれない。
何もしてくれない。
寂しいよと泣いても、背中をさすってくれる事は無い。
しかし、かつて在った人との思い出は、時に残された人に進むべき道を示す。
菊華がまだこの世界に在った時、彼女は京子に託したのだ。夫婦にとって最も大切なものを。言い換えれば、菊華の視る事の無い未来を。
――――短く祈りを捧げ終え、再び目を開いた時にはもう、老女の顔つきは歴戦の戦士のそれに変じていた。号は『銀蘭』、流派より与えられたこの名こそ今の彼女の名乗るべき名であった。
「蛙鳴雨月はここには無い。なにか、別の武器が要るね……」
銀蘭の愛刀である「蛙鳴雨月」はここにはない。だがあるのだ、この家には別の武器が、別の刀が。彼女は写真立ての裏に鍵が隠してあることを知っている。有事の際に備え、以前にこの鍵と、その使い方だけは教わっていた。
小さな鍵を取り出した銀蘭は、書斎の本棚に置かれた「鉄拳チンミ」の全35巻をひっくり返した。ストレス解消のためか? 憂さ晴らしか? いずれも違う。本棚の裏の壁にはネジ止めされた蓋があり、壁と同じ色のそれを親指でずらすせば、そこに鍵穴がある事を知っている。
写真立ての裏の鍵は一致し、捻ると開錠音が鳴った。京子は鍵も差しっぱなしのままに、本棚横の壁を横に引く。
この家に最も長い時間滞在しているカスミでさえ知らない広瀬邸の秘密だ。書斎には見取り図にさえ描かれていない隠し扉があり、その奥には手裏剣類や、博物館に展示するレベルの貴重な刀剣類、古文書などが保管されている。その在り処を知っていた銀蘭も、実際に開けるのはこれが初めての事である。
隠し武器庫には銃火器こそ無かったものの、刀剣類に関しては銀蘭の予想を上回った。
彼女はエプロンを脱ぎ捨てると、棒手裏剣を数本と短刀を一本まず手にする。実際、この短刀だけでもバイクが一台買えてしまう大変な高価な代物だ。
だがこれだけでは足りない、メインウェポンが必要だ。隠し武器庫の壁には一本一本が百万円を余裕で越えるであろう希少刀剣類が飾ってあったが、彼女はその内の一本に強烈に目を惹かれた。
「あらこれ、まさか――――」
それは美しい、と形容するだけでは足りぬ程の神々しい刀だった。一目で国宝級の価値を持つとわかるその一振りは夕日に輝く勲章菊(ガザニア)のように、美しい橙と金の装飾を身に着けている。
それは通常の日本刀よりも長く大きな刀だった。銀蘭は、この刀を知っている。もう10年以上前、他流派と合同の演武大会でこの刀を視たことがある。
「牛車切」と呼ばれていた刀だった。酒の席でこの刀について聞かされた記憶がある。記憶が確かなら製作時期は寛永……つまり江戸時代の前期の作。
「あらあらこれ、牛車切じゃないの……。博物館に寄付したと思ってたけど、ここに隠してたなんて……」
昭和後期に打たれた蛙鳴雨月も屈指の名刀である自負を持ってはいるが、この刀は歴史の重みがまず違う。
言い伝えによれば1637年、「島原の乱」の際、怪力無双で知られる示現流の剣豪によって用いられたとされる伝説の刀で、その威力たるや古くなった牛車を試し斬りで両断するほどだったと云う。嘘か真かは別として、そういった伝説に相応しい逸話の残っている一本であり、本来なら博物館に永遠に収蔵するような代物。果たしてその価値は? 一千万円? 一億円? いいや、それでも買えない。歴史的価値が高すぎて、これに関しては値段さえつけられない。
「不足は無し。でもこれ、使いこなせるかしら……」
伝説では筋骨隆々の男が振るった刀とされており、現在の所有者である広瀬 巌こと巌山も、それに近い体格の持ち主である。
刀の長さ・重さも通常の日本刀以上であり、「大太刀」にカテゴライズされるような代物。――――それらと比べて、銀蘭はあまりに華奢。
「いえ……これにしましょう。これにすべきだわ」
だが銀蘭はこの刀に固執した。この時彼女は牛車切の鞘の美しい紋章菊色の装飾の中に、今は亡きカスミの母の影を感じたからだ。……きっと巌も同じように感じて、手放すことが出来なかったのだろう、銀蘭は直感的に、そう感じた。
書斎を漁り終え、武装を終えた銀蘭が書斎の隠し武器庫もそのままに部屋を出て来た時、彼女はフルフェイスの仮面によって顔全体を覆い隠しており、その表情は既に読めなくなっていた。だがその佇まいにはもう、一抹の心の揺らぎさえない。
広瀬邸を出た銀蘭は玄関の鍵を閉め――――向かった先は駐車場。この間リコール騒ぎのあったばかりのT社の車を無視して、その隣にあるビークルに鍵を差し込んだ。ちょっとした外出が必要な時、巌のバイクの鍵は日常的に借りているのだ。ブラックカラーの普通二輪車は、国内バイクメーカーKサキ社の……。
「安直な人よねえ」
銀蘭は呟くと、大太刀を紐で背中に結び付けた格好でバイクを発進させる。
「待ってて。私が必ず迎えに行く――――」
高校はバイクで飛ばせば最短15分、顕教との合流の手間を足しても決して遠くはない。大丈夫、無間はたった一人でも必ず持ち堪えてくれる。彼の実力は今や銀蘭を上回り、巌山に迫るほどのものなのだから。
まずは顕教と連絡を取り、合流。それから――――。
老女は友人の忘れ形見と誓い。そして責任のためにバイクを走らせた。
天は老女に「生きる理由」を多く与えすぎてしまった。
姓を卜部 名を京子。与えられた号を「銀蘭」。
多くの競技格闘家が体力の衰えを理由に40までには現役を退く所、齢61の身にして彼女は未だ一線を退き、朽ちる事を許されない。
第23話「ガザニアの剣は眠りから覚めて」
数人と散弾持ちが一人、一人のプロの殺し屋が一人、一瞬にして殺害された。
しかし、冥府の主にかすり傷一つさえ与えられた者はいなかった。
数分もしない内、校舎三階は一人のイレギュラーの手によって奪還された。
とはいえ、これで終わりとは到底言えない。銃撃戦の音は下階にも聴こえたはずだ。いつ敵が上がってきてもおかしくない。銃火器を所有している敵もこの二人が全てではないだろう。
冥府の主が殺し屋の死体のポケットをまさぐると……あった。予備のマガジンが2つ、片方は重いが、片方は怪しいほどに軽く、重さが違う。
(SIGが恋しいな……)
火遁の術の行使がもう一段解禁されていれば、”影”が米軍から供与を受けているSIG320ピストルやMk18ライフルを最高の状態で撃つ事が出来たのだが……火遁術の”限定行使”は現地調達、現地放棄が鉄則のため、使えるのはどこから輸入したかもわからない、コンディションの怪しい弾の少ない拳銃ばっかりで、その事を冥府の主は非常に残念に思う。
いつか暴発で死ぬ日が来ない事ぐらいは願いたい。
そんな事を思いながら、殺し屋から鹵獲したブローニング・ハイパワーのマガジンを交換する。差し込むのは重い方のマガジン。記憶が確かならこのモデルの拳銃の装弾数は13発――――もっとも、弾薬不足で1発ぐらいは数の合わない可能性もあるが。
冥府の主は廊下の安全確認を行うと、間一髪、暴行を加えかけられていた少女――――ではなく、その隣の教室で震えている無傷の少年少女のグループの元へ駆けた。
「おい君たち! まだ動けるな!? 俺は味方だ! 死にたくなければ手伝ってくれ!」
数は全部で7名、それらに向かって冥府の主が呼びかけると、男女は冥府の主の呼びかけに耳を傾けた。
「あの……俺たちどうしたら……」
「男子四人は机を一つずつ階段まで持ってついてこい! 女子三人! 隣の部屋の女の子を助けて、連れていけるようにしなさい!」
「で、でも……」
「まだ死にたく無いよな?」
確認を取ると、生徒たちは返事をしなかったものの、YESと答える自殺志願者が居ない事は明白だった。
「なら、直ちに行動開始!!!」
「はっ、はい……」
冥府の主は、まるで遥か昔に滅びし大日本帝國の士官のようなハキハキとした威厳ある口調で7人の男女に命令を下す。――――するとどうか、それまで死と蹂躙を待つだけであった少年少女たちは体を震わせながらも、遺伝子に刻まれた戦争の記憶を思い出したかのように行動を開始した。
生徒たちに机を運搬させる間、冥府の主は急ぎ足で階段に向かう。
予想通り、銃声を聞きつけた敵が二階から登って来ていた。曲がり角で出くわしたブラッドフィストの悪漢に対し、膝頭を逆方向に踏み折る逆足蹴を見舞うと、胸の近くで拳銃を抱えるようにして構えるHIGHスタンスの射撃姿勢から、至近距離発砲。
心臓を撃ち抜かれ、そのまま床に倒れ込もうとしていた悪漢の胸倉を素早く掴んだ冥府の主はそれを肉の盾にして階段正面に躍り出る。
踊り場に出て来た悪漢二人に向けてダブルタップで射撃を行う。片手での射撃は反動が少々きつかったが、それでも全弾相手の胴体のどこかには当たってくれた。それに続け別の悪漢が登ってこようとするが、冥府の主は肉の盾を階下に向かって蹴り捨てる。
肉の盾を避けきれず激突した悪漢は階段を転げ落ち、頭、肩、腰を強打する。悪漢は激痛に悶えながらも頭を上げようとしたが、そこをダブルタップの射撃が襲い、内一発が悪漢の脳幹を貫く。冥府の主はまた角へと移動し、身を隠しながら銃を構える。
次に登ってきたのは長髪を後ろに結び、サングラスをかけた殺し屋が一人、あろうことかサプレッサー付きのMAC―10短機関銃を持ちだしてきたのだ。
拳銃とは比較にならない瞬間火力を誇る制圧力が三階に向けて発射され、階段角のコンクリートや、三階天井を派手に抉る。サプレッサーでも消しきれない苛烈な9ミリ弾の連射音と共に殺し屋が吼える。
「野郎、ぶっ殺してやらあああああ!!!」
正面に立っていたなら1.5秒で人肉ユッケが完成してしまうほどの凄まじいフルオート射撃であったが、同時にそれは銃の制御の難しさと弾切れまでの速さも意味している。
(フルオートか……勘弁してくれ)
「お国のお願いでこっちは”持ちこみ禁止”なんだ……」
そんなぼやきが銃声に掻き消されながらも、殺し屋の弾が切れる瞬間を冥府の主は決して見逃さず、ブローニング・ハイパワーの三連続射撃が物陰に隠れようとした殺し屋を襲う。
銃弾は計二発、殺し屋の右腕と右足を貫いた。殺し屋が倒れ込み、体を晒せばそれが最期の時、胸に二発、頭に一発を撃ち込むモザンピーク射撃のメソッドによって、殺し屋を確実に地獄へと送り届けた。
「ネカフェの持ち込み禁止じゃあるまいしなあ」
丁度13発を使い切ったブローニング・ハイパワーが弾切れを起こす。冥府の主は壁を背に弾倉を交換し、体の弾倉を放棄する。
「軽いな……」
(何発入っているやら……)
最後のマガジンはどうにも軽くて怪しい、少なく見積もっても三発ぐらいは入っているとは思うがマガジンが妙に軽く、13発フルに入っていない事は確実だ。恐らくは満足に弾薬を調達できなかったか。天晴、日本警察の銃規制の賜物というわけだ。
冥府の主が更なる敵増援に備えていると、ようやく男子生徒四名が机を運んできた。流石にこの環境で顔色は良くなさそうだが、息を荒くしながらなんとかやってくれている。
「あ、あのっ、机運んで来ました……」
「上出来だ。早速、この下に投げといてくれ」
冥府の主は下の階段踊り場を拳銃で指す。
「えっ、でも……」
男子生徒が躊躇をみせた。
「うあぁ……。たすけ……」
階段踊り場では即死に至らなかった悪漢が二人ほど、腹を真っ赤に染めながらも、その手足をピクつかせている。まだ生きている人間の上に机を投げ落とすなど……。
すると、冥府の主は後ろを指差して問うた。
「あれが上まで登って来ると、君たちは一人残らず”ああ”なるが……それでも宜しいか?」
それはバッドエンドの見本市としては余りに生々しく、最悪すぎるサンプルだ。三階の廊下には体から他人の白濁をしたたらせる乱暴に捨てられ呆然とし続ける裸の少女と、四肢を斬り落とされ、両目を見開いたまま死んでいる哀れな男子生徒の姿。
穢れた性の匂いと、血と臓腑の匂いがシェイクされた邪悪の匂いが男子生徒の鼻をつき、吐き気を覚えた男子生徒が嗚咽する。
「うえっ……! ごほっごほっ……!」
「私の言う通りにすれば生存率が格段に上がる。君たちの力が必要なんだ、頼む」
冥府の主は生徒たちを奮い立たせるように言った。
「わっ、わかりました……!」
哀れであると同時に、絶対自分はこうなりたくないと思えるサンプルを目にした男子生徒は、嘔吐を堪えて机を踊り場に投げ捨てた。
「よし、椅子でも机でも、もっと持ってこい。まだ立てる男子生徒が居たらそいつにもやらせろ」
冥府の主は事切れた男子生徒の死体を拾い上げると、それを階段下に投げ捨てて指示を行う。
まずは二階と三階を繋ぐ通常階段にバリケードを構築し、時間を稼ぐと共に挟み撃ちされる事を防ごう。そうすれば目的の少女だけでなく、三階に残った生徒の内の何割かもついでに救えるかもしれない。
その次はどうするか、屋上に隠した武器を取りにいくべきか、体育館に行くべきか……。冥府の主はとりあえず、三階パソコン室に隠した武器の回収と、ついでに動ける生徒がいるかどうかの確認をしに向かった。
◆
その状況から時を少し遡り、その日の京子は一日中胸騒ぎで落ち着かず、家事もそこそこに読書で気を紛らわせていた。広瀬邸の二階の書斎はカスミの実父である巌のもので、カスミが足を踏み入れる事はまずない。書庫には神道や仏教に関する宗教的書物のほか、時代小説や、空手道・柔道・ボクシングなど格闘技の古めかしい技術書などが並んでいる。
意外な事に漫画もあり、「駿河城御前試合」を原作とした時代劇漫画や、中国拳法を題材にした40年ほど昔の少年漫画も置いてあったりする。無論、どちらもカスミには縁遠い絵柄と世界観の漫画だが。
連絡を受けたのは、半日書斎に籠って時代劇漫画を読みふけっていた時だ。その緊急連絡は登下校ルート担当の顕教と、学校担当の無間、着信時間はほぼ同時だった。
エプロンのポケットに入れたスマートフォンが震える。通知内容と添付画像を見ると、そこには敵襲の報せと、大勢の悪漢たちの写った写真があった。
「嘘……本当に……」
京子は全身から血の気が引くような感覚を覚えた。
恐れていた出来事が、今まさに起ころうとしているのだ。
「でもそんな……どうすれば……、カスミちゃん……」
報告を受け、京子は多いにうろたえ漫画本を思わず床に取り落とす。胸の動悸が早まり、心臓と脳が一体化するかのような錯覚も感じる。
一刻を争うべき状況で不安の沼に足を取られた京子であったが、彼女の視界にひとつの写真立ての姿が入った。
写っているのはカスミの父である巌であるが、今よりもずっと若い。彼が腕に抱いている小さな赤子は娘のカスミだ。……こんなにも小さなころから、京子はこの子の面倒を見て来た。そしてあの頃は、もう一人が居た。
巌の隣に立っている美しい女性は、今のカスミに顔立ちがよく似ている。写真に写るこの女性こそがカスミの実母の広瀬 菊華である。台北出身の彼女は結婚後帰化し、名の読みを「きっか」と変え、巌との間に子を設け……そしてある朝、永遠に去った。
これは在りし日の写真、三人の家族を撮影したのは他でもない……京子自身だ。
「菊華ちゃん……私に力を貸して」
京子は机の上の写真に向けて祈りを捧げた。それは科学的には何の合理性もない行為だったが、祈りの儀式は京子の精神を支え、先に去った者たちの加護を信じる信仰は京子に自身を与え、彼女自身が今、何をすべきかを心の内に自然と指し示す。
死者は何も言わない。何も答えてはくれない。
何もしてくれない。
寂しいよと泣いても、背中をさすってくれる事は無い。
しかし、かつて在った人との思い出は、時に残された人に進むべき道を示す。
菊華がまだこの世界に在った時、彼女は京子に託したのだ。夫婦にとって最も大切なものを。言い換えれば、菊華の視る事の無い未来を。
――――短く祈りを捧げ終え、再び目を開いた時にはもう、老女の顔つきは歴戦の戦士のそれに変じていた。号は『銀蘭』、流派より与えられたこの名こそ今の彼女の名乗るべき名であった。
「蛙鳴雨月はここには無い。なにか、別の武器が要るね……」
銀蘭の愛刀である「蛙鳴雨月」はここにはない。だがあるのだ、この家には別の武器が、別の刀が。彼女は写真立ての裏に鍵が隠してあることを知っている。有事の際に備え、以前にこの鍵と、その使い方だけは教わっていた。
小さな鍵を取り出した銀蘭は、書斎の本棚に置かれた「鉄拳チンミ」の全35巻をひっくり返した。ストレス解消のためか? 憂さ晴らしか? いずれも違う。本棚の裏の壁にはネジ止めされた蓋があり、壁と同じ色のそれを親指でずらすせば、そこに鍵穴がある事を知っている。
写真立ての裏の鍵は一致し、捻ると開錠音が鳴った。京子は鍵も差しっぱなしのままに、本棚横の壁を横に引く。
この家に最も長い時間滞在しているカスミでさえ知らない広瀬邸の秘密だ。書斎には見取り図にさえ描かれていない隠し扉があり、その奥には手裏剣類や、博物館に展示するレベルの貴重な刀剣類、古文書などが保管されている。その在り処を知っていた銀蘭も、実際に開けるのはこれが初めての事である。
隠し武器庫には銃火器こそ無かったものの、刀剣類に関しては銀蘭の予想を上回った。
彼女はエプロンを脱ぎ捨てると、棒手裏剣を数本と短刀を一本まず手にする。実際、この短刀だけでもバイクが一台買えてしまう大変な高価な代物だ。
だがこれだけでは足りない、メインウェポンが必要だ。隠し武器庫の壁には一本一本が百万円を余裕で越えるであろう希少刀剣類が飾ってあったが、彼女はその内の一本に強烈に目を惹かれた。
「あらこれ、まさか――――」
それは美しい、と形容するだけでは足りぬ程の神々しい刀だった。一目で国宝級の価値を持つとわかるその一振りは夕日に輝く勲章菊(ガザニア)のように、美しい橙と金の装飾を身に着けている。
それは通常の日本刀よりも長く大きな刀だった。銀蘭は、この刀を知っている。もう10年以上前、他流派と合同の演武大会でこの刀を視たことがある。
「牛車切」と呼ばれていた刀だった。酒の席でこの刀について聞かされた記憶がある。記憶が確かなら製作時期は寛永……つまり江戸時代の前期の作。
「あらあらこれ、牛車切じゃないの……。博物館に寄付したと思ってたけど、ここに隠してたなんて……」
昭和後期に打たれた蛙鳴雨月も屈指の名刀である自負を持ってはいるが、この刀は歴史の重みがまず違う。
言い伝えによれば1637年、「島原の乱」の際、怪力無双で知られる示現流の剣豪によって用いられたとされる伝説の刀で、その威力たるや古くなった牛車を試し斬りで両断するほどだったと云う。嘘か真かは別として、そういった伝説に相応しい逸話の残っている一本であり、本来なら博物館に永遠に収蔵するような代物。果たしてその価値は? 一千万円? 一億円? いいや、それでも買えない。歴史的価値が高すぎて、これに関しては値段さえつけられない。
「不足は無し。でもこれ、使いこなせるかしら……」
伝説では筋骨隆々の男が振るった刀とされており、現在の所有者である広瀬 巌こと巌山も、それに近い体格の持ち主である。
刀の長さ・重さも通常の日本刀以上であり、「大太刀」にカテゴライズされるような代物。――――それらと比べて、銀蘭はあまりに華奢。
「いえ……これにしましょう。これにすべきだわ」
だが銀蘭はこの刀に固執した。この時彼女は牛車切の鞘の美しい紋章菊色の装飾の中に、今は亡きカスミの母の影を感じたからだ。……きっと巌も同じように感じて、手放すことが出来なかったのだろう、銀蘭は直感的に、そう感じた。
書斎を漁り終え、武装を終えた銀蘭が書斎の隠し武器庫もそのままに部屋を出て来た時、彼女はフルフェイスの仮面によって顔全体を覆い隠しており、その表情は既に読めなくなっていた。だがその佇まいにはもう、一抹の心の揺らぎさえない。
広瀬邸を出た銀蘭は玄関の鍵を閉め――――向かった先は駐車場。この間リコール騒ぎのあったばかりのT社の車を無視して、その隣にあるビークルに鍵を差し込んだ。ちょっとした外出が必要な時、巌のバイクの鍵は日常的に借りているのだ。ブラックカラーの普通二輪車は、国内バイクメーカーKサキ社の……。
「安直な人よねえ」
銀蘭は呟くと、大太刀を紐で背中に結び付けた格好でバイクを発進させる。
「待ってて。私が必ず迎えに行く――――」
高校はバイクで飛ばせば最短15分、顕教との合流の手間を足しても決して遠くはない。大丈夫、無間はたった一人でも必ず持ち堪えてくれる。彼の実力は今や銀蘭を上回り、巌山に迫るほどのものなのだから。
まずは顕教と連絡を取り、合流。それから――――。
老女は友人の忘れ形見と誓い。そして責任のためにバイクを走らせた。
天は老女に「生きる理由」を多く与えすぎてしまった。
姓を卜部 名を京子。与えられた号を「銀蘭」。
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