幼馴染の息子に転生した俺は人生を復讐に捧げます。

西脇 るい

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留守番戦争

第一章:1話 『ゼロからのリスタート』

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 暗い…
 暗い暗い…
 暗い暗い暗い…
 誰か… …いないの…?
 ここ…どこ…?
 俺は……僕は………

 
 ―――――温かい――――――


 ==========================
 
 死というのは温度を失い、逆に生というのは温度を受け取る。
 それは当たり前のことだ。
 生き物には体温があるから。
 しかし、それだけではないはずだ。
 あくまで持論だが俺はそう思っている。
 他人から与えられる温もり、希望、夢、生きがい…綺麗事に思えるだろう?俺は人生の大半はこれを信じてきた。
 でも、現実は違ったんだ…。
 裏切られ、取られて、失った。
 そんな時、全ての温もりを失った。
 全てか冷たく、暗く、無になった―――




 ―――長い夢を見ていたかのようだった。
 暗く冷たい無が温もりを持ち、光を持ち、一つの有となり生となった…

「オギャーーー!オギャーー!」

 神様の遊戯が始まる……


 =========================

「(あれ?ここって……ベッド?ああそうか、俺って馬車に跳ねられて…。)」

 彼の目覚めはいたって冷静だった。
 
「(うーん、体が思うように動かないな……。)」

 手足を動かそうとするが、繊細な動きは一切出来なかった。
 すべての動作が大雑把。
 出来ることといえば、足を動かすか腕を振るぐらいだ。

「こらこらだめでしょー、そんなに暴れたら。」

 聞き覚えのある声だった。
 寝ている彼の上にその人の頭が映る。

「―――っ!!!???」

 そこにいたのは彼―イオン・リベリオルの幼馴染のユーナ・アルカディアルだった。

「(何だ何だ!?何でユーナがここに?)」

 ユーナはイオン?の体を少し持ち上げて体勢を直して再びベッドにゆっくりとおいた。

「(えっ!今、持ち上げられた?俺が?……てか、俺の体ぁ…小さくね?)」

 そう。
 今、イオン?の体は…

「(なんで俺…赤ちゃんになってんの?)」

 
 
 ==================

 「(馬車にはねられ病院へ。奇跡的に一命を取り留めた……んじゃなくて、これはあれか…転生か…。)」

 イオン…もとい、アレス・フィリップスはこんな状況にも冷静に判断していた。
 しかし、混乱している部分もある。
 親がユーナであることだ。 
 死ぬ直前、裏切られたことにどれほど憎んだか、どれほど悲しんだか。
 ユーナはそれを知らない。
 ましてや、イオン・リベリオルという男が事故死した事を知っているのかすらわからない。

「(でも、よりにもよってなんでユーナの子供に転生するんだよ…。)」

 頭をかきむしろうとしたが、やはり手は器用に動いてくれなかった。

「(考えても仕方ないな…、ってか腹減ったなぁ~。そういえば、母さんの夜飯食う前に事故ったから食ってないんだ…。)」

 そんなことを考えていると、ドアが開く音がした。
 そこにいたのはユーナだった。

「(ユーナ、何しに来わっっ!?)」

 アレスはまたしても軽々と持ち上げられる。

「よしよ~し、いい子いい子~。」

「(ちょっ、待って、おいおいおいおいおいおい、むほっ!)」

 そしてそのままユーナの胸の中に抱き寄せられた。

「(あぁ~、こいつの胸ってこんなにでかくて柔らかかったのかぁ~。)」

 そんな幸せな時間もつかの間、数秒後にベッドに戻された。
 だが、今回はこれだけではなかった。

「そろそろお腹すいた頃かな…」

「(うん、減った。)」

 言葉が話せないアレスは、代わりに身振りで示そうとするがよく伝わらなかった。

「(赤ちゃんが腹減った時って確か…)」

 その後、すぐさまアレスは泣いた。
 いや、泣き真似だ。それも赤ちゃんの。
 その完璧な泣き真似が上手くいき、アレスはご飯をもらえることになった。

「(ん…あれ?赤ちゃんのご飯って…)」

 気づくのが遅かったようだ。

「さあ、おいで~。」


 ――――あっ――――――


 ――――しまった―――――


 =================

 ご飯(ユーナの母乳)を飲み終えたアレスはげっぷをした後、眠たくなってきたので寝ることにした。
 
「(うう~、しばらくユーナの顔を直視できない……ていうか、これからアレが毎日何回も続くのか…。)」

 後悔というか罪悪感というか、何かいけないことをしてしまったような感情に押しつぶされたアレスは、そのまま闇に意識を移すことにした。

 このときアレスは0歳である。

 ==================

 それからは何事もなくアレスの人生の時計は時を刻んでいった。

 事が起こったのはアレスが1歳3ヶ月の頃である。
 アレスはこれまであまりしゃべらないようにしてきたが、ユーナに抱っこされながら廊下を渡っていたとき、メイドの1人が花瓶を落としたことで事件は起きた。

「ガッシャーーンっ!!」

「うわっ!びっくりした~…。」

 その声の主はアレスであった。
 しばらくの間静寂が場を包み込んだ。
 アレス自身も『イオン』としての声は覚えているが、『アレス』としての声は聞きなれていなかったせいか自分でもわからなかった。
 しかし、この場に1人、アレスよりも驚いている人がいる。
 母ユーナだ。
 ユーナはまったくしゃべらなかった息子がようやくしゃべったことと、その第一声が「うわ、びっくりした」であったことに驚いていた。
 花瓶が割れたことなどもうどうでもいいのだろう。
 
「(しまったー。もうはっきり言葉がしゃべれる頃だったーーー!!聞かれたか?アウトか!?セーフか!?)」

「今、この子しゃべった…よね…。」

「しゃっ、しゃべりましたね…。」

「確かにしゃべったな…。」

 いつの間にか、そこにはすぐ近くの部屋から出てきていた父―グラン・フィリップスの姿があった。

「(メイド、母、父のトリプルプレー!!!スリーアウトチェーーンジ!)」

 補足:この世界にも野球のようなものがある。(どこからか来た旅人が広めたとか何とか…)




 ――もっと気をつけて生きていこう…――



 ―――と思っていたが、またやらかすのがイオン・リベリオルの人格だ。

    

    アレス3歳
 
 父の書斎に入って何か面白い本がないか探していた。
 アレスは元はイオンであるため、子供向けの本や童話などは読む気にもならない。
 なので、イオンが魔術学園にいたときに興味を持っていた魔術理論の本を読もうとしていた。
 父も貴族なので、幸いそういう本をたくさん持っていた。
 
「すげ~!何から……うしっ!これにするかな。」

 アレスはまだ身長も筋力もないため、一番下の本棚にあった本を取り出した。
 その本には、ここ最近判明した理論が記されていた。
 本の虫と化したアレスはそれに齧り付き、よくかみ締め、吸収した。
 すると、

「何してるの?」

 そう言って後ろから覗き込んできたのは母ユーナだ。

「(や☆ば☆い!!またやらかした!どうしようどうしようこのパターンって…)」

「すごいじゃないアレス!こんな難しい本がわかるの!?」

 

 ―――ほら始まった―――


 
 今もこんな調子の日常は続いている。
 
 



 ――イオン・リベリオル……もう少し待ってて――

 ――アレス・フィリップスが真相をあばいてみせるから…――


 その言葉には負の感情が一切含まれていなかった。
 むしろこのとき、ユーナの結婚相手が尊敬できる良い人であったため、前世の恨みや悲しみが薄れていた。
 
  ――――が―――――

 そんな平和ボケした殺意を逆流させるのは、もう少し先の話になる。



 

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