幼馴染の息子に転生した俺は人生を復讐に捧げます。

西脇 るい

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留守番戦争

第一章:3話 『突発的災禍』

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 終わりかけの入学式におきた悲劇、その序章。
 そのプロローグだけに何人の命を犠牲にしたのか。
 十、二十は軽く超えている。
 それだけではない。犠牲になったのは全員親。
 つまり、今後精神的にダメージを受けるのは、その子供たちだ。
 そんな子供たちは逃げ惑う、泣く、叫ぶ、震える。
 それはこの場で子供たちに与えられた権利。

 そして、

 あの声は聞こえた、響いた。


 
 ―――僕たちはちょっと人を探していてね~―――


 ===================

「『はい』しかないじゃないか…。何が目的で……ああ、『人探し』か…。」

 その言葉には冷静さに塗りつぶされた怒りがあった。
 静かな怒りは本物の怒りだ。
 普段おとなしい子と『殺す』を口癖にしている子では、殺意の蓄積量が違う。
 そして、やさしい愚者は『自殺』を選択し、冷たい賢者は『逃亡』を選ぶ。
 だが、どちらにも当てはまらない怒り、殺意。

「「きゃぁぁァァーーーー!!!」」

 子供たちの悲鳴は続く中、感じ取る。
 絶望に、苦しみに、悲しさに、辛さに、恐怖に、耐えられない、潰れる、壊れる、倒れる、失う、奪われる―――

 
   ――――殺される…と――――
 
 



 パニック状態は続く。
 まだ小学1年生になる前の儚い存在たち。
 手を繋いでくれたり笑いかけてくれたりしてくれる親は、今は見守ることしかできない。
 それでも子供は叫ぶしかないから叫ぶ。必死で。
 
「黙れ~。」

 その男は静かに叫ぶ。
 つぶやいたはずなのにその効力は絶大。
 恐怖に支配された子供たちが一気に熱気と狂気を奪われる。

「もう一度いいます。僕たちの目的は人探し。その人を差し出してくれるなら僕たちはここから手を引こう。だから協力してくないかなぁ~。」

「い…いったい、誰を捜している…んですか?」

 そういって聞き返すのはこの学園の教師だ。
 あまり黒フルフェイスを刺激しないように対話する。
 しかし、その目的は別にあった。
 黒フルフェイスの死角、背後。
 そこには見覚えのある教師が腰を低くし、突撃の構えをしていた。

「(あれって確か実技のウォーレン先生じゃないか……まだやってたのか…。)」

 イオンが高校生のときに魔術実技を担当していたウォーレン・ストンレッシャーだった。
 白髪交じりの黒髪中年の男は魔術のことに詳しく、学園の魔術士の中でもトップクラスで魔法も使える今でも学園の誇りだ。
 
「う~ん、そうだね。言っていいのかなぁ~。」

 わざとらしく焦らしてくる黒フルフェイスはどこか楽しげに見えた。
 しかし、その背後には殺意がよって来ている。
 
「なら、いいます!えーーーーーっと、ユーナさんはいますかなぁ?ユーナ・フィリップスさーん!」

 アレスの母―ユーナを捜しているという黒フルフェイスはピエロのような大げさに手や足を動かす。
 間抜けな口調でも、その一言一句には極小の油断などは感じられない。
 力を持っている者が持っていない者の前に立つ場合、相手を過小評価し油断するのは当たり前なのだ。
 心ではなめていなかったとしても、その奥底にあるのは油断。
 だが、この男はそれがない。
 だからこそ恐ろしい。

「これ以上待つことになったら壊しちゃおっかな~。………この建物………っ。」

 これ以上にない狂気と殺意。 
 最後の言葉には重みがあった。

 その刹那。

「はっ!」

 ウォーレンが黒フルフェイスの拘束、無力化を実行するために黒フルフェイスに向けて『バインド』という魔術を発動させる。『バインド』:魔力で生成された縄で対象者を縛り上げる魔術。他の魔術と組み合わせることで縛り上げた相手の魔術の構築と発動を妨害することが出来る。

「…っ!」

 しかし、黒フルフェイスは一回も後ろを見るそぶりをしなかったにもかかわらず、完璧なタイミングで『バインド』をよける。そして、一言も言う間も与えず反撃する。
 
 一瞬でウォーレンの背後を取る。ウォーレンも背後の殺気に反応し距離を取ろうとするが動けない。なぜならば、紫紅の光でできたような縄が両足を縛りつけていたからだ。

「野郎…いつの間に俺の足に『バインド』をっ!」

 黒フルフェイスは両手を強く握り締め、その拳の人差し指側どうしを合わせる。そして、ゆっくりと真横にその手を広げると、手と手の間から血のように赤黒い光とも闇とも表すことのできる外観をした劔を作り出した。

 黒フルフェイスがその禍々しい劔を振る…直前に左前方から野球ボールほどの大きさの氷の結晶6つが黒フルフェイスに襲いかかる。学園の教師による足掻き、もがき。しかし、その全てご赤黒い劔によって砕かれる。

「喰らいやがれ!」

 ウォーレンがその隙に術式を完成させる。だが、攻撃魔術を発動させようと右手を黒フルフェイスに向けた瞬間、破壊される。腕や手でなく術式が。

「何…が……っ!?」

 一瞬遅れて理解する。ウォーレンの足にかけられている『バインド』には術式破壊スキルが追加付与されていた。それによって無効化されたのだ。
 
 そして、次の攻撃を許す間も無くウォーレンの命は、頭と体の切断と同時にその劔に喰われた。首から吹き出す赤い液体の噴水は綺麗だった。そんな考えが出る時点ですでに狂っているのかもしれないが…。

 再び訪れる悲鳴やどよめき、号泣の嵐。逃げようにも逃げられない親。逃げることと叫び、泣く事しかできない子。子の少数はこの場の恐怖に耐えられず会場から去っていった。おそらく入学式に親が参加していなかったんだろう。その他の逃げ惑う子供達は親元に向かおうとしているが子供と親の席の境界で障壁のようなものが行く手を阻んでいた。


==========================


「―――――――……。」

「――――――――――――――…………。」

「――――――――――――――――――――――………………。」

 その後、黒フルフェイスはずっと沈黙を維持し、待ち続けた。教師側もこれ以上犠牲が出ないように細心の注意を払っている。黒フルフェイスを刺激せず、客席に蔓延る敵を殲滅する事に集中していた。しかし、簡単に手を出すことができなかった。

 教師側は貴族の親が人質に取られていること、さらに、高い魔力を秘めている貴族が反撃しないということから、客席にも何らかの細工が施されていると考えたからだ。
 
「(あれだけ言っておいて、律儀なやつだな…。)」

 何分経っただろうか。
 ざわついていた会場は少しだけ落ち着いてきている。というよりも、恐怖で声が出ないのかもしれない。
 そんな中、
 
「わっ……私が……私がユーナです。」

 一人の金髪の女性が立ち上がる。
 そのとき、全員の注目がその女性―ユーナに集まる。
 そして、それを逃さない人が“2人”いた。
 
「――――っ!」

「――――…。」

 その2人はすぐに立ち上がり、1番近い扉を目指す。
 一人はアレス、もう一人は


  ドォォぉぉーーーーーン!!

 
 そのとき、爆発まではいかない鈍い音が会場全体にどっしり響く。これによって子供達は3度目の混乱に襲われ、立ち上がり逃げる者、叫ぶ者、泣く者、慌てふためく者が溢れた。
 
「何がっ!?くっ!」

 振り返って見てみれば、さっきまで会場の中心にいた黒フルフェイスがいないのだ。
 あたりをよく見てみるとそいつは、アレスが今1番駆け寄って守りに行かなければならない人物―ユーナの目と鼻の先にいた。

「あの野郎ォ!」

 パニック状態の子供達に紛れてアレスは今一度扉に向けて走り出した。
 


 


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