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留守番戦争
第一章:4話 『圧倒的才華』
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急げ…
いそげ…
イソゲ…
まだ、『あのこと』の真相を知らない。
それを知るまでは死ぬわけにも死なせるわけにもいかない。無論連れ去られることも。
『あのこと』を知るということはそれだけの意味がある。
俺がこの世界に再び生まれてきたことには、そういう理由があると思っている。
それとも、もっと別の何かなのか……
=====================
「(あの男は『捜している』と言ったんだ…。だったら、ユーナをすぐには殺さないはず。利用価値があるからさらう、それが目的。ならまだ間に合う。)」
すべての扉につながっている通路に出て、そのまま侵入者たちが来た方向の扉に向かう。道中、客席から逃げてきたが、途中で足が竦んでうずくまる子がいた。
「何やってんだ、早く逃げろ!」
小声で強く言ったが、「お父様…お母様…」と何度も繰り返し呟くだけで反応はなかった。アレスは敵の撃退を優先し、早く恐怖から解放することも決意し走り出す。
扉まではあと少しというところまで来た。
しかし、やはりそこにも見張りの者がいた。
数は席の近くを徘徊している侵入者の数よりも少ない。
「これならいけるか…。」
そして、何かの魔術の呪文を聞こえるか聞こえないか程度の声で唱え、アレスはそのまま正面から突っ込んだ。
「何だこのガキ!止まれ!どっから入ってきた!?」
「馬鹿野郎っ!座席から逃げてきたんだろう。命令なんだ、さっさと殺すぞ!」
「おいっ、待っ!!」
アレスに向かって魔法を打ち込むために詠唱する。
そして雷、炎、水、さまざまな属性の魔法が順番に打ち込まれた。
しかし、そんなものは…
「きかねぇんだよォ!!」
アレスは避ける素振りも魔法、魔術での反撃もしなかった。
ただただ受ける。それは異常、不気味。だがこれでいい。
「何なんだあのガキ!効いてないぞ!?」
「もっと打ち込っ…!?」
すでに手遅れ。
一人目の懐に入って思いっきり腹部を蹴り飛ばす。
吹っ飛んだ人がその後ろにいる侵入者にぶつかる。
この時点で、すでにアレスがこの戦場を支配したことになっている。
先ほどのアレスの異常さによって侵入者たちは戦場で恐怖を知ってしまった。
それは、死ぬことへの恐怖ではなくアレスに対する恐怖。絶対的な力がそこにあるが故の絶望。
そうなってしまっては戦えない。
だが、
「このガキの分際でぇぇぇぇぇェェェーーー!!!!」
やけになって無意味に反撃を仕掛けてくるものもいる。
いや、この侵入者たちの場合、そうせざるをえないのだ。
ここで戦意を消失して戦うことを止めてしまったら、それこそ確実に上からの制裁が与えられる。
だから、少しでも望みのあるほうにしがみつく。
そんなことしても無駄だと知らずに…。
「くそくそくそくそくそくっそぉぉぉーーー!!」
「――――…。」
一切効かないのだ。
アレスは何もしていない。
不気味にゆっくりと、着実に歩みを進め、侵入者たちの前に。
「邪魔なんだよ…。」
そう言って右手から雷をちらつかせ、それを折檻状に組み立て侵入者たちを囲う。
そして閉じ込められた侵入者は気絶してしまった。
これもアレスの魔術。
対象者を揺さぶり極限まで酔わせる。
さらにひどいめまいを起こさせ、そのまま意識を絡め取る。
心が弱っている者にほど効果的なのだ。
「残りはあんただけだぞ。やるのか……ってあんた、俺への攻撃を止めさせようとしてた人じゃないか。」
「ああ、そうだが…。」
「何で俺を攻撃しなかった?」
「命令は『殺せ』じゃなくて、『中に入れるな』だったんだよ。だから、止めようとしたんだよ。君こそ何者なんだい?普通の入学生ってわけではなさそうだけど…。」
「悪いけどそれは言えない。…まあ、普通の子供ではないってことだけは確かだな。」
重みのあるその言葉は、それ以上何も言わなくても侵入者の一人にすべてを理解させる。
たった6年、そのたった6年の生涯を………6年…………
「(この子は本当に何者なんだ……。)」
「とにかく俺はやつらのところに行く。じゃないと母さんが…。」
その表情はとても印象的で、侵入者―ゼータ・ヤンゲルもしたことがある表情だった。
ただ大事な人を心のそこから心配している、そんな表情。
しかし、普通の心配している表情ならゼータはたくさん見てきた。
その中でもアレス・フィリップスのその表情はなぜか印象的、母親を心配しているというよりももっと大事な何かを追い求めているような、もっと大事な存在を守ろうとしているような……。
知りたい、もっと、こいつの、何が、ここまで、奮い立たせるのかを…。
「母さん…ってことはお前…。なあお前、名前は?」
ちっぽけで大きな子供は少し沈黙した後、何かを納得したかのように敵意をなくした。
「俺はアレス・フィリップス。」
「フィリップスって、あの…。」
「そうだよ、フィリップス家の子孫。今あんたらが捜しているユーナ・フィリップスは俺の母だ。」
それを聞いたゼータはほんの数秒戸惑ってから問い直した。
「俺にはそれだけには思えなかったんだが…。」
「ははっ、気のせいじゃないの。」
「そうだな、…気の…せいだよな………そういえば、お前なんで魔法が効かなかったんだ?それにあの脚力…子供の脚力じゃないぞ。」
「ただの魔術だよ。『オフェンシブアーマー』と『ディフェンシブアーマー』、魔力を身体能力や耐久力に変換する術だ。」
「そんなことが…。」
「もうこれでいいだろ。俺は早くユーナの元に行く!」
そう言ってアレスは破壊された扉に向かっていった。
「『ユーナの元に行く』…か。やっぱりお前何か隠してるな……。」
=======================
走り続けることものの1分弱で破壊された扉に到着した。扉の前に敵がいなかったのが不気味だったが、それどころでない少年はそんなことも考えずに踏み込む。
それと同時に『オフェンシブアーマー』の効力が切れ、身体能力は元の6歳に戻ってしまった。
アレスは音をたてないように中をのぞくが、会場の中はやけに静かだった。
「何があったんだ……。」
会場にはすでに黒フルフェイスの姿が消えていたのだ。
壁に背中をつけ、顔半分を壁から静かに出してユーナの席の方向を見てみると、手の届きそうな距離に一人の少年が立っていた。
「よかった、ユーナは無事か……なっ!?」
その少年はアレスと同じ新入生だった。
あたりをよく見てみると、床に何人もの侵入者が倒れている。
「(俺が裏を取っている間にこいつは正面から突っ込んだってのかよ…)」
アレスもそれなりの才能、力、努力は持っている。
しかし、それを圧倒的に上回る存在がそこに悠然と立っていた。
あの数を、犠牲者を一人も出さないで撃退したのだ、裏をとって敵のボスだけを狙い打とうとしたアレスよりも強いことは明白だった。
「お前…何者なんだ……?」
気になったアレスは壁に体を隠した状態でその少年に小声で呼びかけた。
深い青髪の少年で身長はアレスとかわらない。6歳の子供には似合わないクールな釣り目。全体的にはイケメンの部類だろう、将来は有望だと思う。
さらにこの少年はどこか大人びた雰囲気をかもし出している。
「俺か?俺はタカハシ・オーディウス・ダイン!ダインでいいぞ!」
その少年はいかにも6歳の若々しさと元気な声でアレスの質問に応じた。
「しっ、あまり大きい声出すなよ、バレる!(こいつ見た目に反して元気っこだ……)」
「悪いな、んでお前は?」
今度はアレスが質問し返される。
相手に名乗らせておいて自分が名乗らないのは失礼だと思ったアレスは素直に応じる。
「俺はアレス。アレス・フィリップスだ。」
安堵からなのか、客席がざわつき始めた。
周りに座っている保護者たちは何が起こったのかわからないといった表情だったので、これ以上ここにいるのはマズイと思ったアレスはある提案をする。
「とにかく場所を変えよう。」
「おう!いいぜ!」
そういってアレスたちは扉から通路に出ることにした。
こいつは何者なんだ、そんな疑念を残して。
いや、その疑念はすぐに明かされるだろう。
この後の話で。全部―――
―――――明かさせる………――――
いそげ…
イソゲ…
まだ、『あのこと』の真相を知らない。
それを知るまでは死ぬわけにも死なせるわけにもいかない。無論連れ去られることも。
『あのこと』を知るということはそれだけの意味がある。
俺がこの世界に再び生まれてきたことには、そういう理由があると思っている。
それとも、もっと別の何かなのか……
=====================
「(あの男は『捜している』と言ったんだ…。だったら、ユーナをすぐには殺さないはず。利用価値があるからさらう、それが目的。ならまだ間に合う。)」
すべての扉につながっている通路に出て、そのまま侵入者たちが来た方向の扉に向かう。道中、客席から逃げてきたが、途中で足が竦んでうずくまる子がいた。
「何やってんだ、早く逃げろ!」
小声で強く言ったが、「お父様…お母様…」と何度も繰り返し呟くだけで反応はなかった。アレスは敵の撃退を優先し、早く恐怖から解放することも決意し走り出す。
扉まではあと少しというところまで来た。
しかし、やはりそこにも見張りの者がいた。
数は席の近くを徘徊している侵入者の数よりも少ない。
「これならいけるか…。」
そして、何かの魔術の呪文を聞こえるか聞こえないか程度の声で唱え、アレスはそのまま正面から突っ込んだ。
「何だこのガキ!止まれ!どっから入ってきた!?」
「馬鹿野郎っ!座席から逃げてきたんだろう。命令なんだ、さっさと殺すぞ!」
「おいっ、待っ!!」
アレスに向かって魔法を打ち込むために詠唱する。
そして雷、炎、水、さまざまな属性の魔法が順番に打ち込まれた。
しかし、そんなものは…
「きかねぇんだよォ!!」
アレスは避ける素振りも魔法、魔術での反撃もしなかった。
ただただ受ける。それは異常、不気味。だがこれでいい。
「何なんだあのガキ!効いてないぞ!?」
「もっと打ち込っ…!?」
すでに手遅れ。
一人目の懐に入って思いっきり腹部を蹴り飛ばす。
吹っ飛んだ人がその後ろにいる侵入者にぶつかる。
この時点で、すでにアレスがこの戦場を支配したことになっている。
先ほどのアレスの異常さによって侵入者たちは戦場で恐怖を知ってしまった。
それは、死ぬことへの恐怖ではなくアレスに対する恐怖。絶対的な力がそこにあるが故の絶望。
そうなってしまっては戦えない。
だが、
「このガキの分際でぇぇぇぇぇェェェーーー!!!!」
やけになって無意味に反撃を仕掛けてくるものもいる。
いや、この侵入者たちの場合、そうせざるをえないのだ。
ここで戦意を消失して戦うことを止めてしまったら、それこそ確実に上からの制裁が与えられる。
だから、少しでも望みのあるほうにしがみつく。
そんなことしても無駄だと知らずに…。
「くそくそくそくそくそくっそぉぉぉーーー!!」
「――――…。」
一切効かないのだ。
アレスは何もしていない。
不気味にゆっくりと、着実に歩みを進め、侵入者たちの前に。
「邪魔なんだよ…。」
そう言って右手から雷をちらつかせ、それを折檻状に組み立て侵入者たちを囲う。
そして閉じ込められた侵入者は気絶してしまった。
これもアレスの魔術。
対象者を揺さぶり極限まで酔わせる。
さらにひどいめまいを起こさせ、そのまま意識を絡め取る。
心が弱っている者にほど効果的なのだ。
「残りはあんただけだぞ。やるのか……ってあんた、俺への攻撃を止めさせようとしてた人じゃないか。」
「ああ、そうだが…。」
「何で俺を攻撃しなかった?」
「命令は『殺せ』じゃなくて、『中に入れるな』だったんだよ。だから、止めようとしたんだよ。君こそ何者なんだい?普通の入学生ってわけではなさそうだけど…。」
「悪いけどそれは言えない。…まあ、普通の子供ではないってことだけは確かだな。」
重みのあるその言葉は、それ以上何も言わなくても侵入者の一人にすべてを理解させる。
たった6年、そのたった6年の生涯を………6年…………
「(この子は本当に何者なんだ……。)」
「とにかく俺はやつらのところに行く。じゃないと母さんが…。」
その表情はとても印象的で、侵入者―ゼータ・ヤンゲルもしたことがある表情だった。
ただ大事な人を心のそこから心配している、そんな表情。
しかし、普通の心配している表情ならゼータはたくさん見てきた。
その中でもアレス・フィリップスのその表情はなぜか印象的、母親を心配しているというよりももっと大事な何かを追い求めているような、もっと大事な存在を守ろうとしているような……。
知りたい、もっと、こいつの、何が、ここまで、奮い立たせるのかを…。
「母さん…ってことはお前…。なあお前、名前は?」
ちっぽけで大きな子供は少し沈黙した後、何かを納得したかのように敵意をなくした。
「俺はアレス・フィリップス。」
「フィリップスって、あの…。」
「そうだよ、フィリップス家の子孫。今あんたらが捜しているユーナ・フィリップスは俺の母だ。」
それを聞いたゼータはほんの数秒戸惑ってから問い直した。
「俺にはそれだけには思えなかったんだが…。」
「ははっ、気のせいじゃないの。」
「そうだな、…気の…せいだよな………そういえば、お前なんで魔法が効かなかったんだ?それにあの脚力…子供の脚力じゃないぞ。」
「ただの魔術だよ。『オフェンシブアーマー』と『ディフェンシブアーマー』、魔力を身体能力や耐久力に変換する術だ。」
「そんなことが…。」
「もうこれでいいだろ。俺は早くユーナの元に行く!」
そう言ってアレスは破壊された扉に向かっていった。
「『ユーナの元に行く』…か。やっぱりお前何か隠してるな……。」
=======================
走り続けることものの1分弱で破壊された扉に到着した。扉の前に敵がいなかったのが不気味だったが、それどころでない少年はそんなことも考えずに踏み込む。
それと同時に『オフェンシブアーマー』の効力が切れ、身体能力は元の6歳に戻ってしまった。
アレスは音をたてないように中をのぞくが、会場の中はやけに静かだった。
「何があったんだ……。」
会場にはすでに黒フルフェイスの姿が消えていたのだ。
壁に背中をつけ、顔半分を壁から静かに出してユーナの席の方向を見てみると、手の届きそうな距離に一人の少年が立っていた。
「よかった、ユーナは無事か……なっ!?」
その少年はアレスと同じ新入生だった。
あたりをよく見てみると、床に何人もの侵入者が倒れている。
「(俺が裏を取っている間にこいつは正面から突っ込んだってのかよ…)」
アレスもそれなりの才能、力、努力は持っている。
しかし、それを圧倒的に上回る存在がそこに悠然と立っていた。
あの数を、犠牲者を一人も出さないで撃退したのだ、裏をとって敵のボスだけを狙い打とうとしたアレスよりも強いことは明白だった。
「お前…何者なんだ……?」
気になったアレスは壁に体を隠した状態でその少年に小声で呼びかけた。
深い青髪の少年で身長はアレスとかわらない。6歳の子供には似合わないクールな釣り目。全体的にはイケメンの部類だろう、将来は有望だと思う。
さらにこの少年はどこか大人びた雰囲気をかもし出している。
「俺か?俺はタカハシ・オーディウス・ダイン!ダインでいいぞ!」
その少年はいかにも6歳の若々しさと元気な声でアレスの質問に応じた。
「しっ、あまり大きい声出すなよ、バレる!(こいつ見た目に反して元気っこだ……)」
「悪いな、んでお前は?」
今度はアレスが質問し返される。
相手に名乗らせておいて自分が名乗らないのは失礼だと思ったアレスは素直に応じる。
「俺はアレス。アレス・フィリップスだ。」
安堵からなのか、客席がざわつき始めた。
周りに座っている保護者たちは何が起こったのかわからないといった表情だったので、これ以上ここにいるのはマズイと思ったアレスはある提案をする。
「とにかく場所を変えよう。」
「おう!いいぜ!」
そういってアレスたちは扉から通路に出ることにした。
こいつは何者なんだ、そんな疑念を残して。
いや、その疑念はすぐに明かされるだろう。
この後の話で。全部―――
―――――明かさせる………――――
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