幼馴染の息子に転生した俺は人生を復讐に捧げます。

西脇 るい

文字の大きさ
10 / 27
留守番戦争

第一章:9話 『確かな強さ』

しおりを挟む
 ―君の…君たちの『アルカディアル家の血』をもらうよ―

 わけがわからなかった。
 なぜ、ユーナの前の家名が出てくるのか。
 なぜ、血を欲しているのか。
 黒フルフェイスの目的は明確だったが、その先にある答えが見つからなかった。
 そのためアレスは黒フルフェイスに問いかける。

「なんでアルカディアル家の血が欲しいんだ?何のために使うつもりだ?」

 黒フルフェイスは珍しく一瞬間をおいてから答える。

「6歳にしては恐ろしいぐらい頭がきれる君になら教えてあげてもいいかな~。まあ、僕たちの仲間になることと秘密にしてもらえるっていう条件付きだけど……どう?」

「どうもこうもない、そんな条件受けるわけないだろ!大体、何で俺はいいんだ?」

「目が……目が似てるんだよ。僕たちと…。」

 黒フルフェイスのその言葉は、今までの発言のどの言葉よりも真剣みがあった。

「俺の…目…?」

「そう、君の目だ。特別な力があるだとかそんな物じゃない。もっと単純、目的が似てる気がする…そんなところだ。」

「俺はあんな風に人を殺したことないぞ!」

「そんな目の前の目的じゃない。フィナーレのことだ。」

「フィナーレ?」

 そのときの黒フルフェイスは敵意が薄らいでいた。それと同時に張り詰めていた緊張や殺意が、霧が晴れるかのようになくなっていく。

「そう。あれは一過程の犠牲に過ぎない。まあ、それも何者かに阻まれたんだがね。」

「お前たちの目的は何なんだ?」

「言ったろう。それを知りたければ僕たちの仲間になれ。おそらくやり方に不満が出るだろが、君の最終目標と利害は一致しているはずだ。」

「最終目標……。」

「さあ、どうだね?僕たちのもとに……っ!?」

 黒フルフェイスがアレスに近づこう厨房の入り口に差し掛かったとき、男から見て左方向から電撃の矢が向かってきた。黒フルフェイスはそれを3mほど飛び、バク転の要領で後ろに避ける。
 不意の一撃を発した者が遅れてやってくる。その雷撃の発動者は、外出していたもう一人のメイド―テーラ・メインドールだった。亜麻色の長髪を後ろで結んでおり、トパーズのような綺麗な黄色の瞳をパッチリとしたまん丸つり目に宿した美しい女性だ。

「アレス様!ご無事ですか!?」

 その声は心配、焦燥、安堵、様々な感情の含み、通路中に響く高く。彼女は買い物から帰ってきたところだった。

「無礼者め!アレス様から離れなさい!」

 よりいっそう目を鋭くさせて黒フルフェイスを睨みつける。

「いやはやいやはや、邪魔が入ってしまったね~。それに…君は『獣神』じゃないかい?獣や神々の力の数パーセントをその身に宿した完全とまではいかない超人…。確かに君のような存在がいれば、屋敷の警備なんて雇うのはまったく意味を成さない。」

「わかっているなら早い、手を引いてもらおうか。」

「手を引く…ね。僕を見逃すかどうかはあれを見てから言うといいよ。」

 そう言って、ピエロのような動きでキッチンの方向に行くよう促す。
 アレスの背後、その血溜り。中央には見慣れた人がぐったりと倒れている。テーラは警戒心を上げ、恐る恐る部屋を覘く。

「―――っ!!」

 それを見たテーラの気配が変わる。

「ほ~ぉ。やっぱり考えは変わったかな?」

「お前…殺す!」

 すぐさま後ろに振り返り、一歩で黒フルフェイスに飛び掛る。その勢いを利用し、右手で殴る。だが、そんなことはわかっていたかのように避けられてしまう。テーラもこんな攻撃があたると思っているほど黒フルフェイスを過小評価してはいなかった。空振りの勢いすらも利用し空中で一回転、そしてぶつかるべきだった壁に着地するように足をつけもう一度黒フルフェイスの懐に踏み込む。

「がぁっああ!!」

「むふふふ、いいですよ、その調子!」

 下卑た笑みを浮かべているとしか考えられない笑い方だが、マスク越しではそれはわからない。すべてではないにせよ完璧なタイミングでテーラの拳や蹴りを避ける。横、縦、奥行き、すべての工夫を凝らした攻撃を仕掛けるもあたらない。黒フルフェイスは完全にゲーム感覚で遊んでいるように見えた、獣神の攻撃すらも。アレスには一つ一つの動きについていくだけで全神経を使わなければならないほど速かった。

「(やばい、ついていけない…)」

 『獣神』対『狂人』。『超常』対『異常』。互角に見える戦いも徐々に、獣神が徐々に詰め寄っていく。黒フルフェイスは余裕がなくなっていく。

「どうした!動きが鈍くなってきてるぞ!」

 テーラの言葉に嘘はない。たしかに黒フルフェイスの避けは完璧ではなくなってきている。最初はかすりもしなかったテーラの攻撃だったが、今の黒フルフェイスは腕や足を使って致命的なダメージを受けないようにガードしている。そして、

「はっ!!」

 テーラの左足の回し蹴りが黒フルフェイスの顔面に直撃…する直前に男の腕がそれを阻む。しかし、ただでは転ばない。獣神の全力の蹴りはその腕のガードすらも吹き飛ばす。その次の瞬間、狂気の鬼が見せた初めての隙。獣神はそこを見逃すほど鈍くなってはいなかった。
 
「はぁぁぁぁっ!!」

 黒フルフェイスの足元に蹴り終わった左足を踏み出し、回し蹴りの回転力を応用して思い切り握った右の拳を男の顔中央に叩き込む。パキィィィッッ!!という音とともに黒フルフェイスのマスクが中央から亀裂を生じ、時間とともに破壊の道をたどっていく。黒フルフェイスは隠すことすらしなかった。

 マスクの中央が割れ、黒フルフェイスの素顔が明かされていく。

「痛いな~。自慢のマスクが割れちゃったじゃん…。」

 その男の言葉とは裏腹にまったく遺憾さが感じられなかった。それよりも重要なことがある。
 それは、

「いや~素顔見られると恥ずかしいね!」

 アレスにはその男の顔には見覚えがあったことだ。

「―――っ!」


「―――カイン……ヴェーテン……!?」
 

 


 

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

「帰ったら、結婚しよう」と言った幼馴染みの勇者は、私ではなく王女と結婚するようです

しーしび
恋愛
「結婚しよう」 アリーチェにそう約束したアリーチェの幼馴染みで勇者のルッツ。 しかし、彼は旅の途中、激しい戦闘の中でアリーチェの記憶を失ってしまう。 それでも、アリーチェはルッツに会いたくて魔王討伐を果たした彼の帰還を祝う席に忍び込むも、そこでは彼と王女の婚約が発表されていた・・・

遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。

沼野 花
恋愛
【3月中――完結!】 積み上がった伏線の回収目前!! 夫にも子どもにも、私は選ばれなかった。 長年の裏切りを抱え、離縁状を置いて家を出た――。 待っていたのは、凍てつく絶望。 けれど同時に、それは残酷な運命の扉が開く瞬間でもあった。 「夫は愛人と生きればいい。  今さら縋られても、裏切ったあなたを許す力など残っていない」 それでも私は誓う―― 「子どもたちの心だけは、必ず取り戻す」 歪で、完全な幸福――それとも、破滅。 “石”に翻弄された者たちの、狂おしい物語。

皆様ありがとう!今日で王妃、やめます!〜十三歳で王妃に、十八歳でこのたび離縁いたしました〜

百門一新
恋愛
セレスティーヌは、たった十三歳という年齢でアルフレッド・デュガウスと結婚し、国王と王妃になった。彼が王になる多には必要な結婚だった――それから五年、ようやく吉報がきた。 「君には苦労をかけた。王妃にする相手が決まった」 ということは……もうつらい仕事はしなくていいのねっ? 夫婦だと偽装する日々からも解放されるのね!? ありがとうアルフレッド様! さすが私のことよく分かってるわ! セレスティーヌは離縁を大喜びで受け入れてバカンスに出かけたのだが、夫、いや元夫の様子が少しおかしいようで……? サクッと読める読み切りの短編となっていります!お楽しみいただけましたら嬉しく思います! ※他サイト様にも掲載

「地味ブス」と捨てられた私、文化祭の大型スクリーンで王子様の裏の顔を全校生に配信します

スカッと文庫
恋愛
「お前みたいな地味女、引き立て役にもならないんだよ」 眼鏡にボサボサ頭の特待生・澪(みお)は、全校生徒が見守る中、恋人だった学園の王子・ハルトから冷酷に捨てられた。 隣には、可憐な微笑みを浮かべる転校生・エマ。 エマの自作自演により「いじめの犯人」という濡れ衣まで着せられ、学園中から蔑まれる澪。 しかし、彼女を嘲笑う者たちはまだ知らない。 彼女が眼鏡の奥に、誰もが平伏す「真実の美貌」と、学園さえも支配できる「最強の背景」を隠していることを――。 「……ねぇ、文化祭、最高のステージにしてあげる」 裏切りへのカウントダウンが今、始まる。 スクリーンの裏側を暴き、傲慢な王子と偽りのヒロインを奈落へ突き落とす、痛快・学園下剋上ファンタジー!

「君は有能すぎて可愛げがない」と婚約破棄されたので、一晩で全ての魔法結界を撤去して隣国へ行きます。あ、維持マニュアルは燃やしました。

しょくぱん
恋愛
「君の完璧主義には反吐が出る」――婚約者の第一王子にそう告げられ、国外追放を命じられた聖女エルゼ。彼女は微笑み、一晩で国中の魔法結界を撤去。さらに「素人でも直せる」と嘘を吐かれた維持マニュアルを全て焼却処分した。守護を失いパニックに陥る母国を背に、彼女は隣国の軍事帝国へ。そこでは、彼女の「可愛くない」技術を渇望する皇帝が待っていた。

まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?

せいめ
恋愛
 政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。  喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。  そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。  その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。  閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。  でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。  家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。  その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。    まずは亡くなったはずの旦那様との話から。      ご都合主義です。  設定は緩いです。  誤字脱字申し訳ありません。  主人公の名前を途中から間違えていました。  アメリアです。すみません。    

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

処理中です...