断罪されている悪役令嬢ですが、そういえば前世は大魔法使いでした

猫野美羽

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1.卒業パーティ

「傲慢にも辺境の守護神などとうそぶく父親の威を借りた悪女、シェリー・クリステン! 前へ出ろ!」

 凛とした声音が学園内のダンスホールに響き渡る。
 卒業パーティでダンスを楽しんでいた生徒たちが何事かと立ち尽くす。
 華やかな音楽を奏でていた楽士たちも戸惑ったように演奏を止めた。

「王城内にて傲慢な、その態度! 高貴なる王族の伴侶として、とうてい相応しくない!」

 豪奢なダンスホールを彩る、きらびやかなシャンデリアの下まで引きずり出されるようにして連れてこられたシェリーは呆然と己を罵る男を見上げていた。

 アルス・フォン・フェデラル。
 我がフェデラル王国の第二王子で、シェリーの婚約者。

 金髪碧眼の美男子で、見栄えはいいが、努力を嫌う甘ったれた性根の持ち主だ。
 出来の悪い子ほど可愛いのか。母である王妃に溺愛されて育ったため、このアルスのほうがよほど傲慢な青年だった。

 アルスは端正に整った顔に酷薄そうな笑みを浮かべて、シェリーを見下ろしている。

 その腕にしがみついているのは、チェリーブロンドの愛らしい少女だ。
 光属性魔法を使うことができるという、聖女候補のマーガレット・ゲール男爵令嬢。
 
 天真爛漫に微笑む、慈愛の次期聖女とされる彼女がシェリーを見つめる姿には違和感しかない。
 シェリーはそっと唇を噛みしめる。
 
(愉悦に満ちた眼差しだわ。何かを企んでいる……?)

 嫌な予感に身をすくめたが、この場から逃げるわけにはいかない。
 震えそうになる足をどうにか動かして、婚約者であるアルスのもとへ歩み寄る。
 連日、王宮内の魔道具への魔力補充で酷使されたため、疲労で眩暈がしたが、てのひらに爪を立てて耐えた。
 ここで彼女が昏倒したとしても、誰も心配はしてくれない。
 せめてもの矜持で、優雅な所作で一礼してみせた。

「この晴れやかな場において、いったい何事でしょうか、殿下」
「はっ、しらじらしい!」

 王立学園の卒業パーティーの真っ最中にも関わらず、アルスは冷ややかな眼差しでシェリーを見下ろした。

「貴様は聖女となるべき、この清らかなマーガレットを嫉妬で虐めていた。なんと卑劣な女なのだ!」
「……ッ」

 ひゅっと息を呑む。
 冤罪だ。虐めるどころか、彼女とはまともに会話を交わしたことさえない。

「アルス殿下、それは誤解です。わたくしは……」
「うるさい! 見苦しい言い訳など聞きたくはない!」

 誤解を解こうとしても、耳を傾けてくれることさえ拒否されてしまい、シェリーは途方に暮れた。
 アルスにしなだれかかっているマーガレットがにんまりと笑う。

(彼女が殿下に嘘を吐いているの? 何のために? ああ、陛下がいらっしゃれば、こんなことにはならなかったはず……)


 
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