33 / 38
33
しおりを挟む
馬車はカポードの荷馬車ほど揺れず、とても快適だった。もしかして、魔術らしきもので揺れを塞いでいるのかもしれない。
(ギルラスさんのお家は、お貴族様だもんね。別邸って言ってもきっと、もの凄いんだろうな~)
玄関には豪華でキラキラしたシャンデリア。きっと宝石が、いっぱいついているんだろう。
ふかふかの絨毯が足を優しく包んでくれて、思わずモフりたくなるかもしれない。これは用心しないと誘惑に負けて、変態さんになってしまいそうだ。
などと妄想を楽しんでいると、馬車が停まった。
「・・・・・・ちっ。着くのが早いな」
(ギルラスさん、・・・今、舌打ちしましたか?)
多美江は驚いて、ギルラスを見上げた。
視線を感じたのか、ギルラスが多美江を見る。
「ターミャ、覚悟しておけよ」
何を? と問う前に、扉が開けられた。
「俺は別邸に、と言ったはずだがな」
「ご家族様が、すでに玄関でお待ちです。いつ帰ってくるのかわからない坊ちゃまを外で待つなど、何と・・・・・・」
泣く真似もするのか・・・、今の執事は。しかも演技派だ。
「どうせ鳥でも飛ばさせたのだろう? いや、デュークか」
デュークとは誰ぞや? 多美江の頭はプチパニックだ。
「別邸へ行かれるにも、まずは旦那様の許可を得て下さいまし」
「はあ・・・、仕方ない。ターミャ、一度降りるぞ」
「は、はい・・・」
ギルラスが先に降りてターミャを抱えて降ろそうとした時、ころころした可愛らしい声が響いた。
「まあ、なんて大きなお人形さんかしら。私へのお土産? 少しこちらへお貸しなさい」
ギルラスはその声に、多美江を抱いたまま振り返る。
「・・・母上」
「まあまあ、可愛らしい。こちらにいらっしゃい」
この人がギルラスのお母さん? ちょっと若くないか? こんな美しい人からこんな子ができるとは・・・、想像できない。
「軽いわね。本当にお人形さんみたい」
無理やり、ギルラスから多美江を奪い取る。
「本当に可愛らしいですね。黒い髪に黒い瞳。どちらも黒い組み合わせなど、私は見たことがありません。母上・・・、私にも抱っこさせて下さい」
「何を言うのよ。私も今抱っこしたばかりなのよ」
どう突っ込みを入れればいいのか。多美江は激しく動揺していた。
「一人締めはよくないですよ。私だって妹は欲しかったのですけどね」
「無茶を言わないでおくれ、デューク。私だって頑張るつもりだったのだが・・・ね。どれ、こっちにおいで」
ギルラスが三人の会話を聞いて、呆れ返っている。大きなため息をつきながら、多美江を父親の腕から奪い返す。
たらいまわしにされていた多美江は、目が回っていた。
「一応ターミャは人形ではないですからね。繊細な生き物なのですから、いつものようには扱わないで下さい」
「「「・・・・・・」」」
思わずギルラスの首に腕を絡める多美江。
懐いているように見えたのか、他の三人がとても羨ましそうにする。
「この子が今回の功労者ですね?」
「ああ・・・、ってお前。近衛隊長のお前がここにいていいのか?」
「久し振りに休みをいただきました。父上たちにお知らせする為に、魔方陣で帰ってきたのです」
魔方陣。あったのか、ここにも。あれは便利だ。すぐに目的の場所に着けるから。
多美江にも作れるだろうか? 一回試してみようと考える。
「もしかして、城とここを繋ぐ魔方陣を張らせているのか?」
驚愕しながら、ギルラスは聞く。
「ええ、皇太子の容体が良くなかったですからね。何かあればすぐに駆けつけられるようにと、ウィザード殿が」
「職権乱用だな・・・」
家の中に魔方陣を敷くとは、どれほど王家の方々から信用されているのだ。
「とにかく中へお入りなさい」
ギルラスのお母さんの一言で、ここでの会話は終わりを告げた。
(ギルラスさんのお家は、お貴族様だもんね。別邸って言ってもきっと、もの凄いんだろうな~)
玄関には豪華でキラキラしたシャンデリア。きっと宝石が、いっぱいついているんだろう。
ふかふかの絨毯が足を優しく包んでくれて、思わずモフりたくなるかもしれない。これは用心しないと誘惑に負けて、変態さんになってしまいそうだ。
などと妄想を楽しんでいると、馬車が停まった。
「・・・・・・ちっ。着くのが早いな」
(ギルラスさん、・・・今、舌打ちしましたか?)
多美江は驚いて、ギルラスを見上げた。
視線を感じたのか、ギルラスが多美江を見る。
「ターミャ、覚悟しておけよ」
何を? と問う前に、扉が開けられた。
「俺は別邸に、と言ったはずだがな」
「ご家族様が、すでに玄関でお待ちです。いつ帰ってくるのかわからない坊ちゃまを外で待つなど、何と・・・・・・」
泣く真似もするのか・・・、今の執事は。しかも演技派だ。
「どうせ鳥でも飛ばさせたのだろう? いや、デュークか」
デュークとは誰ぞや? 多美江の頭はプチパニックだ。
「別邸へ行かれるにも、まずは旦那様の許可を得て下さいまし」
「はあ・・・、仕方ない。ターミャ、一度降りるぞ」
「は、はい・・・」
ギルラスが先に降りてターミャを抱えて降ろそうとした時、ころころした可愛らしい声が響いた。
「まあ、なんて大きなお人形さんかしら。私へのお土産? 少しこちらへお貸しなさい」
ギルラスはその声に、多美江を抱いたまま振り返る。
「・・・母上」
「まあまあ、可愛らしい。こちらにいらっしゃい」
この人がギルラスのお母さん? ちょっと若くないか? こんな美しい人からこんな子ができるとは・・・、想像できない。
「軽いわね。本当にお人形さんみたい」
無理やり、ギルラスから多美江を奪い取る。
「本当に可愛らしいですね。黒い髪に黒い瞳。どちらも黒い組み合わせなど、私は見たことがありません。母上・・・、私にも抱っこさせて下さい」
「何を言うのよ。私も今抱っこしたばかりなのよ」
どう突っ込みを入れればいいのか。多美江は激しく動揺していた。
「一人締めはよくないですよ。私だって妹は欲しかったのですけどね」
「無茶を言わないでおくれ、デューク。私だって頑張るつもりだったのだが・・・ね。どれ、こっちにおいで」
ギルラスが三人の会話を聞いて、呆れ返っている。大きなため息をつきながら、多美江を父親の腕から奪い返す。
たらいまわしにされていた多美江は、目が回っていた。
「一応ターミャは人形ではないですからね。繊細な生き物なのですから、いつものようには扱わないで下さい」
「「「・・・・・・」」」
思わずギルラスの首に腕を絡める多美江。
懐いているように見えたのか、他の三人がとても羨ましそうにする。
「この子が今回の功労者ですね?」
「ああ・・・、ってお前。近衛隊長のお前がここにいていいのか?」
「久し振りに休みをいただきました。父上たちにお知らせする為に、魔方陣で帰ってきたのです」
魔方陣。あったのか、ここにも。あれは便利だ。すぐに目的の場所に着けるから。
多美江にも作れるだろうか? 一回試してみようと考える。
「もしかして、城とここを繋ぐ魔方陣を張らせているのか?」
驚愕しながら、ギルラスは聞く。
「ええ、皇太子の容体が良くなかったですからね。何かあればすぐに駆けつけられるようにと、ウィザード殿が」
「職権乱用だな・・・」
家の中に魔方陣を敷くとは、どれほど王家の方々から信用されているのだ。
「とにかく中へお入りなさい」
ギルラスのお母さんの一言で、ここでの会話は終わりを告げた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました
美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?
転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。
琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。
ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!!
スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。
ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!?
氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。
このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。
残念な顔だとバカにされていた私が隣国の王子様に見初められました
月(ユエ)/久瀬まりか
恋愛
公爵令嬢アンジェリカは六歳の誕生日までは天使のように可愛らしい子供だった。ところが突然、ロバのような顔になってしまう。残念な姿に成長した『残念姫』と呼ばれるアンジェリカ。友達は男爵家のウォルターただ一人。そんなある日、隣国から素敵な王子様が留学してきて……
【完結】転生したらラスボスの毒継母でした!
白雨 音
恋愛
妹シャルリーヌに裕福な辺境伯から結婚の打診があったと知り、アマンディーヌはシャルリーヌと入れ替わろうと画策する。
辺境伯からは「息子の為の白い結婚、いずれ解消する」と宣言されるが、アマンディーヌにとっても都合が良かった。「辺境伯の財で派手に遊び暮らせるなんて最高!」義理の息子など放置して遊び歩く気満々だったが、義理の息子に会った瞬間、卒倒した。
夢の中、前世で読んだ小説を思い出し、義理の息子は将来世界を破滅させようとするラスボスで、自分はその一因を作った毒継母だと知った。破滅もだが、何より自分の死の回避の為に、義理の息子を真っ当な人間に育てようと誓ったアマンディーヌの奮闘☆
異世界転生、家族愛、恋愛☆ 短めの長編(全二十一話です)
《完結しました》 お読み下さり、お気に入り、エール、いいね、ありがとうございます☆
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
嫁ぎ先は悪役令嬢推しの転生者一家でした〜攻略対象者のはずの夫がヒロインそっちのけで溺愛してくるのですが、私が悪役令嬢って本当ですか?〜
As-me.com
恋愛
事業の失敗により借金で没落寸前のルーゼルク侯爵家。その侯爵家の一人娘であるエトランゼは侯爵家を救うお金の為に格下のセノーデン伯爵家に嫁入りすることになってしまった。
金で買われた花嫁。政略結婚は貴族の常とはいえ、侯爵令嬢が伯爵家に買われた事実はすぐに社交界にも知れ渡ってしまう。
「きっと、辛い生活が待っているわ」
これまでルーゼルク侯爵家は周りの下位貴族にかなりの尊大な態度をとってきた。もちろん、自分たちより下であるセノーデン伯爵にもだ。そんな伯爵家がわざわざ借金の肩代わりを申し出てまでエトランゼの嫁入りを望むなんて、裏があるに決まっている。エトランゼは、覚悟を決めて伯爵家にやってきたのだが────。
義母「まぁぁあ!やっぱり本物は違うわぁ!」
義妹「素敵、素敵、素敵!!最推しが生きて動いてるなんてぇっ!美しすぎて眼福ものですわぁ!」
義父「アクスタを集めるためにコンビニをはしごしたのが昨日のことのようだ……!(感涙)」
なぜか私を大歓喜で迎え入れてくれる伯爵家の面々。混乱する私に優しく微笑んだのは夫となる人物だった。
「うちの家族は、みんな君の大ファンなんです。悪役令嬢エトランゼのね────」
実はこの世界が乙女ゲームの世界で、私が悪役令嬢ですって?!
────えーと、まず、悪役令嬢ってなんなんですか……?
転生しましたが悪役令嬢な気がするんですけど⁉︎
水月華
恋愛
ヘンリエッタ・スタンホープは8歳の時に前世の記憶を思い出す。最初は混乱したが、じきに貴族生活に順応し始める。・・・が、ある時気づく。
もしかして‘’私‘’って悪役令嬢ポジションでは?整った容姿。申し分ない身分。・・・だけなら疑わなかったが、ある時ふと言われたのである。「昔のヘンリエッタは我儘だったのにこんなに立派になって」と。
振り返れば記憶が戻る前は嫌いな食べ物が出ると癇癪を起こし、着たいドレスがないと癇癪を起こし…。私めっちゃ性格悪かった!!
え?記憶戻らなかったらそのままだった=悪役令嬢!?いやいや確かに前世では転生して悪役令嬢とか流行ってたけどまさか自分が!?
でもヘンリエッタ・スタンホープなんて知らないし、私どうすればいいのー!?
と、とにかく攻略対象者候補たちには必要以上に近づかない様にしよう!
前世の記憶のせいで恋愛なんて面倒くさいし、政略結婚じゃないなら出来れば避けたい!
だからこっちに熱い眼差しを送らないで!
答えられないんです!
これは悪役令嬢(?)の侯爵令嬢があるかもしれない破滅フラグを手探りで回避しようとするお話。
または前世の記憶から臆病になっている彼女が再び大切な人を見つけるお話。
小説家になろうでも投稿してます。
こちらは全話投稿してますので、先を読みたいと思ってくださればそちらからもよろしくお願いします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる