真実はゴミに潜む

浅上秀

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会社の毒華

5話

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相変わらず二人はゴミ処理場と事務所を往復して岳剛社長の罵声を浴びる日々。
その日も朝から今日回るゴミ処理場のルートを確認して袋を手に取ったところで事務所の電話が鳴った。

「お電話ありがとうございます、簡清株式会社です」

事務員の前田が電話に出た。

「えぇ、はい、そうですが、え?ええぇ?わ、わかりまし、た」

何やら戸惑っているようだ。
やがて電話を切ると怯えた様子で呟いた。

「社長が、社長が亡くなったそうです」

「は?」

沈黙が事務所を包み込んだ。



前田がとった電話は奥さんからだったようだ。
朝起きたら岳剛社長がキッチンの床で倒れていて救急車を呼んだが助からなかったとのこと。
幹雄会長も会長の奥さんも病院に駆けつけたようだが社長の最期には間に合わなかったらしい。

「社長が、死んだ…」

デンは放心状態だった。
あんなに常日頃、彼が死ぬことを祈っていたがいざ本当に死ぬと驚きが勝ってしまった。

「…デン、行くぞ」

「梅さん、行くって、どこに」

「仕事だ。今日の分だけでも終わらせてしまおう」

「はい」

デンは急いで身支度を整えた。
梅迫は先ほどのデンと同じくぼーっとしている事務員に声をかける。

「大丈夫か?」

梅迫の声に大げさに肩を揺らした彼女はゆっくりと頷いた。

「仕事が終わったら、社長のご自宅に三人で来るように、と奥様が」

彼女はゆっくりと梅迫に言った。
梅迫とデンはその言葉に頷いて黙々と準備を整えると急いで事務所を飛び出して社有車に乗り込んだ。



デン、梅迫、前田の三人は仕事の後、急いで岳剛社長の自宅に向かった。
遺体は奥さんの希望で病院から家に持って帰って来たがったようだがなぜ警察に持っていかれてしまったらしい。
そこそこ豪華な一軒家の前で車を停めて三人で降りる。
駐車スペースには幹雄会長の車があったので会長も来ているようだ。
代表して梅迫がインターホンを鳴らした。

「はい!」

子供のかわいい声が聞こえる。

「どうも、梅迫です」

「あ、お梅のおじちゃんだ!どうぞ!」

「ありがとう」

三人は静々と玄関を通ってリビングに入った。

「梅迫、来てくれたのか」

憔悴して小さくなった幹雄会長と奥様が三人掛けのソファに座っていた。
リビングの奥のダイニングテーブルには目を赤くした高校生の社長の娘と少し現状を理解していない小学生の妹がいた。

「この度は、ご愁傷様です」

梅迫の言葉にデンと前田も頭を下げた。

「突然のことでまだ私たちも驚いているんです」

幹雄会長の奥様が顔をハンカチで目頭を押さえている。

「狭いですがどうぞおかけください。今、お茶お持ちします」

フラフラと立ち上がった岳剛社長の奥さんが梅迫たちに声をかける。

「いえいえ!どうかお構いなく」

梅迫は奥さんの肩を支えて会長たちの座るソファの横にある空いていた一人掛けのソファに座らせた。

「殺されたようなんだよ」

ポツリと突然幹雄会長が言う。

「え?」

リビングが沈黙に包まれた。

「殺されたようなんだ、息子は、誰かに。いや、この中の誰かに」

幹雄会長はそういって室内にいた全員の顔を睨みつける。

「ちょ、ちょっと待ってください会長。殺されたっていったいどういう…」

「は、白々しいな梅迫。おまえが殺したんじゃないのか?ええ?」

「あなた、梅迫さんに失礼ですよ」

会長の奥さんが袖を引いてなだめる。

「毒だったそうなんです、主人の、死因が」

岳剛社長の奥さんが呟いた。

「毒、ですか」

「えぇ、お医者様がそう仰っていらして…それで警察が呼ばれて主人を連れて行ってしまったんです」

「なるほど司法解剖になったんですね」

デンは首を傾げていたがなんとなく岳剛社長は誰かに毒を盛られて死んだということだけはわかったようだ。
その隣で前田は今にも気絶しそうなくらい真っ青な顔をしていた。

「おまえがあいつに何か食わせたんじゃないのかこのバカ嫁が!」

幹雄会長は近くにあったお茶の入った湯呑を岳剛社長の奥さんに投げつけた。
幸い湯呑は奥さんに当たらずにフカフカの絨毯の上で跳ねる。

「会長、落ち着いてください」

梅迫が慌てて湯呑を拾う。

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