ダンジョン行くなら監禁するよ？

第五章 結婚

1話

グレンは知らない間にマルクに全ての外堀を埋められていた。

…

「グレン！久しぶりねぇ。あんたちっとも家に顔を出さないんだから、もう！」

「まぁまぁマルクちゃん！あなたもたまには帰ってらっしゃい！」

滅多に来客のない屋敷に竜巻のように二人の貴婦人が現われた。
一人はグレンの母、チェルシー。
もう一人はマルクの母、サーシャだ。

「すみません、母上。何分仕事が立て込んでおります故」

マルクはニコリと全力の営業スマイルをサーシャに向けた。

「俺も、忙しいから…」

グレンはチェルシーから視線をそらしながら答えた。

「それで本日は何用で？」

マルクが怪訝そうに二人の母親に尋ねる。

「あら、私共が知らないとでも思った？」

サーシャが手にしていた扇をパチンと閉じる。

「はて？なんのことでしょうか？」

マルクがとぼける。

「しらばっくれちゃって！あなたの結婚のことに決まってるでしょ！」

サーシャが大声を張る。

「グレン、あなたもよ！」

チェルシーも手にしている扇でグレンをさした。

「え、俺？」

グレンは本当にわからなかった。

「とぼけてもムダよ！」

「そうよそうよ！二人とも旦那様から聞いてきたんだから！」

「え、何を？」

グレンが二人の母親に尋ねる。

「あら、マルクちゃん、グレンちゃんに説明していないのかしら？」

「ええ、説明しようとしたらお二人がいらしたんですよ」

マルクは目を手で覆っていた。

「なぁ、マルク、なんのことだよ？結婚って、この前の嫁とのことか？」

「この前の嫁ですって！？」

サーシャが金切り声をあげる。
マルクはさらに困った様子になった。

「グレン、黙ってて、後で説明するから」

「お、おう…」

「母上、私とリディア嬢の契約なら完了していますし、私は式もあげる予定はございませんよ」

「ええ、知ってるわ」

「ああ、ご存知ですか…って、え？」

「知ってるわよ、リディアちゃんがここに乗り込んでっちゃったお話とかもね。彼女、恋人を見つけたそうで、その方にあなたのフリをして結婚式を挙げていただくことにしたわ」

「は、はぁ、そうですか…」

マルクは拍子抜けした様子だ。

「嫁とじゃないなら誰の結婚だ？」

グレンはぼそりと呟いた。