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浅上秀

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老舗旅館に出資してみた

1話

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次の日、俺は起きてすぐに旅行鞄を引っ張り出した。
スマホで検索してみる限り、昨日渡されたチケットの温泉旅館は高級旅館に分類されるらしく、中でもサービスが行き届いているとのことだった。

「予約なしで行けんのかな…」

すると俺のパソコンの方に裏クラウドファンディングの運営からメッセージが入っていた。
今日からいつでも好きな日にチケットが使えるように手配してあるとのことだった。

「善は急げってか」

駅前から直行バスが出ているようなのでとりあえず身支度を整えて家を飛び出す。



「男命温泉行のバスご乗車の方はこちらで~す」

バス乗り場に近づくとそう呼び掛けている運転手がいた。

「あの、乗ってもいいですか?」

「はい、一名様ですね?」

「はい」

「どうぞ…これをお掛けになって奥から詰めてお乗りください」

ゲームショーでもつけさせられたようなフルフェイスのマスクだ。
手早くつけてバスに乗り込むとバスの中はヴェネチアのカーニバル並みに仮面をつけた人しかいなかった。
服装から推測するにほぼ男性ばかり。

「それでは時間になりましたので出発いたします」



バスが走り出したのはわかるものの、窓はカーテンですべてふさがれているし、運転席と客席は壁のようなもので隔てられている。
そのため現在どこを走っているのか全く分からない。
車内は小声で数名が会話する声が聞こえてはくるものの、非常に静かだ。

「眠たいな」

俺はシートに身をゆだねて眠りにつく。
結局、昨晩はあまりゆっくり眠れなかったのだ。



意識がうつらうつらと彷徨っていたころ、バスが停車する気配があった。
そして運転手の声がスピーカー越しに聞こえてくる。

「お待たせいたしました。男命温泉到着です。お忘れ物の内容におひとり様ずつお降りください」

一人、また一人と荷物をもってバスを降りていく。

「ようこそ、おいでくださいました」

バスを降りると着物を着た男性が出迎えてくれる。

「どうぞこちらへ」

客一人に対して着物の男性が一人、仲居さんとして付くようだ。
玄関に入って靴を脱いでスリッパに履き替える。
するとパーテーションで区切られた待合場所に案内された。
中にある一人掛けのソファに腰かけると、隣の人の様子や周りの様子は全く分からない。

「こちらにおかけください。何かお飲み物はいかがでしょうか?」

そういって差し出されたメニュー表にはアルコールからソフトドリンクまで多様な種類の飲み物が載っている。

「ビールで」

「かしこまりました」

恭しく礼をすると案内してくれた仲居は去っていった。


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