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浅上秀

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さびれた商店街に出資してみた

3話

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「それではまず最初に、今からお配りいたしますしおりをご一読ください」

木田さんは通路を歩きながら乗客一人一人に一冊の紙束を配り始めた。

「皆様にいきわたりましたでしょうか?」

木田さんが社内を見回して確認する。

「では表紙をおめくりください。このバスの中では皆様にお守りいただきたい重要なお約束事が何点かございます。まず一つ目に車内は禁煙となっております。おタバコは休憩時間にお外でお願いいたします。それからお食事もご遠慮いただいております。お飲み物はご自由にお飲みください。また万が一、ゴミが出た場合は社内美化のためおもちか襟のご協力をお願い申し上げます」

木田さんがそこに書かれているいくつかの注意事項を抜粋して読み上げていく。

「最後に一番重要なお願い事がございます。お客様同士の個人情報保護の為、お客様のことはお座りいただいている座席の番号でお呼びさせていただきます。それにあたりました、お客様同士での連絡先の交換や自己紹介はお控えいただきますようにお願い申し上げます」

たしかにこの後ろ暗いサイトに携わっていると知られるのは、ある程度社会的地位がある人間にとってはデメリットになりかねない。
もっともな約束事だと思った。

「あの、質問してもよろしいでしょうか」

後方の席から男性の声がした。

「はい、十七番の方、どうぞ」

座席表を一瞥した木田さんが男性に声をかける。

「個人情報とは具体的にどのようなものまでが含まれるんでしょうか?」

バス内の人、ほぼ全員の視線が十七番に一気に集まった。
みんな一様に何を聞いているんだこいつはと言いたげな視線を送っている。

「…常識の範囲内で各自のご判断におまかせさせていただきます」

木田さんは少し回答までに間が開いたものの、営業スマイルで乗り切った。
十七番の人は納得がいっていないようだったが。

「それではお約束事を共有できましたところで本日のご予定についてご案内いたします」

約束事の次のページにはスケジュールが書かれていた。
ただスケジュールといってもミステリーツアー的な要素があるためか、おおまかな外用し書かれていない。

「目的地でございます△地区には十二時前には到着する予定でございます。ただ途中の道路状況によりまして、若干ズレる見込みでございます。また一度、トイレ休憩をはさむ予定でございます。その際には集合時間厳守での行動をお願い申し上げます」

タイムスケジュールには到着地と到着時刻以外の予定は空白になっている。
一泊の予定なので、明日の出発時間は記載されているものの、今日泊まる宿の名前すら書かれていないので、若干底知れぬ不安感を覚える。

「それでは皆様、目的地までごゆっくりお過ごしください」

木田さんは再び一礼すると席に腰かける。



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