27 / 47
第27話 三島side 様子のおかしい藤崎
しおりを挟む
藤崎の様子がおかしい。
北野がそう言って俺に詰め寄ってきたのは、部活動紹介のあった次の日の昼休みのことだった。
「ねえ、藍に何があったのよ。どう見ても朝から様子がおかしいじゃない」
北野はそう言って、教室の隅で一人席についている藤崎を見る。
その藤崎はというと、どこか暗い表情をしていて、何か良くないことがあったんだろうと一目でわかった。
「何聞いても上の空だし、何かあったの? 昨日の部活紹介で、思うように演奏できてなかったとか?」
「そんなの俺だって分かんねえよ。そりゃ、演奏は上手くなかったけど、楽しかったって言ってたし、他にあったことといえば、顧問の先生が決まったくらいだ。後は知らねえ」
藤崎の様子がおかしいことくらい、わざわざ北野に言われなくても気づいてた。
けどどうしたんだって聞いても、返って来たのは、何でもないの一言。
しかもその声だって、元気がなかった。
それで、何でもないわけないだろ。
俺の答えにガッカリする北野だけど、話はまだ終わらない。
「心当たりとかも無いの?」
「だから、知らねえって言ってるだろ」
知ってたら、こんなにモヤモヤしたりしない。
俺だってずっと気になってるんだ。
「俺にどうこう言うより、お前が藤崎に直接聞いたらいいんじゃないか?」
「聞いたよ。だけど何も無いって言われて、それで終わり。そんな訳ないのに」
北野も、こうしてわざわざ俺に声をかけるくらいだから、その前に藤崎に聞いていたのも当然か。
北野は、藤崎の一番仲のいい友達だ。
そんな北野が聞いてもダメだったなら、いよいよ、俺が何か聞いても話してくれるとは思えなかった。
「それじゃお手上げだな。お前で無理なら、俺にどうにかできるわけないだろ」
それだけ言うと、席を立って教室から出て行く。
後ろから北野の呼ぶ声が聞こえてきたが、振り返ることは無かった。
けれど、俺がさっき北野に話したことには、少しだけ嘘があった。
藤崎に何があったのかは知らない。けど、心当たりが全く無いわけじゃない。
と言うか、藤崎があんなになるような何かなんて、ひとつしか考えられない。
有馬優斗先輩だ。
「先輩と、何かあったんだろうな」
そこまで考えたところで、胸の奥がザワザワとして、落ち着かなくなる。
面白くないんだ。藤崎が、先輩のことで喜ぶのも、悲しむのも。
まだ俺や藤崎が小学生だった頃、誰よりも藤崎を笑顔にさせることができたのは、有馬先輩だった。
俺が藤崎にあれこれちょっかいをかけて泣かせた時だって、そこに先輩がやってくれば、藤崎は決まって笑顔になった。
それを見て、何度腹を立てたかわからない。
けどな、俺の知る限り、一番藤崎を泣かせたのも、先輩なんだ。
先輩が亡くなった時、藤崎がどんなに泣いていたかは、今でも昨日のことのように思い出せる。
俺がどんな意地悪をした時だって、あんなに大泣きしたことなんてなかった。
藤崎にとって、先輩はそれだけ大事な存在だった。
藤崎の一番は、間違いなくあいつだった。
まあ、例えどんなに大切に思っていても、今となっては過去の人。
生きてる俺たちにとっては、二度と直接関わることのない相手だ。
ほんの少し前までは、そんな風に思っていた。
なのに────
そんなことを考えながら、俺は本校舎をでて部室棟に、そして、軽音部部室の前に来ていた。
北野がそう言って俺に詰め寄ってきたのは、部活動紹介のあった次の日の昼休みのことだった。
「ねえ、藍に何があったのよ。どう見ても朝から様子がおかしいじゃない」
北野はそう言って、教室の隅で一人席についている藤崎を見る。
その藤崎はというと、どこか暗い表情をしていて、何か良くないことがあったんだろうと一目でわかった。
「何聞いても上の空だし、何かあったの? 昨日の部活紹介で、思うように演奏できてなかったとか?」
「そんなの俺だって分かんねえよ。そりゃ、演奏は上手くなかったけど、楽しかったって言ってたし、他にあったことといえば、顧問の先生が決まったくらいだ。後は知らねえ」
藤崎の様子がおかしいことくらい、わざわざ北野に言われなくても気づいてた。
けどどうしたんだって聞いても、返って来たのは、何でもないの一言。
しかもその声だって、元気がなかった。
それで、何でもないわけないだろ。
俺の答えにガッカリする北野だけど、話はまだ終わらない。
「心当たりとかも無いの?」
「だから、知らねえって言ってるだろ」
知ってたら、こんなにモヤモヤしたりしない。
俺だってずっと気になってるんだ。
「俺にどうこう言うより、お前が藤崎に直接聞いたらいいんじゃないか?」
「聞いたよ。だけど何も無いって言われて、それで終わり。そんな訳ないのに」
北野も、こうしてわざわざ俺に声をかけるくらいだから、その前に藤崎に聞いていたのも当然か。
北野は、藤崎の一番仲のいい友達だ。
そんな北野が聞いてもダメだったなら、いよいよ、俺が何か聞いても話してくれるとは思えなかった。
「それじゃお手上げだな。お前で無理なら、俺にどうにかできるわけないだろ」
それだけ言うと、席を立って教室から出て行く。
後ろから北野の呼ぶ声が聞こえてきたが、振り返ることは無かった。
けれど、俺がさっき北野に話したことには、少しだけ嘘があった。
藤崎に何があったのかは知らない。けど、心当たりが全く無いわけじゃない。
と言うか、藤崎があんなになるような何かなんて、ひとつしか考えられない。
有馬優斗先輩だ。
「先輩と、何かあったんだろうな」
そこまで考えたところで、胸の奥がザワザワとして、落ち着かなくなる。
面白くないんだ。藤崎が、先輩のことで喜ぶのも、悲しむのも。
まだ俺や藤崎が小学生だった頃、誰よりも藤崎を笑顔にさせることができたのは、有馬先輩だった。
俺が藤崎にあれこれちょっかいをかけて泣かせた時だって、そこに先輩がやってくれば、藤崎は決まって笑顔になった。
それを見て、何度腹を立てたかわからない。
けどな、俺の知る限り、一番藤崎を泣かせたのも、先輩なんだ。
先輩が亡くなった時、藤崎がどんなに泣いていたかは、今でも昨日のことのように思い出せる。
俺がどんな意地悪をした時だって、あんなに大泣きしたことなんてなかった。
藤崎にとって、先輩はそれだけ大事な存在だった。
藤崎の一番は、間違いなくあいつだった。
まあ、例えどんなに大切に思っていても、今となっては過去の人。
生きてる俺たちにとっては、二度と直接関わることのない相手だ。
ほんの少し前までは、そんな風に思っていた。
なのに────
そんなことを考えながら、俺は本校舎をでて部室棟に、そして、軽音部部室の前に来ていた。
0
あなたにおすすめの小説
年下男子に追いかけられて極甘求婚されています
あさの紅茶
恋愛
◆結婚破棄され憂さ晴らしのために京都一人旅へ出かけた大野なぎさ(25)
「どいつもこいつもイチャイチャしやがって!ムカつくわー!お前ら全員幸せになりやがれ!」
◆年下幼なじみで今は京都の大学にいる富田潤(20)
「京都案内しようか?今どこ?」
再会した幼なじみである潤は実は子どもの頃からなぎさのことが好きで、このチャンスを逃すまいと猛アプローチをかける。
「俺はもう子供じゃない。俺についてきて、なぎ」
「そんなこと言って、後悔しても知らないよ?」
課長のケーキは甘い包囲網
花里 美佐
恋愛
田崎すみれ 二十二歳 料亭の娘だが、自分は料理が全くできない負い目がある。
えくぼの見える笑顔が可愛い、ケーキが大好きな女子。
×
沢島 誠司 三十三歳 洋菓子メーカー人事総務課長。笑わない鬼課長だった。
実は四年前まで商品開発担当パティシエだった。
大好きな洋菓子メーカーに就職したすみれ。
面接官だった彼が上司となった。
しかも、彼は面接に来る前からすみれを知っていた。
彼女のいつも買うケーキは、彼にとって重要な意味を持っていたからだ。
心に傷を持つヒーローとコンプレックス持ちのヒロインの恋(。・ω・。)ノ♡
救助隊との色恋はご自由に。
すずなり。
恋愛
22歳のほたるは幼稚園の先生。訳ありな雇用形態で仕事をしている。
ある日、買い物をしていたらエレベーターに閉じ込められてしまった。
助けに来たのはエレベーターの会社の人間ではなく・・・
香川「消防署の香川です!大丈夫ですか!?」
ほたる(消防関係の人だ・・・!)
『消防署員』には苦い思い出がある。
できれば関わりたくなかったのに、どんどん仲良くなっていく私。
しまいには・・・
「ほたるから手を引け・・!」
「あきらめない!」
「俺とヨリを戻してくれ・・!」
「・・・・好きだ。」
「俺のものになれよ。」
みんな私の病気のことを知ったら・・・どうなるんだろう。
『俺がいるから大丈夫』
そう言ってくれるのは誰?
私はもう・・・重荷になりたくない・・・!
※お話に出てくるものは全て、想像の世界です。現実のものとは何ら関係ありません。
※コメントや感想は受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
ただただ暇つぶしにでも読んでいただけたら嬉しく思います。
すずなり。
エリート警察官の溺愛は甘く切ない
日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。
両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉
冷酷総長は、彼女を手中に収めて溺愛の檻から逃さない
彩空百々花
恋愛
誰もが恐れ、羨み、その瞳に映ることだけを渇望するほどに高貴で気高い、今世紀最強の見目麗しき完璧な神様。
酔いしれるほどに麗しく美しい女たちの愛に溺れ続けていた神様は、ある日突然。
「今日からこの女がおれの最愛のひと、ね」
そんなことを、言い出した。
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
私が素直になったとき……君の甘過ぎる溺愛が止まらない
朝陽七彩
恋愛
十五年ぶりに君に再開して。
止まっていた時が。
再び、動き出す―――。
*◦*◦*◦*◦*◦*◦*◦*◦*◦*◦*◦*◦*◦*◦*◦*◦*
衣川遥稀(いがわ はるき)
好きな人に素直になることができない
松尾聖志(まつお さとし)
イケメンで人気者
*◦*◦*◦*◦*◦*◦*◦*◦*◦*◦*◦*◦*◦*◦*◦*◦*
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる