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第28話 三島side 先輩との話
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部室の扉を開くと、思った通り、そこには有馬先輩の姿があった。
他は誰もいないし、これなら堂々と話をしても、変に思われる心配はないだろう。
「どうした、三島。何か用事でもあるのか?」
「有馬先輩こそ、今朝からずっとここにいたのか?」
有馬先輩は学校では俺や藤崎とは別行動をとっていて何をしているのかは知らない。
けどこの様子だと、ここでずっと何もせずにいたっぽい。
「ああ。幽霊じゃ特にできることなんて無いし、藍や三島以外には、俺の姿は見えないからな。だったら、一人でいた方がいい」
サラッと言うけど、それって凄く寂しいことなんじゃねえのか?
近くにいるのに、普通の人間のは見えないばかりか声だって聞こえないから、誰にも気づかれることはない。
物にも触れられないから、何かやろうと思っても、できることなんてほとんどない。
そういえば、前に見かけた幽霊が、退屈で死にそうだと愚痴っていたことがあったな。
(やっぱり、幽霊なんて深く関わるもんじゃねえな。力になんてなれないのに、こんな話を聞くと、つい構いそうになる)
それは、長年幽霊を見てきた中で何度も思ったことだった。
だから、普段は必要以上に関わることのないように、見えても無視することがほとんどだ。
けど時々、そういうわけにもいかないやつが出てくるんだ。
もちろん有馬先輩も、その中の一人だ。
しかもこの人の場合、俺じゃなくて藤崎としっかり絡んでいるから、よけいにタチが悪い。
「なあ、藤崎のことだけどさ……」
「藍がどうかしたのか!」
それまで落ち着いた雰囲気で話してたのに、藤崎の名前が出てきたとたん、すごい勢いで食いついてきた。
この人、どれだけ藤崎のことを気にかけてるんだよ!
けどまあ、その気持ちは俺だってわかる。
わかるからこそ、わざわざこうしてここまでやって来たんだ。
「どうしたかわからねえから、それを聞きにここに来たんだよ。あいつ、どう見ても朝から元気がねえし、何か悩んでるみたいだった。先輩なら何か知ってるんじゃねえの?」
藤崎があんなに変になる原因なんて、この人以外考えられない。
思えば、今朝藤崎は有馬先輩と一緒に登校してきたけど、その時から違和感はあった。
藤崎のやつ、小さい頃も、先輩が幽霊になってからも、先輩と一緒にいる時は、それしか目に入らないのかって思うくらい、ずっと先輩のことを見てた。
なのに今朝は、不自然なくらい視線を逸らしていて、会話も極端に少なかった。
いつもは腹が立つくらい先輩が好きだって態度が出てるのに、明らかにおかしかった。
「やっぱりそう思うか。避けられてるよな、俺」
やっぱり、有馬先輩も気づいてたのかよ。
先輩は、沈んだような声で呟いた後、ガックリと肩を落とす。
昔の俺にとってこの人は、だいぶ年上の大人なやつで、常に余裕があるって感じの人だった。
けど、今目の前にいるこの人は、見るからに落ち込んでいて、余裕なんてどこにもない。
「先輩こそ大丈夫かよ。藤崎もそうだけど、アンタも相当辛そうだぞ」
「そうか? 自分じゃわからないな」
先輩はそう言うけど、俺には痩せ我慢してるようにしか見えない。
そして、そんな先輩の様子を見て、今まで見てきた何人かの幽霊の姿を思い出さずにはいられなかった。
「気を付けた方がいいぞ。今まで幽霊を見てきてわかったことだけど、幽霊って奴は肉体が無い分、精神の影響が直に出るみたいなんだ。心が痛いとより苦しいし、怒りや悪意が強いとそれに呑みこまれやすくなる。もしかしたら、そんなのを拗らせたのが悪霊ってやつなのかもしれない」
「そうなのか……」
これこそが、俺が幽霊を良く思っていない最大の理由だ。
少し前まで穏やかだった者が、ふとした拍子に怒りや悪意に飲まれて、急に凶暴になることだってある。
そんなの、本人にとっても周りの奴らにとっても、いいことなんて何もない。
「なあ。今の話、藍には内緒にしといてくれないか? 心配かけたくない」
「……ああ。言わねえよ」
言われなくても、何も問題が起こらないうちは、藤崎に伝える気はなかった。
もし藤崎がこれを知ったら、すぐに真っ青になるのが想像できた。そんなのは見たくない。
けど、もしこのまま二人を放っておいて、有馬先輩の心労が溜まっていったら、そんなことにならないとも限らない。
すぐにはそんな心配はないだろうと思っていたけど、今の先輩を見ると、不安にならずにはいられない。
だからこそ、なんとかしねえと。
「それで、藤崎と何かあったのかよ?」
どこまで聞いていいのかなんてわからない。
だけど、藤崎が落ち込んでいて、有馬先輩もこんな調子なら、何かできるとしたら俺だけだ。
そんなの、首を突っ込まずにはいられない。
「ゆうべ、藍と話をして、多分俺がその時言った事にショックを受けたんだ」
「ショックって何言ったんだよ。そもそも、話って何なんだ?」
具体的なことを言ってくれなきゃ、何が何だかよくわからない。
すると有馬先輩は、なんと言えばいいか考えるように、少しの間黙る。
そうして言ったのがこれだった。
「そうだな。なんて言うか、恋バナみたいなものか?」
「こいっ!?」
なんだよそれ!?
元々何があったかなんて見当つかなかったけど、さすがにその言葉は予想外すぎるだろ!
「あんたら、いったい何話してたんだよ。いや、詳しくは喋らなくていいからな。って言うか、絶対喋るな!」
何が悲しくて、藤崎とこの人との間であった恋バナなんて聞かなくてはならないんだ。
実を言うと、全く興味がないって言ったら嘘になるが、しっかり聞いてしまったら、本題を忘れてしまいそうな気がした。
二人がどんな話をして、その結果藤崎がどうして落ち込んでるのか。気にはなったが、それを聞くためにここに来たかというと、微妙に違う。
俺がここにきたのは、理由を聞くためじゃない。
落ち込んでいる藤崎を、なんとかするためだ。
他は誰もいないし、これなら堂々と話をしても、変に思われる心配はないだろう。
「どうした、三島。何か用事でもあるのか?」
「有馬先輩こそ、今朝からずっとここにいたのか?」
有馬先輩は学校では俺や藤崎とは別行動をとっていて何をしているのかは知らない。
けどこの様子だと、ここでずっと何もせずにいたっぽい。
「ああ。幽霊じゃ特にできることなんて無いし、藍や三島以外には、俺の姿は見えないからな。だったら、一人でいた方がいい」
サラッと言うけど、それって凄く寂しいことなんじゃねえのか?
近くにいるのに、普通の人間のは見えないばかりか声だって聞こえないから、誰にも気づかれることはない。
物にも触れられないから、何かやろうと思っても、できることなんてほとんどない。
そういえば、前に見かけた幽霊が、退屈で死にそうだと愚痴っていたことがあったな。
(やっぱり、幽霊なんて深く関わるもんじゃねえな。力になんてなれないのに、こんな話を聞くと、つい構いそうになる)
それは、長年幽霊を見てきた中で何度も思ったことだった。
だから、普段は必要以上に関わることのないように、見えても無視することがほとんどだ。
けど時々、そういうわけにもいかないやつが出てくるんだ。
もちろん有馬先輩も、その中の一人だ。
しかもこの人の場合、俺じゃなくて藤崎としっかり絡んでいるから、よけいにタチが悪い。
「なあ、藤崎のことだけどさ……」
「藍がどうかしたのか!」
それまで落ち着いた雰囲気で話してたのに、藤崎の名前が出てきたとたん、すごい勢いで食いついてきた。
この人、どれだけ藤崎のことを気にかけてるんだよ!
けどまあ、その気持ちは俺だってわかる。
わかるからこそ、わざわざこうしてここまでやって来たんだ。
「どうしたかわからねえから、それを聞きにここに来たんだよ。あいつ、どう見ても朝から元気がねえし、何か悩んでるみたいだった。先輩なら何か知ってるんじゃねえの?」
藤崎があんなに変になる原因なんて、この人以外考えられない。
思えば、今朝藤崎は有馬先輩と一緒に登校してきたけど、その時から違和感はあった。
藤崎のやつ、小さい頃も、先輩が幽霊になってからも、先輩と一緒にいる時は、それしか目に入らないのかって思うくらい、ずっと先輩のことを見てた。
なのに今朝は、不自然なくらい視線を逸らしていて、会話も極端に少なかった。
いつもは腹が立つくらい先輩が好きだって態度が出てるのに、明らかにおかしかった。
「やっぱりそう思うか。避けられてるよな、俺」
やっぱり、有馬先輩も気づいてたのかよ。
先輩は、沈んだような声で呟いた後、ガックリと肩を落とす。
昔の俺にとってこの人は、だいぶ年上の大人なやつで、常に余裕があるって感じの人だった。
けど、今目の前にいるこの人は、見るからに落ち込んでいて、余裕なんてどこにもない。
「先輩こそ大丈夫かよ。藤崎もそうだけど、アンタも相当辛そうだぞ」
「そうか? 自分じゃわからないな」
先輩はそう言うけど、俺には痩せ我慢してるようにしか見えない。
そして、そんな先輩の様子を見て、今まで見てきた何人かの幽霊の姿を思い出さずにはいられなかった。
「気を付けた方がいいぞ。今まで幽霊を見てきてわかったことだけど、幽霊って奴は肉体が無い分、精神の影響が直に出るみたいなんだ。心が痛いとより苦しいし、怒りや悪意が強いとそれに呑みこまれやすくなる。もしかしたら、そんなのを拗らせたのが悪霊ってやつなのかもしれない」
「そうなのか……」
これこそが、俺が幽霊を良く思っていない最大の理由だ。
少し前まで穏やかだった者が、ふとした拍子に怒りや悪意に飲まれて、急に凶暴になることだってある。
そんなの、本人にとっても周りの奴らにとっても、いいことなんて何もない。
「なあ。今の話、藍には内緒にしといてくれないか? 心配かけたくない」
「……ああ。言わねえよ」
言われなくても、何も問題が起こらないうちは、藤崎に伝える気はなかった。
もし藤崎がこれを知ったら、すぐに真っ青になるのが想像できた。そんなのは見たくない。
けど、もしこのまま二人を放っておいて、有馬先輩の心労が溜まっていったら、そんなことにならないとも限らない。
すぐにはそんな心配はないだろうと思っていたけど、今の先輩を見ると、不安にならずにはいられない。
だからこそ、なんとかしねえと。
「それで、藤崎と何かあったのかよ?」
どこまで聞いていいのかなんてわからない。
だけど、藤崎が落ち込んでいて、有馬先輩もこんな調子なら、何かできるとしたら俺だけだ。
そんなの、首を突っ込まずにはいられない。
「ゆうべ、藍と話をして、多分俺がその時言った事にショックを受けたんだ」
「ショックって何言ったんだよ。そもそも、話って何なんだ?」
具体的なことを言ってくれなきゃ、何が何だかよくわからない。
すると有馬先輩は、なんと言えばいいか考えるように、少しの間黙る。
そうして言ったのがこれだった。
「そうだな。なんて言うか、恋バナみたいなものか?」
「こいっ!?」
なんだよそれ!?
元々何があったかなんて見当つかなかったけど、さすがにその言葉は予想外すぎるだろ!
「あんたら、いったい何話してたんだよ。いや、詳しくは喋らなくていいからな。って言うか、絶対喋るな!」
何が悲しくて、藤崎とこの人との間であった恋バナなんて聞かなくてはならないんだ。
実を言うと、全く興味がないって言ったら嘘になるが、しっかり聞いてしまったら、本題を忘れてしまいそうな気がした。
二人がどんな話をして、その結果藤崎がどうして落ち込んでるのか。気にはなったが、それを聞くためにここに来たかというと、微妙に違う。
俺がここにきたのは、理由を聞くためじゃない。
落ち込んでいる藤崎を、なんとかするためだ。
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