売れ残りオメガの従僕なる日々

灰鷹

文字の大きさ
64 / 83
嵐のあと

嵐のあと(4)

しおりを挟む



 今回の陰謀で罪人として連行されたのは、ウェルナー辺境伯と第五騎士団の団長、軍営の従僕長、そしてケースダルム王国からの使者だ。
 副団長と騎士の多くが護送のために都に行くことになったので、現在、城の警備は辺境伯軍が担っている。
 フリッツをはじめとした陰謀に加担した兵は、ラインハルトが言っていたように、人質を取られて辺境伯の指示に従っていただけということで、牢に入れられることもなく、事情だけ聞かれて翌日から部隊に戻ったそうだ。
 人質として地下牢に捕えられていた彼らの家族も、解放されている。

 フリッツにも、これまでのことを謝罪された。
 以前、騎士団長に呼び出されたあと、城内で酔っぱらた兵士に襲われかけたことがあったが、あれも、フリッツのことを信用させるために仕組まれたことだったらしい。
 兵士の中では唯一親しくなれた相手だったから、その事実は悲しくもあったけど、人質を取られて言いなりになるしかなかった苦しい立場も理解できる。
 ラインハルトも無事だったことだし、恨む気持ちはなかった。ユリウスがフリッツを好きになったのはその気さくな人柄が理由で、フリッツのことは今も好きなままだ。

 問題が解決し、城の中に安堵感が漂っているかというと、そうでもない。
 使用人たちは皆、次の城主は誰になるのかと噂し、身の振り方を考えている様子だった。
 今は、カレンや辺境伯夫人、ウェルナー家の縁者は、見張りをつけて城内の部屋に軟禁されているらしい。

 アルミンから真相を聞かされて以来、ユリウスはカレンのことをずっと考えていた。
 ラインハルトは以前から第五騎士団への転属を希望していたと言っていた。前の副団長が行方不明になり、転属を希望していた彼が後釜に選ばれたそうだが、だとすると副団長が行方不明になる以前から転属を希望していたことになる。今回の陰謀とは関係ない。
 転属の理由として考えられるのは、やはりカレンのことだった。

 ラインハルトは、エイギルの結婚式でカレンと出会い、心を奪われたと言っていた。選定の儀に一度も参加していなかったのも、彼女以外、興味がなかったからだろう。
 父親のウェルナー辺境伯のことも、謀反を思いとどまるよう最後まで説得しているようだった。たとえ謀反人として父親が処罰されたとしても、それで彼のカレンへの気持ちが揺らぐとは思えなかった。

 アルミンは「妾としてどこかの貴族に嫁ぐことができれば、お嬢様にとってはそれが一番よさそうだけど……」と言っていた。ユリウスも同意見だ。選定の儀に参加するよりはそのほうがいいだろうと思う。そして、カレンを幸せにできる相手は、ラインハルトをおいていない。
 これまで誰とも結婚せず、選定の儀にも参加して来なかったくらいだから、もしかしたら、一生、正妻は娶らずに、カレンだけを唯一の伴侶とするのかもしれない。
 今は父親の謀反を暴いた憎き仇に思えても、いつの日か、彼の深い愛によって彼女の気持ちも解けだしていくことだろう。

 今はただ、二人で幸せになってほしいと思う。
 ライニ様を、誰よりも幸せにしてあげてほしい。

 ラインハルトに剣が振り下ろされる瞬間、彼が無事でいてくれることだけが唯一の願いだった。それさえ叶えば、他には何もいらないと思った。
 その唯一の願いが叶ったのだから、ユリウスはそれだけで十分だった。


しおりを挟む
感想 21

あなたにおすすめの小説

溺愛アルファの完璧なる巣作り

夕凪
BL
【本編完結済】(番外編SSを追加中です) ユリウスはその日、騎士団の任務のために赴いた異国の山中で、死にかけの子どもを拾った。 抱き上げて、すぐに気づいた。 これは僕のオメガだ、と。 ユリウスはその子どもを大事に大事に世話した。 やがてようやく死の淵から脱した子どもは、ユリウスの下で成長していくが、その子にはある特殊な事情があって……。 こんなに愛してるのにすれ違うことなんてある?というほどに溺愛するアルファと、愛されていることに気づかない薄幸オメガのお話。(になる予定) ※この作品は完全なるフィクションです。登場する人物名や国名、団体名、宗教等はすべて架空のものであり、実在のものと一切の関係はありません。 話の内容上、宗教的な描写も登場するかと思いますが、繰り返しますがフィクションです。特定の宗教に対して批判や肯定をしているわけではありません。 クラウス×エミールのスピンオフあります。 https://www.alphapolis.co.jp/novel/504363362/542779091

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。

逃げた弟のかわりに溺愛アルファに差し出されました。初夜で抱かれたら身代わりがばれてしまいます💦

雪代鞠絵/15分で萌えるBL小説
BL
逃げた弟の身代わりとなり、 隣国の国王である溺愛アルファに嫁いだオメガ。 しかし実は、我儘で結婚から逃げ出した双子の弟の身代わりなのです… オメガだからと王宮で冷遇されていたので、身代わり結婚にも拒否権が なかたのでした。 本当の花嫁じゃない。 だから何としても初夜は回避しなければと思うのですが、 だんだん王様に惹かれてしまい、苦しくなる…という お話です。よろしくお願いします<(_ _)>

愛する公爵と番になりましたが、大切な人がいるようなので身を引きます

まんまる
BL
メルン伯爵家の次男ナーシュは、10歳の時Ωだと分かる。 するとすぐに18歳のタザキル公爵家の嫡男アランから求婚があり、あっという間に婚約が整う。 初めて会った時からお互い惹かれ合っていると思っていた。 しかしアランにはナーシュが知らない愛する人がいて、それを知ったナーシュはアランに離婚を申し出る。 でもナーシュがアランの愛人だと思っていたのは⋯。 執着系α×天然Ω 年の差夫夫のすれ違い(?)からのハッピーエンドのお話です。 Rシーンは※付けます ※画像は男の子メーカーpicrewさんよりお借りしました。

巣ごもりオメガは後宮にひそむ【続編完結】

晦リリ@9/10『死に戻りの神子~』発売
BL
後宮で幼馴染でもあるラナ姫の護衛をしているミシュアルは、つがいがいないのに、すでに契約がすんでいる体であるという判定を受けたオメガ。 発情期はあるものの、つがいが誰なのか、いつつがいの契約がなされたのかは本人もわからない。 そんななか、気になる匂いの落とし物を後宮で拾うようになる。 第9回BL小説大賞にて奨励賞受賞→書籍化しました。ありがとうございます。

回帰したシリルの見る夢は

riiko
BL
公爵令息シリルは幼い頃より王太子の婚約者として、彼と番になる未来を夢見てきた。 しかし王太子は婚約者の自分には冷たい。どうやら彼には恋人がいるのだと知った日、物語は動き出した。 嫉妬に狂い断罪されたシリルは、何故だかきっかけの日に回帰した。そして回帰前には見えなかったことが少しずつ見えてきて、本当に望む夢が何かを徐々に思い出す。 執着をやめた途端、執着される側になったオメガが、次こそ間違えないようにと、可愛くも真面目に奮闘する物語! 執着アルファ×回帰オメガ 本編では明かされなかった、回帰前の出来事は外伝に掲載しております。 性描写が入るシーンは ※マークをタイトルにつけます。 物語お楽しみいただけたら幸いです。 *** 2022.12.26「第10回BL小説大賞」で奨励賞をいただきました! 応援してくれた皆様のお陰です。 ご投票いただけた方、お読みくださった方、本当にありがとうございました!! ☆☆☆ 2024.3.13 書籍発売&レンタル開始いたしました!!!! 応援してくださった読者さまのお陰でございます。本当にありがとうございます。書籍化にあたり連載時よりも読みやすく書き直しました。お楽しみいただけたら幸いです。

番解除した僕等の末路【完結済・短編】

藍生らぱん
BL
都市伝説だと思っていた「運命の番」に出逢った。 番になって数日後、「番解除」された事を悟った。 「番解除」されたΩは、二度と他のαと番になることができない。 けれど余命宣告を受けていた僕にとっては都合が良かった。 2026/02/14 累計30万P突破御礼バレンタインSS追加しました 2026/02/15 累計いいね♡7777突破御礼SS 19時に公開します。 様々な形での応援ありがとうございます!

処理中です...