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エピローグ
エピローグ(2)
しおりを挟む「では、エレナさん、ヘルムートのこと、よろしくお願いします。ギルベルトさんは、薬草園のこと、よろしくお願いしますね」
エレナと一緒にここに来た夫のギルベルトは、今はユリウスの薬草栽培を手伝ってくれている。
夫妻に挨拶し、その隣で椅子に座っている女性へと身を屈めた。声色を一段やわらかくし、声をかける。
「グレータ様。お嬢様……、カレン様に何か伝言はありますか?」
グレータは、元の辺境伯夫人でカレンの血の繋がらない母親だ。ユリウスにとっては、生みの母でもある。今は辺境伯夫人がユリウスになったため、彼女のことは皆、名前で呼ぶようになった。
「……カレン……私の娘……どこ…………」
夫人は今も虚ろな瞳をしていることが多いが、以前よりは会話が可能になったし、食事も少しずつは食べてくれるようになった。
調子がいいときは、ヘルムートとおもちゃで遊んでくれたりもする。
「今も王宮におられますよ。カレン様は出産されたばかりで、しばらくは長旅ができませんから。きっと来年には、お子様を連れて、会いに来てくださるはずです。僕は2週間ほどで帰ってきますから。エレナさんとお茶会をして、待っていてくださいね」
不安げに瞳を揺らしていたグレータが、安堵した様子で頷く。
それを見て、ユリウスは屈めていた腰を上げた。
「ユーリ。もし、お前に難癖をつける貴族がいたら、名前を控えておけ。あとで刺客を送ってやる」
「ちょっと、ライニ様が言うと冗談にならないから、やめてください!」
ラインハルトとユリウスのやりとりに、皆がどっと笑う。
ユリウスが今回都に行くのは、宮廷議会に陳情書を提出するためだ。提出するだけでなく、議会での発言の機会も与えられている。
陳情書の内容は、選定の儀の廃止と、それに伴うオメガに対する公助を要望したものだ。
平民のオメガにだけ結婚の自由がないのはおかしい。
その思いで、この二年間、国中の色んな立場の人達と手紙のやりとりをし、支援者を増やしてきた。
全部、『ユーリのやりたいようにやったらいい』とラインハルトが背中を押してくれたお陰だ。
本当は去年の選定の儀に間に合わせたかったけど、去年は出産と重なって都に行くことができなかったため陳情書のみ送ったら、議題には上げてもらえたが法を廃止することまでは叶わなかった。
その際に問題点として挙げられたのが、オメガが市中で暮らすことの危険性だ。選定の儀は結婚の自由がない代わりに、定期的な発情期に悩まされるオメガが、王族や貴族の庇護下に入ることで身の安全を保障されるという側面もあった。
そこで、それからの一年は、番を亡くした未亡人のオメガなど、発情抑制薬を必要としている人たちにユリウスが主導で開発した発情抑制薬を試してもらい、その効果をまとめた報告書も添えることにした。
その報告書によれば、発情期の際に安全に隔離できる環境があり、加えて発情抑制薬があれば、市中で暮らすことも十分可能と考えている。
もちろん、発情期の程度によってはそれが難しいオメガもいて、職業や結婚相手を自分で選ぶよりも、貴人の庇護下に入りたいと願う人もいるだろう。ただ少なくとも、選定の儀に参加することを希望制にすることは要望したかった。
エイギルは他の貴族に働きかけてくれたし、国王陛下の妾となったカレンは、宮廷内の他のオメガの意見を取りまとめてくれた。意外にも、王族や貴族の妾となったオメガたちにも、発情抑制薬は重宝されていた。
そういった人たちの助けもあって、今年は議会での発言の機会ももらえることになった。
ユリウスはヘルムートの頬にキスをし、ラインハルトとも、少し長めのキスをして、赤くなった顔で馬車に乗り込んだ。
護衛の兵たちが若き領主に敬礼し、馬に跨る。
見送りに出てきたのは、家族や近しい人達だけじゃなかった。
この城で働くたくさんの兵士や使用人たちが、城の正面の入り口から城門に向かって、ずらりと並んでいた。
「ユーリ様、頑張って!」
「応援しています!」
皆、口々に応援の言葉を送ってくれる。
この城には、ユリウスのことを『辺境伯夫人』と呼ぶ人は一人もいない。皆、愛称で呼んでくれる。
たかだか陳情書を提出しに行くだけなのに、まるで魔物退治に行く勇者のように扱われるのは、気恥ずかしくもあったが、嬉しくもあった。
この一年、ラインハルトと相談しながら、城で働く人たちの負担を減らし、効率よく同じ成果が得られるように、試行錯誤してきた。
その変革が、実際に働いている人達に歓迎されているのかもしれない。
ユリウスは小窓から顔を出し、見送りの人たちの姿が見えなくなるまで、手を振り続けた。
早春の風は肌寒かったが、窓はしばらく開けたままにしておいた。
主のもとから逃げ出し、血の繋がらない子を抱え、かつての恋人を頼って母が歩いた道。そう思ったら、流れる景色をもうしばらく見ていたくなった。
全ての人達が、誰かと恋をして、愛し合って、愛する者同士で結婚できる世の中になればいい。
それは今のユリウスにとって、願いではなく目標であった。
………… 『侍従でいさせて』 fin. …………
最後までお付き合いくださり、ありがとうございました!
書籍化された作品について、近況ボードにお知らせとお願いを載せておくので、お時間のある方はそちらも覗いていただけると嬉しいです(*´▽`*)
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なお様
こちらまでお読みくださり、またまたあたたかい感想までお寄せくださって、ありがとうございます!
「めちゃくちゃ読みやすいし話も面白い」と仰っていただけて、めちゃくちゃ嬉しかったです🥹✨
「ユーリとライニ2人の愛やその周りの人たちの愛情に涙した」と仰っていただき、この話を書けてよかったと改めて思いました😊💕
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またご縁がありましたら幸いです!!🥰
ナカムラ様
長文の感想をありがとうございます!!
そうなんですよ。😅国家レベルのごたごたの陰(?)で、大昔のとりかえばや事件が判明していました😅💦
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仰るように、ユーリが連れ去られてなかったら、子供の頃、殿下と会うこともなかったし、家族に愛されて育ったので、ユーリにとってはそのほうがよかったのかもしれません😅とばっちりを追うことになったカレン(腹違いの妹)は可哀相でしたが😢
殿下は言葉足らず過ぎるのと、ユーリは気を使って余計なことを言ってしまうので、本当「話せばわかる」な二人でした😂会話、大事!
「承認不要」の感想へのお返事もちょっとだけ。
ユーリにパンツ洗わせていた騎士達は、殿下にパンツを全部焼却処分されたことと思います😂
ご自身の創作でもお忙しい中、こちらまで短期間で一気読みしてくださり、本当にありがとうございました!!
こちらはだいぶ前に完結してすっかり存在を忘れていたのですが、熱い感想を送っていただき、改めて、これを書けてよかったと思いました😊💕
ご縁に感謝します🥰
どうかナカムラ様もご自愛なさって、これからも創作を楽しんでくださいね😊💕