3 / 11
湖のほとりで
しおりを挟む
どうやって屋敷に着いて自分の部屋まで戻ったのか、全く覚えていない。途中でメイドのリンが、何か必死に話していたような気がするけどこれっぽっちも思い出せない。
ベッドに腰掛けて、ぼーっと窓の外の湖を見つめる。
湖の水面に月の光が反射して、美しく煌めいている。
そういえば、昔、レン様と同じ景色を見たことがあったなあ。
2人で窓枠に腰掛けて、クッキーを食べながら。
あの時はちょうど、満月の日だった。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
その日は雲が一つもない、よく晴れた日で、満天の星空の中にぽつんと一つ、月が浮かんでいた。
湖に歪んで映っている月がまた綺麗で、せっかくレン様といたのに、何も話さず二人でただただ湖を眺めていた。
最初に口を開いたのはレン様だった。
「初めて見たけど、とても綺麗な景色だね。とても幻想的で素晴らしいよ。ルナはいつもこの湖を見ているのか。羨ましいな。」
ふふっと笑いながら、優しく褒めてくれたことが酷く嬉しくて、私もつられて微笑んだ。
「いつでもいらっしゃって下さい。私も来て頂けると、とても嬉しいです。」
「ほんとに?じゃあ遠慮なく来ようかな。」
今思えば冗談だったのだろうけど、その言葉をレン様と会える日が増える!なんて馬鹿正直に受け取った私は、約束ですよ?とかなんとか言って、指切りまでしてもらった。
風が首元をさらう。夜風は冷たい。いくら晴れていたといっても、やっぱり冷えるものは冷える。でも、それでも窓は閉めなかった。この時間が永遠に続いてほしかったから、窓を閉めたら夢が終わってしまう気がしていた。
ずっと2人でいたらどれだけ幸せなのだろう……世界で2人だけになったとしても、レン様がいる限り私は生きていられるだろう……そんな妄想じみたことを考えながら、湖を見つめるレン様を見ていた。
「そういえばルナってラテン語で月の女神って意味だったよね。」
ふとレン様がそう呟いた。
「え、ええ…。そうみたいですね……。気に入っていますが、でも女神なんて、少し差し出がましいです。」
もしも私が月の女神……だったとしたら、レン様はなんだろう。
みんなに好かれて美しくて完璧で、まるで太陽ね。
「…レン様は、太陽みたいです。何でもできて、優しくて、皆からの信頼もあって……」
まるで私とは真逆で。
そう言うと、レン様はじっと私を見つめて艶のある黒髪をさら、と靡かせ、そしていきなり窓を大きく開け放った。
「わっ!!え、レン様?どうなさいました?」
突然吹き込んでくる夜風に驚いて、クッキーがこぼれないように急いでテーブルに移すと、レン様は窓枠に腰掛けながら笑って言った。
「ルナ、さっき私はこの湖はとても美しいと言ったね。いつまでも見ていられると。でも君と話して、この景色を君も愛していると知った時、もっと美しく見えた……
君の好きなもの、君の得意なこと、きっと私はまだ知らないことが多い。だから知りたい。君のことをもっともっと知りたいんだ。なぜなら、君のことが好きだから。
こんなことを言ったら傲慢だと叱られてしまうかもしれないけれど……でも伝えたいんだ。
…ルナ、僕が好きな君のことを、君が君自身が、貶すことはしないでくれ。」
君は僕の自慢の婚約者だ。
そう言って、目を細めて笑ったレン様は、月の光に照らされて輝いていて、湖なんかとは比べものにならないくらいに綺麗だった。
そして私は、柄にもなく泣き出しそうになっていた。
大好きな人が自分を認めてくれている。
微笑んでくれている。
その事が嬉しくて嬉しくて、しょうがなかった。
古くて大好きで大切だった思い出。
もう忘れてしまおうか。大切なまま。綺麗なまま。
きっとその方が幸せだから。
ベッドに腰掛けて、ぼーっと窓の外の湖を見つめる。
湖の水面に月の光が反射して、美しく煌めいている。
そういえば、昔、レン様と同じ景色を見たことがあったなあ。
2人で窓枠に腰掛けて、クッキーを食べながら。
あの時はちょうど、満月の日だった。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
その日は雲が一つもない、よく晴れた日で、満天の星空の中にぽつんと一つ、月が浮かんでいた。
湖に歪んで映っている月がまた綺麗で、せっかくレン様といたのに、何も話さず二人でただただ湖を眺めていた。
最初に口を開いたのはレン様だった。
「初めて見たけど、とても綺麗な景色だね。とても幻想的で素晴らしいよ。ルナはいつもこの湖を見ているのか。羨ましいな。」
ふふっと笑いながら、優しく褒めてくれたことが酷く嬉しくて、私もつられて微笑んだ。
「いつでもいらっしゃって下さい。私も来て頂けると、とても嬉しいです。」
「ほんとに?じゃあ遠慮なく来ようかな。」
今思えば冗談だったのだろうけど、その言葉をレン様と会える日が増える!なんて馬鹿正直に受け取った私は、約束ですよ?とかなんとか言って、指切りまでしてもらった。
風が首元をさらう。夜風は冷たい。いくら晴れていたといっても、やっぱり冷えるものは冷える。でも、それでも窓は閉めなかった。この時間が永遠に続いてほしかったから、窓を閉めたら夢が終わってしまう気がしていた。
ずっと2人でいたらどれだけ幸せなのだろう……世界で2人だけになったとしても、レン様がいる限り私は生きていられるだろう……そんな妄想じみたことを考えながら、湖を見つめるレン様を見ていた。
「そういえばルナってラテン語で月の女神って意味だったよね。」
ふとレン様がそう呟いた。
「え、ええ…。そうみたいですね……。気に入っていますが、でも女神なんて、少し差し出がましいです。」
もしも私が月の女神……だったとしたら、レン様はなんだろう。
みんなに好かれて美しくて完璧で、まるで太陽ね。
「…レン様は、太陽みたいです。何でもできて、優しくて、皆からの信頼もあって……」
まるで私とは真逆で。
そう言うと、レン様はじっと私を見つめて艶のある黒髪をさら、と靡かせ、そしていきなり窓を大きく開け放った。
「わっ!!え、レン様?どうなさいました?」
突然吹き込んでくる夜風に驚いて、クッキーがこぼれないように急いでテーブルに移すと、レン様は窓枠に腰掛けながら笑って言った。
「ルナ、さっき私はこの湖はとても美しいと言ったね。いつまでも見ていられると。でも君と話して、この景色を君も愛していると知った時、もっと美しく見えた……
君の好きなもの、君の得意なこと、きっと私はまだ知らないことが多い。だから知りたい。君のことをもっともっと知りたいんだ。なぜなら、君のことが好きだから。
こんなことを言ったら傲慢だと叱られてしまうかもしれないけれど……でも伝えたいんだ。
…ルナ、僕が好きな君のことを、君が君自身が、貶すことはしないでくれ。」
君は僕の自慢の婚約者だ。
そう言って、目を細めて笑ったレン様は、月の光に照らされて輝いていて、湖なんかとは比べものにならないくらいに綺麗だった。
そして私は、柄にもなく泣き出しそうになっていた。
大好きな人が自分を認めてくれている。
微笑んでくれている。
その事が嬉しくて嬉しくて、しょうがなかった。
古くて大好きで大切だった思い出。
もう忘れてしまおうか。大切なまま。綺麗なまま。
きっとその方が幸せだから。
0
あなたにおすすめの小説
悪意には悪意で
12時のトキノカネ
恋愛
私の不幸はあの女の所為?今まで穏やかだった日常。それを壊す自称ヒロイン女。そしてそのいかれた女に悪役令嬢に指定されたミリ。ありがちな悪役令嬢ものです。
私を悪意を持って貶めようとするならば、私もあなたに同じ悪意を向けましょう。
ぶち切れ気味の公爵令嬢の一幕です。
許すかどうかは、あなたたちが決めることじゃない。ましてや、わざとやったことをそう簡単に許すわけがないでしょう?
珠宮さくら
恋愛
婚約者を我がものにしようとした義妹と義母の策略によって、薬品で顔の半分が酷く爛れてしまったスクレピア。
それを知って見舞いに来るどころか、婚約を白紙にして義妹と婚約をかわした元婚約者と何もしてくれなかった父親、全員に復讐しようと心に誓う。
※全3話。
はじめまして、私の知らない婚約者様
有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。
見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。
けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。
ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。
けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。
この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。
悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに?
※他サイトにも掲載しています。
【完結】仲の良かったはずの婚約者に一年無視され続け、婚約解消を決意しましたが
ゆらゆらぎ
恋愛
エルヴィラ・ランヴァルドは第二王子アランの幼い頃からの婚約者である。仲睦まじいと評判だったふたりは、今では社交界でも有名な冷えきった仲となっていた。
定例であるはずの茶会もなく、婚約者の義務であるはずのファーストダンスも踊らない
そんな日々が一年と続いたエルヴィラは遂に解消を決意するが──
王が気づいたのはあれから十年後
基本二度寝
恋愛
王太子は妃の肩を抱き、反対の手には息子の手を握る。
妃はまだ小さい娘を抱えて、夫に寄り添っていた。
仲睦まじいその王族家族の姿は、国民にも評判がよかった。
側室を取ることもなく、子に恵まれた王家。
王太子は妃を優しく見つめ、妃も王太子を愛しく見つめ返す。
王太子は今日、父から王の座を譲り受けた。
新たな国王の誕生だった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる