それでも貴方を愛してる

文字の大きさ
9 / 11

フラシーside

しおりを挟む

「お姉ちゃん、私、今日とても素敵な人に会ったの。」

そう言って頬を染め、はにかむように笑った妹。

小さな頃から病弱で使用人の助けなしではまともに出歩くことすら出来ない、か弱い妹。
でも誰にでも愛想が良くて、気立ても良くて、頭も良かったから、みんなに好かれていた。

「あ、姉の方だ。」

数え切れない程言われ続けた言葉。
貴族のパーティーに出席すると、双子のこの顔のせいか、私を妹だと勘違いして寄ってくる馬鹿が大勢いた。でもそれも最初だけ。
姉の私だと気づくと、みんな残念そうな顔を隠しもしないで去っていく。
両親でさえ、あの子がもっと健康だったら、あの子がもっと元気に生まれていればなんてタラレバ、しょっちゅう話していた。

私だって頑張った。勉強も作法もダンスも、誰よりも完璧に、誰よりも美しく、みんなに認めてもらうために頑張ってきた。

それなのに、結局最後に選ばれるのは私じゃない。

今日だってそう。
妹が20歳になったお祝いにと、両親に連れられて行った街でプロポーズされてきたのだ。
妹が周りを魅了するのは分かっていたけれど、突然街中でプロポーズされたなんて言われたから、流石に驚いた。

「とってもかっこいい人だったの。銀の髪に紫の瞳で、確か名前は、、ウィルフレッドって言っていたわ。」

ウィルフレッド?まさか、ウィルフレッド・アーデン??
どんなに求婚されても靡かないと言われていたあの人が?
国の中でも一二を争う程の権力と財を持っているアーデン家。
その長男のウィルフレッド・アーデン。
容姿端麗、頭脳明晰、おまけにアーデン家の跡取りと聞いたら、結婚を申し込まない令嬢はいなかった。


それなのに、どうして、よりによって、妹なの。

「私、いきなり一目惚れされたって言われて、それで私もその人のこと好きになっちゃって、、」

顔を真っ赤にさせて恥ずかしそうに目を伏せる妹は、恋する乙女そのものだった。
初恋だったのだろう。初恋は実らないと言うけれど、例外もいるのね。

もじもじと目の前で何か言いたそうに視線を送ってくる妹。そして、なにか意を決したように切り出してきた。

「あのねっ!!!お姉ちゃんは恋愛経験豊富って聞いたの。
その、お姉ちゃん凄い綺麗だし、当たり前だよね……。
だから、ね、、あの、あ、アドバイスが欲しいの!わ、私、あの時勢いで婚約しちゃって……。でも、何か今更不安になってきちゃって、、。」

そう言って、また俯く妹。

何を今更と思ったけど、口には出さず、その代わり私は、諭すように優しく言った。


「不安がることないわ。そのウィルフレッド様は、そのままのあなたを好きになったんでしょう?
だからあなたは、何も心配しないで、そのままでいればいいのよ。」


我ながら反吐が出そうな優しい言葉。
そんなこと思っているわけないじゃない。
私にはそんなこと、誰も言ってくれなかったのに。

でもあなたには、幾らでもいるでしょう?
優しくしてくれる人が、愛してくれる人がいるんでしょう?

恋愛経験なんて一つもない。きっと使用人達が私への皮肉を込めて妹に言ったのだろう。そして純粋無垢な妹は何も疑わずに、私にアドバイスを求めてきた。

ほんと、笑えない。


けれども、純粋な妹は、私の言葉に目をうるうると潤ませ、今にも泣き出しそうな顔で笑った。


「お姉ちゃんっ!!!そうね、きっとお姉ちゃんがそう言うんだから間違いないわ!
私、自信を持たなきゃよね!やっぱりお姉ちゃんに聞いて正解だったわ!私の事1番分かってくれているのはお姉ちゃんよ!」

お姉ちゃん大好き!

そう叫んで、ぎゅっと私を抱きしめた。
ひくり、と口の端が引き攣る。
込み上げる不快感と嫌悪感。


ああ、私もみんなのように貴方をただ愛すことができたなら、幸せだったのにね。


口から出かかった、タブーの言葉達を呑み込んで私は妹の背中に腕を回す。

「私も、貴方が大好きよ。」

そう言って笑った。


それから何週間か後に、妹は結婚式を挙げた。
それはそれは盛大な式で、たくさんの人が祝福して、二人の結婚を喜んだ。

私は隅の方でワインをちびちび飲んでいた。
白いウェディングドレスを身にまとい、幸せそうな表情で笑う妹。
私とは正反対。

いつからか、私は派手な服を好んで着るようになった。派手なメイクに際どいドレス。
寄ってくるのは体目当ての男だけ。
妹のように、本気で愛してくれて私の所へ来る人はいない。
でもそれで良かった。それで気が紛れたから。
両親は激怒して、今すぐその売女のような格好を止めなさいと言ったけれど、止めるつもりなんてさらさらなかった。

誰も認めてくれないなら、もう今までのような努力も関係ない。
やったって意味が無いことをする虚しさは、もう十分知った。
だから、もうどうでもよかった。

涙を流して喜んでいる父と母。それを見て、貰い泣きをしている妹。泣いている妹の肩を抱いて、支えているウィルフレッド様。

下らないわね。馬鹿みたい。

まだ盛りあがっている会場に背を向けて、1人屋敷へと帰った。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

悪意には悪意で

12時のトキノカネ
恋愛
私の不幸はあの女の所為?今まで穏やかだった日常。それを壊す自称ヒロイン女。そしてそのいかれた女に悪役令嬢に指定されたミリ。ありがちな悪役令嬢ものです。 私を悪意を持って貶めようとするならば、私もあなたに同じ悪意を向けましょう。 ぶち切れ気味の公爵令嬢の一幕です。

許すかどうかは、あなたたちが決めることじゃない。ましてや、わざとやったことをそう簡単に許すわけがないでしょう?

珠宮さくら
恋愛
婚約者を我がものにしようとした義妹と義母の策略によって、薬品で顔の半分が酷く爛れてしまったスクレピア。 それを知って見舞いに来るどころか、婚約を白紙にして義妹と婚約をかわした元婚約者と何もしてくれなかった父親、全員に復讐しようと心に誓う。 ※全3話。

はじめまして、私の知らない婚約者様

有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。 見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。 けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。 ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。 けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。 この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。 悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに? ※他サイトにも掲載しています。

悪役令嬢の末路

ラプラス
恋愛
政略結婚ではあったけれど、夫を愛していたのは本当。でも、もう疲れてしまった。 だから…いいわよね、あなた?

王が気づいたのはあれから十年後

基本二度寝
恋愛
王太子は妃の肩を抱き、反対の手には息子の手を握る。 妃はまだ小さい娘を抱えて、夫に寄り添っていた。 仲睦まじいその王族家族の姿は、国民にも評判がよかった。 側室を取ることもなく、子に恵まれた王家。 王太子は妃を優しく見つめ、妃も王太子を愛しく見つめ返す。 王太子は今日、父から王の座を譲り受けた。 新たな国王の誕生だった。

【完結】仲の良かったはずの婚約者に一年無視され続け、婚約解消を決意しましたが

ゆらゆらぎ
恋愛
エルヴィラ・ランヴァルドは第二王子アランの幼い頃からの婚約者である。仲睦まじいと評判だったふたりは、今では社交界でも有名な冷えきった仲となっていた。 定例であるはずの茶会もなく、婚約者の義務であるはずのファーストダンスも踊らない そんな日々が一年と続いたエルヴィラは遂に解消を決意するが──

皆様覚悟してくださいませ。偽聖女の義妹から全て取り戻します。今まで受けた仕打ちは倍にしてお返し致します。

くろねこ
恋愛
「殴られても、奪われても、祈れば治るから大丈夫」 ――そう思い込まされて育った公爵令嬢オリビア。 しかし、偽聖女を名乗る義妹に階段から突き落とされた瞬間、 彼女の中で“何か”が完全に目覚める。 奪われた聖女の立場。 踏みにじられた尊厳。 見て見ぬふりをした家族と神殿。 ――もう、我慢はしない。 大地そのものに影響を与える本物の加護を持つオリビアは、知略と魔法で屋敷を制圧し、偽りを一つずつ洗い流していく。 敵意を向けた者は近づけず、逆らった義母は“環境”に叱られ、王太子は腹を抱えて大笑い。 「奪われたなら、取り戻すだけです。倍……いえ、一万倍で」 これは、偽りの聖女からすべてを奪い返し、本物が“正しい場所”に立つ物語。 ざまぁ好き必読。 静かに、確実に、格の違いを見せつけます。 ♦︎タイトル変えました。

【完結済】監視される悪役令嬢、自滅するヒロイン

curosu
恋愛
【書きたい場面だけシリーズ】 タイトル通り

処理中です...