Destinyバトル ~勇者なんて御免被る!~

いちごさき

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1 未発見ダンジョン見つけちゃいました

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 人間、生きていれば時にはツイてないこともある。

 俺の場合、多分……今がそれ。




 旅用のブーツを新調したのが昨日。

 準備万端、意気揚々と街を出たのが二時間前。 

 洗濯桶でもひっくり返したような雨が降り出したのが、一分前。

 ちなみに三分前まで、樹々の間から覗く空は青一色だった。



「天気予報の嘘つきぃぃぃぃ!!!!!」

  

 もれなく頭からブーツの先まで全身濡れネズミとなった俺は、湧き上がるどうしようもない憤りを、灰色に染まった空にぶつけた。





 俺の名前はサラウス・ディメル。

 ソロの冒険者で、冒険者ランクはC。

 本当の職業は『精霊魔術師』なんだけど、ギルドの登録では『剣士』ってことにしている。

 なんで職業詐称しているのかって?

 そこには個人にはどうすることも出来ない、深ぁぁぁぁぁい訳があった。







 一昔前まで、この世界には古代魔術と精霊魔術しか存在しなかった。





 古代魔術は代々一子相伝で受け継がれているもので、詳細はあまり世間に知らされていない。

 その特徴として、古代ルーン文字や魔法陣などが書かれた書物や道具を用いて術を行使するらしいが、やはり詳細はわからないことが多かった。

 他にもハーブと呪いまじないを合わせて薬を作製したり、信託や予言、他にも占術や雨乞いの儀式を行ったりもしている。

 むしろこちらの方が、一般的なイメージかもしれない。

 



 一方、精霊魔術師は一子相伝ではなかったが、代わりに生まれつき『精霊眼』を持っている必要があった。

 精霊眼とは、通常姿を見ることができない精霊を『見る』ことができる特別な目のことだ。精霊眼を持つ子供は自然と精霊と契約して、そのまま精霊魔術師として成長していくのが通例だった。

 そして精霊と契約すれば、魔術を力を使うことが可能になる。



 火の精霊と契約すれば、一瞬で火を起こすことができる。

 水の精霊と契約すれば、干上がった貯水池に水を満たすことができる。

 土の精霊と契約すれば、未開墾の土地をすぐさま耕すことができる。



 そうやって様々な場面で、精霊魔術師は多くの人々に重宝されていた。






 しかし、ある技術の誕生を切っ掛けに、彼らの存在は必要とされなくなった。





 それが『魔法』だ。 

 魔法は、生まれ持った才能なんて関係なかった。

 魔法は魔力さえ持っていれば、呪文唱えるだけで誰でも術を行使することが可能だったのだ。

 当然、人々は便利な魔法という技術に飛びついた。

 火起こし、給水、土地の開墾。

 行使する存在が増える毎に新しい魔法技術が生み出された。ついには、魔法を魔物の核である魔石に封じて活用する、家庭用機器『魔具』なんてものまで発明された。

 人間は、便利だと解ればいくらでも研究し、工夫し、生み出すことが可能な生き物だ。

 気づけば、それまで精霊魔術師が行っていたほとんどのことが、当り前のように魔法で賄えるようになっていた。

 まさに魔法は、それまで人々が求めていた画期的な技術だったのだ。

 人々の生活はどんどん魔法技術によって豊かに、便利になり、逆に精霊魔術師の存在は排除され、自然とその数は減っていった。




 だがある時、人々は精霊魔術師がまだ自分達には必要であることに気付いた。

 それはゴルゴダ大陸にある五大大国のうちの三つ、南の国アンカボルト・西の国ウィクペイジア・中央国ホーリィスフィオによる戦争が勃発した時のこと。

 後の歴史で『三国戦争』と呼ばれるその戦いは、そのまま四年間続いた。

 多少の差はあれど、三国の国力・兵力・軍事力が拮抗していたため、勝敗が決まらなかったからだ。

 戦争が三国間であったことも、戦争が長引いた原因となった。



 その戦いに終止符を打ったのは、中央国ホーリィスフィオが投入した、たった30人の『精霊魔術師部隊』だった。







 勝敗は、精霊魔術師部隊が放った一発の大魔術で決まった。






 その時、人々は知ったのだ。

 精霊魔術と魔法の圧倒的な違いを。

 

 魔法は、呪文を通じて術を発動させているため、強力な術を使うにはどうしても詠唱が長くなる。

 鍵言葉は媒介、呪文は発動させる術へと繋ぐ道。それが強力な術をほど呪文は長くなり、自然と発動までに時間がかかる。

 生活補助として使用するならば時間のロスなどあまり問題にならないが、それが武力行使の場となれば、話は変わる。

 時間のロスは、戦場では大きな命取りになる。

 どんなに屈強な兵士を揃えても、膨大な数の魔法使いを集めたとしても、そこにたった一発の大魔術が落とされるだけで、戦況がひっくり返ってしまうのだ。

 そして、もう一つ。

 精霊魔術と魔法では、たとえ同じ効果を狙っても、威力に多大な力の差が生じるということ。

 例えば同じファイヤーボールを放ったとしても、明らかに精霊魔術の方が魔法よりも断然威力があったのだ。

 その理由は簡単だった。

 魔法は、精霊との契約ではなく、呪文を媒体として術を発動させていたからだ。

 術を発動するには、必ず世界に存在するエネルギーを使用することになる。

 精霊魔術師は、契約した精霊から直接エネルギーを供給してもらうため、術の名称さえ唱えれば、すぐさま術が発動することが出来る。

 しかし魔法は、鍵言葉を並べた呪文という媒体を通してエネルギーとの道を作り、最終的に名称を唱えることで術を発動させる。

 言ってしまえば、エネルギーの正当な権利者である精霊を差し置いて、無理矢理術を使っているのだ。

 その効果が半減するのは、考えてみれば当然のことだった。

 このことが公となった時、人々は戦慄した。

 魔法の限界。

 そして、精霊魔術師の力の偉大さと、その存在の恐ろしさに。





 三国戦争終結後、各国は精霊魔術師の確保、精霊眼を持つ子供の確保に躍起になった。

 何せ、精霊魔術師は国力とほぼ同等。国がどれだけ精霊魔術師を保有しているかによって、国の優劣が変わるのだ。

 その後、精霊魔術師は各国に拉致され、精霊眼を持つ子供は必ず国に報告することが義務付けられた。

 おかげで今では街で精霊魔術師を見かけることも無いし、精霊眼を実際に見たという人もまず居ない。

 もしかしたらどこかに隠れて存在しているかもしれないが、世界の情勢がこの状況では、人前に出てくることはほぼ無いだろう。







 そんなわけで、俺が精霊魔術師だってことが世間にバレるのは、かなりマズいことなのだ。

 じゃあ、何で俺は精霊魔法師なのに平然と冒険者してるのかっていうと、単に偶然に偶然が重なっただけ。




 俺は本当の親を知らない。

 いわゆる孤児ってやつで、西の国ウィクペイジアにある森の中で一人泣いていた俺を、偶然通りかかった育ての親であるじいちゃんが拾って育ててくれたのだ。

 じいちゃんは当時から人里離れた山奥に住んでいて、俺は物心がつくまで、じいちゃん以外の人間と会うことは無かった。

 じいちゃんはじいちゃんで、長いこと仙人みたいな暮らしをしていたから、そんな義務が存在することすら、知らなかったらしい。

 俺が精霊魔術が世間にバレるとマズいと知ったのは、10歳の時。旅好きで人間の世界通な妖精が、珍しく親切に教えてくれたのだ。



『お前、外で精霊魔術師ってバレたら一発で捕まるゾ』



 いやー衝撃だったね。

 え、俺って犯罪者?殺される??ってパニックになったもんだ。それでよく調べてみたらさっきのことに繋がって、あーこれは隠さないと世間歩けないわーってなった。

 そんな偶然が重なって、そのまま国に捕まることなく十五歳を迎えた俺は、万全の準備をしてから独り立ちを決意。

 ソロの冒険者になって、先月二年目を迎えましたってわけ。




 そんな、『冒険者二年目おめでとう記念!』として購入した銀貨47枚のブーツが、まさかたった一日で泥まみれになるなんて。

 通常のブーツが大体銀貨一〇枚から二〇枚くらいだから、約二倍の金額。

 希少な黒蜥蜴の上皮が使われた上物だったのに。



「ホント、ツイてねぇ……」



 何とか近くに洞窟を見つけてそこに逃げ込んだ俺は、溜息を吐きながら岩場にどっかりと座り込んだ。

 低くなった視線の先では、今だドカドカと雨音とは思えない量の雨が降り続いている。地面には水溜まりというより、小さな川が出来始めていた。

 身体はくまなくびしょ濡れ状態。このまま放置すれば、風邪をひくのは一目瞭然だ。

 しかしここまで濡れると、布で拭くより服を全部脱いで絞った方が早いのだが、それより更に手っ取り早い方法を取ることにした。

「おーいフェン、ちょっと乾かしてくれ」

 契約している精霊の名前を口にすると同時に、目の前にポンッと膝丈ワンピース姿の小さな赤色の精霊が姿を現す。

 精霊は皆一様にして容姿が整っている。例外に漏れずフェンも可愛い顔をしているが、その表情は明らかに不機嫌を露わにしていた。

『……ちょっと、フェンを乾燥魔具代わりにするのやめてくれない⁉』

 乾燥魔具とは、濡れた洗濯物を箱に入れるだけであっという間に乾かしてくれる、便利な機器のことだで、日常の洗濯物を干す手間が無くなったと、巷では主婦に大人気だった。

「悪い悪い。急に降ってきたもんだから回避できなかった。てことで、いつもの頼む」

『キーっ!アンタ全っ然悪いと思ってないでショ!』

 マッチ棒のようにか細い手足をバタバタさせながら抗議してくるが、ちょっとうるさいくらいで迫力は無い。

「あとでクッキーやるからさ。サクッと全身頼むよ」

『フン、そうやって毎回つられたりしないんだから!……キャラメル味じゃなきゃ、ぜぇったいイヤよ!』

「ハイハイ。ちょうど街でたくさん仕入れたから大丈夫」

 フェンは焼き菓子が大好きだ。特にキャラメルが練り込まれたクッキーが、最近お気に入りらしい。

 表情的には今だ不機嫌さを醸し出しているが、頬はうっすら赤く染まっているから、何とか懐柔できたようだ。

 よしよし、単純な奴で助かるぜ。 

『…今なんか、失礼なこと思わなかった?』

「とんでもない!フェン様の偉大な力にただただ平伏しますよ」

『わっざとらしい……ハァ、もういいわ』

 俺とのやり取りが面倒になったのか、フェンは小さなため息と共にサッと手を挙げた。

 瞬間、俺の身体を炎が包み込む。

 ジュワッと水が蒸発する音が鳴り、同時に俺の髪や服、新品のブーツまでもが瞬く間に乾いていく。

「ほい、お礼のクッキーな」

 クッキーを彼女の目の前に取り出すと、フェンはバッとそれを引っ手繰るように受け取り、もう返さないぞと言わんばかりに威嚇してくる。

 いやいや、クッキー一枚くらい素直に受け取れよ。誰も取らないし。

「にしても。相変わらず絶妙の炎コントロールだな。乾かし過ぎず、髪も服も傷んでない」

『あったり前じゃない!洗濯の度に乾燥魔具扱いさせられていれば、いい加減上手くもなるわよ!』

 初めの頃はコントロールが上手くいかなくて良く髪や服を焦がされたのだが、まぁそれは黙っておこう。

 俺達ソロの冒険者にとって、清潔さを保つことは意外と重要だ。何せ一人なので、いざという時にけがや病気で動けませんじゃ、話にならないからだ。

 なので、俺はなるべく小まめに洗濯するよう心掛けているし、身体の汚れも風呂に入らなくても汚れが落とせる精霊魔術【洗浄(ウォッシュ)】を、水の精霊と開発した。

 それを使うともれなく全身が濡れるから、その度にこうして喚び出しているので、不機嫌な態度になるのも、わからなくもない。

 だからといって、今更やめる気もないけど。

 ソロは無理しない!不潔にしない!が、もっとも重要なのだ。

「とにかくありがとな、また頼むよ」

『だっかっら、もっとマトモなことで喚びなさいよ!』

 最後まで不機嫌なまま姿を消したフェンに「スマン無理だ」と心の中で返しながら、先程と変わらない空模様を見上げた。

 これはもしかしたら、ココで夜を明かす羽目になるかもしれない。

 仕方なく洞窟の奥へと視線を向けると、それなりに深さがあるようで、入り口からでは奥の様子が見えなかった。

 時間は昼前。このままぼんやり雨が止むのを待つだけってのは、あまりにも時間がもったいない。

「シフ、」

 今度は風のすなお精霊の名前を喚ぶと、ふわりと微風と共に緑の精霊が姿を現す。

『ハイハ~イ、今度はボクの出番かな?』

 風の精霊シフは契約している精霊の中で一番見た目が幼く、人間でいうと10歳前後くらいだ。ただし、俺との付き合いは一番古い。

 元来精霊に性別は無いし、歳を取るという概念もない。ただし、その精霊が元来持つ性質や趣味嗜好によって、形成される外見や中身に個性が出るらしい。

 シフの場合、幼児向け書物『探検家ジーンの大冒険』が昔から大好きで、格好も一体どうやって調達したのか、物語の主人公と同じモスグリーンのシャツと短パン、ライト付きの安全帽子、腰には水稲までぶら下げていた。本当はナップザックも背負いたいらしいが、残念ながら羽が邪魔で諦めていた。

「悪いけど、この洞窟を軽く見てきてくれないか?」

『偵察?もっちろんいいよ~』

 俺の願いにシフは嬉しそうに笑い、その場でクルリと回転する。

「ああ。どれくらいの規模なのかと、罠が無いかを調べてくれ」

『まさに洞窟探検だね~ジーンの2巻『バビブベ迷宮を制覇しよう!』と一緒だ!あ、なら視覚共有もしておく?』

「いや、今回は結果報告だけでいい」

 視覚共有とは、契約した精霊と視覚をリアルタイムで共有できる便利なものだ。もっとも、全速力で飛ぶ風の精霊と視覚共有すると、その速さに酔いそうになることもあるため、注意が必要だ。今回は特に急いでいるわけでもないので、先に昼食を摂りながらのんびり報告を待つことにした。

『それじゃ、行ってくる~』

 額に付けていたゴーグルを目に装着し、両手をグルグルと回し始める。やる気は十分のようだ。

「よろしく。ミルクティー作って待ってるよ」

『わぁ~い!ハチミツもたっぷり入れてね~♪』

 精霊の鱗粉をまき散らしながら、パヒュン、と僅かな音を立てて洞窟内へと飛んでいく小さな後姿。

 それを手を振って見送ってから、俺はご褒美のミルクティーを作るために湯沸かし準備を始めた。






 30分後。

 無事に生還したシフに、お約束のハチミツたっぷりミルクティーを振舞うと、ほくほく顔でシフはそれを受け取った。

 美味そうに大きなカップを両手で持ちながらチビチビ飲む姿は、やっぱり可愛い。

 この素直さと可愛げがフェンにもあればいいのだが、あれはあれで個性なのだから仕方がない。



「じゃあ、これといった罠は無いんだな?」

『ウン!洞窟内の風の流れを見てみたけど、隠し部屋とか不自然なものは見当たらなかったかな。獣の魔物は何種類かいたけど、そんなに強い奴じゃなかったし。あ、あと宝箱がいくつかあった!』

「へぇ!……ン?でも、この辺で洞窟型のダンジョンがあるなんて、今まで聞いたことないぞ?」

 この森を通る際、ある程度マップの確認は事前にしていたが、近くに洞窟型ダンジョンは無かった筈だ。確認のために地図を広げてみるが、やはり現在位置に該当する場所には何も描かれていなかった。

『ん~新しく現れたばっかりとか?』

 ダンジョンは、ただの地形ではなく突如として現れるもの。

 ある意味生きていると言ってもいい。

 ダンジョンには【コア】と呼ばれるものが存在する。そのコアによってダンジョンは形成され、すべてを管理されている。

 コアが壊されない限りダンジョン内の魔物は何度でも生まれるし、各所に配置された宝箱は、空になっても一定の時間が経過すると、再び中身が納められるようになっている。

 何故そんな不可思議な仕組みになっているのか、いまだに解明はされていない。大地が生み出しているのか、古代魔術の失われた秘術なのか、それすらもわからない。

 「ダンジョンとはそういうものと」、無理矢理納得するしかないのだ。

 因みに、現在発見されている中で最大規模を誇るのは、北の国ロレアンガルバの最北端にある99階層の大地下ダンジョンで、最下層に到達したものは未だ数人しかいないらしい。

 もちろん俺がそこに挑戦することは絶対に、ない。

 とにかく、ダンジョンが現れる切っ掛けが何なのすら解明されていないため、こうして出来立てほやほやダンジョンが発見されることが、時々あった。



「それなら良いけどなぁ」

『ヤバそうだったら、さっさと引き返せばイイんじゃないかな?それに未発見のダンジョンなら、ギルドに報告もしなきゃならないんでしょ?』

 そうなのだ。実は冒険者には、新たなダンジョンらしきものを見つけたら、ギルドに報告する義務がある。

 その際、どんなダンジョンで内部がどうなっているのか、生息している魔物はどのレベルなのかをある程度調査しておくことも、必要だとされている。その情報を基に挑戦可能な冒険者ランクを定め、少しでも死亡する冒険者を増やさないようにするためだ。

『幸い街を出発したばっかで食料アイテムも十分だし、ちょっと探検してみようよ!』

「……お前、実は単に探検したいだけろ?」

『ウン!だって未開ダンジョン探検なんて、まさにジーンと一緒!』

 お前の好きなジーンはあくまでフィクションで、目の前にあるダンジョンは現実なんだが。

「大丈夫だよサラウスなら!僕らだっているし、しっかりサポートするよ~』

「いや、うん、まぁ、その辺は頼りにしてるけど」

 いくら精霊がサポートしてくれるといっても、それはあくまで俺の魔力と引き換えにしてだ。

 精霊は、魔力の代償無しで契約者に手を貸すことは出来ない。それが、精霊にとっての戒律なのだ。

「未開かもしれない洞窟ダンジョンを単独調査って、」

 これって、死亡フラグ立ちまくりじゃないか?

『ゆ~けぇ~ススメぇ~めざすぅ~は、地の果てぇ~♪』

 そんな俺の憂鬱を余所に、シフはもう挑戦する気満々のようだ。ジーンの大冒険が幼児向け劇になった時のテーマソング【ああ我を呼ぶ未開の地】まで歌い始めている。

 これでダメって言ったら、泣く。絶対に間違いなく泣く。

 フェンはツンデレでちょっと扱いが面倒だけど、根が単純だから臍を曲げても回復させる手立ては結構ある。しかしシフの場合、普段は素直だけど時々頑固になることがあって、そうなるとなかなか機嫌を直してくれないのだ。

 そうなると、色々困る。



 主に俺が。



「……わかった。でも、ヤバいとちょっとでも感じたら、すぐに引き返すからな」

 シフも言ったとおり準備は万全で、体力・魔力もアイテムも十分にある。無理さえしなければ、ある程度までは大丈夫だろう。

 というより、これはもう覚悟を決めて諦めるしかない。

『わぁいやったぁ!サラウス大好き―!』

 探検!探検!と、刃の無いダガーを振り回しながら喜びを露わにするシフ。 

 俺って精霊に甘いかな?いや、シフにだけだと思いたい。

 うん、まぁこれは冒険者の義務だしな。仕方ないよな。

 そう無理矢理自分に言い聞かせながら、俺はすっかり温くなったミルクティーを啜るのだった。



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